ご苦労さん労務やっぱり

労務管理に関する基礎知識や情報など。 3日・13日・23日に更新する予定です。(タイトルは事務所電話番号の語呂合わせ)

適年廃止まであと半年、未着手の会社は至急移行手続きを

2011-09-29 11:04:17 | 労務情報

 税制適格退職年金(適格年金)制度は、平成24年3月31日をもって廃止される。他の制度への移行には少なくとも半年はかかると言われるので、もし、まだ移行手続きに着手していない会社があったら、即刻、今すぐにでも取り掛かるべきだ。

 適格年金廃止後の受け皿としては、「確定拠出年金(日本版401k)」・「確定給付年金」・「中小企業退職金共済」等があるが、どれを選択するにしても、自社の退職金制度を設計しなおさなければならない。その際には、現行の適格年金は殆どが予定利率を5.5%と設定していたところ実際の運用ではそれを大きく下回っていることが推測できるため、その「積立不足」をどう解消するかも同時に考える必要がある。

 また、退職金制度を変えるのだから、従業員にとっては不利益変更になるケースがほとんどだろうし、従業員間で不公平が生じることもありうる。そういったことについて、労働組合や従業員個々人に説明し、納得してもらう必要があるのだ。
 各種規程を変更したり、それを管轄省庁に届け出たり、あるいは同意書を取り付けたり、という事務手続きも時間を要するが、それよりも、従業員に熟慮してもらう時間を与え、経営者側も説得の労を惜しまないことが後のトラブル防止のためには重要だ。

 退職金制度は、従業員の長期的な観点での働き方にも影響する、すなわち経営ポリシーに関わるものだ。適格年金制度の廃止は、単に税制上の優遇措置が無くなるというだけの話ではなく、退職金制度の変更を伴う大問題であることを認識し、制度の変更には細心の配慮をもって当たらなければならない。
 だからこそ、移行手続きの着手を急がなければならないのだ。


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特別加入者の労災が認められないケースも

2011-09-23 12:43:11 | 労務情報

 中小事業主やその家族も、労働保険事務組合に事務委託することによって労災保険に特別加入することができる。しかし、特別加入しているからと言って、仕事中の傷病すべてについて補償されるものではないので、注意しておきたい。

 特別加入制度は、“業務の実態が労働者に準ずるもの”として労働者と同様の保護を与えようというのが趣旨であるから、“経営者”としての業務を遂行している間については対象外となってしまう。
 具体的には、株主総会・取締役会への出席、業界団体の活動への参加等が、これに該当する。これら経営者としての活動中の事故は、労災保険が使えない。

 また、労働者と同様の業務をしていた際の事故であっても、その事業における所定労働時間外や所定休日においては、業務遂行性が認められにくい。(むしろ「原則として認められない」と認識しておくべきかも知れない。)
 時間外や休日に被災した場合は、“経営者としての業務”でなく“労働者に準じた業務”に従事していた旨(例えば「被災した時に他の労働者も同様の作業をしていた」など)を事細かに説明しなければならなくなる。事業主の業務内容や就労時間は当人自身が決めることができるため、こうした一定の線引きがなされているのも仕方が無いことだろう。

 このようなことも予め承知したうえで、必要に応じて特別加入制度を上手に利用したい。


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在宅勤務者を「業務委託」とすることは可能か

2011-09-13 16:47:06 | 労務情報

 就労形態の多様化に伴い、在宅で勤務する者も今後増加すると思われるが、彼らを労働者として雇用するのでなく、個人事業者として業務委託契約を締結するのは許されるのだろうか。
 答えは「扱い方によって可」であるが、グレーな部分が大きいので慎重な対応が求められるところだ。

 契約上は「個人事業者」とされていても、使用従属関係に在ると見られる場合は「労働者」として扱わなければならない。具体的には、「業務の具体的内容および遂行方法を指示されている」、「時間的拘束を受けている」、「報酬が労務の対価たる性格を持つ」、「会社の所有する器具・備品類を用いている」、「経費(交通費等)をその都度精算する」などといった扱いであると、“労働者性”が強まるとされる。
 労働者であるなら、当然、時間外労働に対する割増賃金や災害補償の問題も生じる。会社としては、これらのリスクを回避したいからこそ業務委託の形式を採用しようとするのかも知れないが、そうであれば、形式面だけでなく実態として、完全に独立した個人事業者として扱わなければならない。

 業務委託者の労働者性を争われた裁判では、契約書上の形式的な文言だけではなく、「拘束時間や収入の面で特定の事業者にどの程度依存しているか」を判断要素にしている例が多く見られる。もっとも、その労働者性を肯定したか否定したかについては、個別具体的な事情によって判断は分かれているようだが。
 しかし、勝つにせよ負けるにせよ、訴訟にまで発展するのは会社にとって損にはなれ決して得にはならないので、目先のメリットだけ追い求めることのないよう心がけたい。

 なお、在宅勤務者の労働者性については厚生労働省が具体例とともに基準を示しているので、参考にすると良いだろう。
 ※厚生労働省サイト>「在宅勤務者についての労働者性の判断について」


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「出向」ではなく「特定派遣」とすることのメリット

2011-09-03 19:54:45 | 労務情報

 労働者派遣事業には、「登録型」と呼ばれる「一般労働者派遣事業」(以下、「一般派遣」という)と「常用型」と呼ばれる「特定労働者派遣事業」(以下、「特定派遣」という)とがある。一般派遣は許可制、特定派遣は届出制となっている。

 特定派遣は、自社で雇用している従業員を他社の業務に従事させるもので、派遣先との関係(指揮命令系統など)は、実態として「出向」(ここでは「在籍出向」を指す)と変わらない。
 そう考えると、労働者を供給する側(派遣元)としては、一般派遣の許可申請ほど煩雑ではないとは言え、都道府県労働局に届け出て(その際には登記簿謄本や定款や事業計画書等の添付が必要)まで特定派遣にするメリットは感じられず、「出向」で良いのではないかと考えるのも当然ではある。

 しかし、出向の形態では、不都合が生じることもあるのだ。
 まず第一に出向が特定派遣と大きく異なるのが、三六協定や労災に関する事項は(事情によっては社会保険の適用も)“出向先”に属するものとして扱われる点だ。
 また、人事に関しては、出向では出向先も人事権の一部を有するものとされる。例えば、他部門への配転も別の会社への二次出向も、出向先の判断で可能となる。(無論、権利の濫用は許されないが)
 加えて、出向先から出向元へ賃金相当額を上回る出向料が支払われる場合には、労働基準法第6条で禁じられている「中間搾取」とみなされることもある。
 これらの点で問題がある場合には、「出向」ではなく「特定派遣」とすることにメリットがあると言える。

 もっとも、出向にするか特定派遣にするかは、現実には、出向元の都合というよりも出向先からの要望によるケースが多いようだ。
 是非の議論はさておき“力関係の産物”と言えるが、出向・特定派遣に、それぞれメリットとデメリットがあることは理解しておくべきだろう。


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