ご苦労さん労務やっぱり

労務管理に関する基礎知識や情報など。 3日・13日・23日に更新する予定です。(タイトルは事務所電話番号の語呂合わせ)

年金制度の改正(短時間労働者の社会保険適用拡大)について

2020-12-23 10:10:14 | 労務情報

 新型コロナ禍の渦中にあってあまり話題に上っていなかったが、第201回通常国会において「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律」が可決・成立し、令和2年6月5日に公布されている。
 今般の年金制度改正は、次の4点を大きな柱としている。
  1.被用者保険の適用範囲を拡大する (詳細は後述)
  2.在職老齢年金の支給停止額を47万円に統一し、支給額を毎年改定する
  3.老齢年金受給開始時期を75歳まで繰り下げ可能とする(現行は70歳まで)
  4.確定拠出年金の加入可能要件の見直し等

 さて、1点目の「被用者保険の適用範囲拡大」の諸施策中には、「個人事業」や「国・地方公共団体等」に関するものも含まれているが、民間企業に最も影響を与えそうなのは、何と言っても「短時間労働者への適用拡大」だろう。
 短時間労働者(労働時間が一般就労者の4分の3未満の者)は、現行制度では、以下の5要件を満たした場合に、健康保険および厚生年金保険の被保険者となることになっている。
  (1) 常時500人を超える被保険者を雇用する企業(または労使間で社会保険加入の同意が得られている500人以下の企業もしくは国・地方公共団体)に勤務している
  (2) 1年以上の雇用が見込まれる
  (3) 賃金の月額が8万8千円以上
  (4) 所定労働時間が週20時間以上
  (5) 学生でない
 これらのうち(1)の「500人を超える」について、今般の法改正で、令和4年10月からは「100人を超える」に、令和6年10月からは「50人を超える」に、対象を拡大することとされた。
 また、(2)の要件は撤廃され、一般就労者と同様(原則として2か月を超える雇用)となる。なお、(3)・(4)・(5)は、今回は「現状維持」とされた。
【参照】 厚生労働省>「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律案の概要」
  → https://www.mhlw.go.jp/content/12500000/000636611.pdf

 各企業では、「同一労働同一賃金」(大企業は令和2年4月より施行済;中小企業は令和3年4月より施行)に加えてこの改正があり、パートタイマーの雇い方や業務配分について組み立て直さなければならなくなったと言える。
 必ずしも月給制にする必要はないし、短時間労働であるがゆえに負うべき責任の重さが正規職員と異なることには問題がないが、少なくとも、「安価な労働力」としてパートタイマーを雇うことはできなくなったと考えるべきだろう。


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退職理由に戸惑わない

2020-12-13 23:52:15 | 労務情報

 年末が近づき、新天地を求めるべく退職しようとする人がいるかも知れない。

 さて、従業員から退職の申し出が有ったら、(慰留するつもりが無ければ)必ず「退職願」を提出させてほしい。書面によって退職の意思を本人も会社も再確認するとともに、会社にとっては、後日「不当に解雇された」と訴えられた場合に「従業員側に退職の意思が有った」と抗弁できる材料ともなるからだ。
 所定様式での「退職届」を提出することになっている会社もあるだろうが、それが「退職手続きに必要な事務書類」との意味合いのものであったなら、「従業員が本心から退職を希望していた」と主張するには弱い…‥

※この続きは、『実務に即した人事トラブル防止の秘訣集』でお読みください。

  

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新型コロナにまつわる職場内ハラスメントについて

2020-12-03 13:59:21 | 労務情報
 今は、どの会社も例外なく新型コロナウイルス感染症対策に取り組んでいるだろうが、ウイルスよりも、むしろ人間のほうが人間に危害を加えているように思えなくもない場面もあるようだ。
 例えば、
  a. 妻が病院に勤務しているという理由で休業を命じられた
  b. 心臓の手術から退院して出社したら職場で仲間外れにされた
  c. (特に小売店従業員や配達員等が)顧客から暴言を浴びることが(時として暴行を受けることも)ある
といった事案(いずれも筆者の身近で起きた実例)を見聞きする。
 ちなみに、これらを「コロナ・ハラスメント」とか略して「コロハラ」などと呼ぶメディアもあるが、いずれもまだ定着していない“新語”の部類に入るだろう。

 さて、用語の問題はともかく、こうしたことが職場で起きていたら、それは「ハラスメント」には違いないので、会社はこういった状況を放置してはならない。

 実は、上に挙げた3例は、それぞれ意味合いとその対処法が異なる。

 まず、「a」は、会社(経営者や上司)がハラスメントの直接の加害者になってしまうタイプだ。
 これが、例えば「妻が新型コロナウイルスに感染した」という理由で休業させたのなら合理性のある適切な業務命令とも言えそうだが、憶測や思い込みで判断するのは不適切だ。
 また、会社が加害者になってしまうケースとしては、リモートワークに関して「上司が部下の私生活に必要以上に干渉する」という例も挙げられる。
 会社としてこうしたことが起きないよう、日ごろからハラスメントに関する管理職研修や職場内啓発活動を徹底しておきたい。

 次に「b」は、職場内で「あの人は感染者だ」というような噂が流れている可能性がある。
 会社の関知しない部分もあろうが、少なくとも本人から申し立てがあったら、会社は状況を正しく把握し、もし誤解に基づくものであれば、それを解くように動くべきだ。以前から仲の良かった同僚を介してインフォーマルなコミュニケーションを用いるのも、一策だろう。

 そして「c」は、いわゆる「カスタマー・ハラスメント」であり、これも会社は放置しておいてはならない。
 もっとも顧客からの暴言自体は(暴行すら軽いものは)大事にはできないが、上司から労いの声掛けをするとか、負担の程度に応じて手当を支給するとか、あまりにひどい場合は配置転換も視野に入れた対処を考えるべきだろう。

 新型コロナの問題にかまけてあまり意識されていない(知っていながらとぼけている?)節もあるが、この6月1日から(中小企業は令和4年4月1日から)、労働施策総合推進法により、会社には、職場におけるパワーハラスメント防止のための措置が義務づけられた。
 会社が加害者になるのは論外としても、職場内のハラスメントをなくし、働きやすい環境を整えることが求められている。


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