ご苦労さん労務やっぱり

労務管理に関する基礎知識や情報など。 3日・13日・23日に更新する予定です。(タイトルは事務所電話番号の語呂合わせ)

「9連休義務づけ制度」にメリット多し

2019-04-23 17:59:12 | 労務情報

 労働基準法の改正により、この4月から、企業規模にかかわらず、年5日の年次有給休暇(以下、本稿では「年休」と略す)を取得させる義務が生じた(ただし年10日以上の年休を有する従業員に限る)ことは、今さら説明するまでもないだろう。

 さて、今回は、その年休取得義務づけ対策としてユニークな「9連休義務づけ」にスポットを当てて考察してみたい。
 これは、全従業員に「土日を2回含めた9連休を1年のうちに1回は必ず取らせる」というもの。数年前にIT企業が福利厚生制度として導入して話題となったが、今般の労働基準法改正に関連して、俄然、脚光を浴びてきた。

 この制度のポイントは、「連休」であること、そして、「休んでいる間、会社とは一切の連絡を絶つ(会社からも連絡を入れない)」ことだ。
 これによって、心身をリフレッシュさせ、あるいは海外旅行など見識を深めることができ、その後の業務に良い影響を与えることが期待できるのはその通りとして、それ以上に、会社にとっての大きなメリットがある。

 それは、「休暇中の業務を代行する者」が必要になることだ。休んでいる間、別の者が業務を代行することにより、次のような各種の効果が期待できる。

  1.不正の防止
   別の者が業務を担当する期間を設けることで、公金横領や取引業者からの饗応などの不正を発見し、もしくは未然に防ぐことが可能となる。

  2.“業務の属人化”の防止
   「その人がいないとできない」という業務を作らないことで、突発的な事故にも対応できる体制にしておける。
   また、他者からの視点により業務改善のきっかけともなる。

  3.協働意識の醸成
   他の者の業務を担当することで、担当者の人知れぬ苦労を実感することができる。
   また、「お互いさま」の意識が芽生え、職場の一体感醸成にも寄与する。

  4.後継者の育成
   部下へ権限移譲することが、後継者育成の一環となり、本人や周囲の意識も変える。

 一般に、年休を取得しないのは“思い込み”と“思いやり”に問題がある、と言われる。
 すなわち、「俺がいないと業務が回らない」という“思い込み”、「休んだ同僚の業務をカバーするなんて御免だ」という“思いやりの無さ”が、年休取得の心理的な障壁となっているというのだ。「9連休義務づけ」は、これらを解消するのにも効果がありそうだ。

 会社には「年休を取らせない」という選択肢が無い以上、どうせなら、効果の上がる年休付与方法を考えたい。


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外国人を雇用する際の基本知識

2019-04-13 16:59:05 | 労務情報

 今や一部の業態では、人手不足により外国人の労働力に頼らざるを得なくなっており、これを受けて昨年12月8日に出入国管理法が改正され、単純労働を可能とする新たな在留資格「特定技能」が設けられた。
 その一方で、外国人の雇用環境が劣悪であることが告発されるなど、ここ数か月、外国人雇用を巡る話題が喧しくなってきている。

 ところで、もともと外国人枠を設けて雇用しようとする会社はそれなりに知識を得て(もしくは専門家に依頼して)募集するので心配無用だろうが、自社の求人に対して企図せず外国人が応募してくることは、すべての会社が想定しておかなければならないだろう。
 無論、会社の事情や方針があるだろうから、またその人の経験・能力等も勘案して採否を決めればよいのだが、採用する場合にはいくつかの注意すべきポイントがあるので、それらを以下に挙げてみたい。

 外国人を雇おうとする際には、まず、その職種に就労できる在留資格を有していることを確認しなければならない。基本的には『在留カード』(写真付き、携帯義務あり)を提示してもらうこととしておけばよいだろう。
 ちなみに、在留資格ごとに就労できる職種は、以下の通りとなっている。
  A:職種に限定なく就労可能
    ①「永住者」、②「日本人の配偶者等」、③「永住者の配偶者等」、④「定住者」
  B:それぞれに該当する職種にのみ就労可能
    ①「教授」、②「芸術」、③「宗教」、④「報道」、⑤「高度専門職」、⑥「経営・管理」、⑦「法律・会計業務」、⑧「医療」、⑨「研究」、⑩「教育」、⑪「技術・人文知識・国際業務」、⑫「企業内転勤」、⑬「興行」、⑭「技能」、⑮「特定活動(法務大臣が指定した活動に限る)」、⑯「特定技能」(今年4月から追加)
  C:原則として就労不可だが「資格外活動許可」の範囲内で就労可能
    ①「文化活動」、②「留学」、③「家族滞在」、④Bに挙げた在留資格に属しない副業

 また、外国人労働者といえども、労働者には違いない。労働基準法・最低賃金法・労働契約法・労働組合法・パートタイム労働法・雇用機会均等法といった労働関係法は、日本人同様に適用される。
 ただし、社会保障協定の締結相手国から派遣された者については、社会保険制度(厚生年金保険制度が主だが出身国によっては健康保険制度や労災保険制度まで含む場合も)の適用が一部免除されることがある点は、例外として覚えておきたい。
 加えて、外国人を雇い入れた会社は、管轄ハローワークへ届け出ることが義務づけられている。雇用保険の被保険者については『資格取得届』の該当欄に記入するだけで良いが、被保険者にならない外国人については『外国人雇用状況届出書』を翌月末日までに提出することとされているので、失念しないよう注意を要する。

 なお、新しい在留資格「特定技能」については、本稿執筆時点(2019年4月)では稼働し始めたばかりで不透明な部分が多いため敢えて詳しくは触れなかったが、今後の動向を見ながら戦略的に活用することも考えておくべきだろう。


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派遣労働者の待遇を労使協定で決めるのは“例外”か?

2019-04-03 12:59:05 | 労務情報

 新年度を迎え、働き方改革が始まった。
 今回は、その“目玉”の一つ「同一労働同一賃金」、中でも、「派遣労働者の待遇決定方法」について、詳説することとしたい。

 さて、「同一労働同一賃金」の趣旨を踏まえれば、派遣労働者も派遣先の労働者と不合理な待遇格差があってはならない。必ずしも「均等」でなくてもよいが、「均衡」の取れた待遇でなくてはならない。
 それを実現するため、派遣先(派遣労働者を受け入れる企業)には自社従業員の賃金等に関する情報を派遣元に提供することが義務づけられることとなった(改正派遣法第26条第7項)。
 しかし、このように「派遣先の労働者との均衡」により待遇を決めることにすると、派遣労働者本人にしてみれば、派遣先が変わるたびに待遇が見直されることになり、また、新しい派遣先の賃金水準が低い場合には自らはキャリアを蓄積しているのに賃金が低下してしまう、という不具合も生じかねない。
 そのため、改正派遣法第30条の4は、一定基準を満たす場合には、過半数労働組合または過半数労働者代表との「労使協定」により待遇を決定することも、例外的に認めている。

 この「労使協定方式」、具体的には、
(1) 厚生労働省令で「同種の業務に従事する一般の労働者の平均的な賃金の額」として定める額以上の賃金とすること
(2) 職務の内容・成果、意欲、能力等の向上を公正に評価して賃金を決定すること
(3) 派遣労働者に対し派遣元が所定の教育訓練を実施すること
等の要件を満たした場合に可能となる。
 また、この場合でも、賃金以外の待遇(例えば「更衣室の利用」等)については、派遣先は情報を提供しなければならない。

 以上のように、改正派遣法は、派遣労働者の待遇を「派遣先均衡方式」により決定するのを原則とし、「労使協定方式」により決定するのを例外としている。
 しかし、現実的に、派遣労働者を受け入れようとする企業が派遣元に自社従業員の待遇を開示するのも、派遣元が派遣先(顧客)にそれを求めるのも、ともに抵抗があるのではなかろうか。
 そう考えると、例外であるはずの「労使協定方式」が主になっていくと推測するのが自然だろう。

 ちなみに、改正法は、来年(令和2年)4月1日から施行されることとなっている。


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