ご苦労さん労務やっぱり

労務管理に関する基礎知識や情報など。 3日・13日・23日に更新する予定です。(タイトルは事務所電話番号の語呂合わせ)

法令に抵触しない採用活動を

2023-02-23 17:59:34 | 労務情報

 この時期、大学3年生に「卒業見込」が出ると、企業の新卒採用活動(既に“内定活動”とでも言うべきか)が本格化してくる。
 10年ほど前、某老舗出版社の“縁故採用”が物議を醸したことがあるが、一私企業の採用方針・採用手法については、法律的には(文化の担い手たるマスメディアの姿勢として好ましいか否かという論はさておき)「経済活動の自由」に属する話だ。

 しかし、いくら「経済活動の自由」があるとは言え、採用活動を制限する法令もあるので、知識を再確認しておきたい…‥

※この続きは、『実務に即した人事トラブル防止の秘訣集』でお読みください。

  

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

有期雇用契約を期間途中で解除するには

2023-02-13 09:59:09 | 労務情報

 期間を定めた雇用契約は、やむを得ない事由があるときは、各当事者は(労使とも)契約の解除をすることができる(民法第628条)。 そして、使用者は、やむを得ない事由が無いときは、期間満了前に労働者を解雇することができない(労働契約法第17条第1項)
 この「やむを得ない事由」というのは、例えば、会社が倒産の危機に瀕しているとか、当該労働者の重大な規律違反とか、つまり、期間満了を待つことなく直ちに雇用を終了させざるを得ないような特別の重大な事由であることが求められている(大阪地判H25.6.20、さいたま地判H26.4.22等)。
 期間を定めない雇用契約を解除する場合(いわゆる正社員の解雇)に必要とされる「客観的に合理的で、社会通念上相当と認められる理由」(同法第16条)よりも厳格なものだ。

 ちなみに、証券アナリストとして有期雇用した外国人がその能力(特に日本語能力)の低さから解雇された事案では、裁判所は、即戦力の専門職として雇い入れたもののレポートの出来栄えが会社の期待に遠く及ばないこと、採用前に提出した日本語レポートは日本人である夫に見てもらっていたこと(およびそれを秘匿していたこと)、試用期間中の解雇であったこと等を勘案し、解雇を有効と断じている(東京地判H25.1.31)。 契約期間途中で解雇するには、ここまでハードルが高いと理解しておくべきだろう。

 したがって、やむを得ないとまでは言えないほどの理由(例えば余剰人員の増加等)では、解雇ができないので、当該労働者に退職を勧奨して合意退職に持ち込むしかない。 合理的な理由に基づき退職を勧奨すること自体には、何ら違法性は無い。 とは言え、勧奨しても本人が応じなければ合意退職は成立しないので、本人にとってのメリット・デメリットをきちんと説明して納得を得られるよう努めたい。

 一方、労働者の側から、やむを得ない事由なしに有期雇用契約を解除することはできないかというと、これに関して法は明文規定を置いていないので、議論のあるところだ。
 しかし、現実的には、有期雇用従業員から本人の都合で退職したいとの申し出があった場合に、これを会社が認めないのは難しい。 それは、本人の意に反する労働を強制することになってしまう(日本国憲法第18条「苦役からの自由」および労働基準法第5条「強制労働の禁止」に抵触する)からだ。
 こうなった場合、会社としては、それによって被った損害の賠償を求めるぐらいしか対抗手段は無い。
 もっとも、雇用契約に限らず、期間途中での契約解除はお互いに極力避けるべきであるし、そのためにも、契約締結前に熟考するべきであるのは、言うまでもないことだろう。


※この記事はお役に立ちましたでしょうか。
 よろしかったら「人気ブログランキング」への投票をお願いいたします。
 (クリックしていただくと、当ブログにポイントが入り、ランキングページが開きます。)
  ↓

 

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

出向者の労務管理は出向元・出向先のどちらが?

2023-02-03 14:59:17 | 労務情報

 出向(ここでは自社に籍を置いたまま他社で勤務してもらう「在籍出向」のことを指す)は、出向元・出向先それぞれに言わば「二重の雇用関係」が成立しているため、その労務管理の責任の所在に関する疑問が生じることも多い。
 なお、自社から他社に籍を移して勤務してもらう「移籍出向」(単に「移籍」あるいは「転籍」とも言う)は、前職との雇用関係が解消しており「移籍先の従業員」として扱えば済むので、本稿では、考察の対象としない。

 さて、まずは、会社によっては今、喫緊の課題かも知れない「労働保険(労災保険・雇用保険)」の取り扱いについて整理しておく。
 労災保険に関しては、出向者は「出向先」の労働者としてカウントする。 もしも労災事故が発生したらそれは出向先の責任になるのだから、この扱いは当然のことと言えよう。 そのため、出向者を受け入れている会社は、労災保険料・一般拠出金の算出にあたって、出向者の賃金(出向元から支払われるものがあればそれも合算する)も算定基礎額に含めなければならない。
 雇用保険に関しては、「その者が生計を維持するのに必要な主たる賃金を受けている方の雇用関係についてのみ被保険者となる」とされている。 そのため、これは、出向の形態(契約内容)により、ケースバイケースでの対応を要する。
 ちなみに、社会保険(健康保険・厚生年金保険)は、「報酬を支払う事業所」で被保険者とするのが原則だ。 出向元・出向先双方から賃金を支払われている場合は「二以上事業所勤務届」の対象となることもある。

 勤怠管理その他の労務管理は、概ね「出向先」の就業規則に従う。 出向先の「時間外労働・休日労働に関する労使協定」(いわゆる「三六協定」)も、出向者に適用される。 出向先での業務指示に従って働く以上は、そうしなければ不都合だ。
 また、非違行為に対する懲戒も、原則として「出向先」の就業規則により可能とされる。 ただし、雇用関係を解消する処分(懲戒解雇など)は、出向先の判断ではできない。 もっとも、出向元において、出向先との関係悪化を理由として当該者に対し処分を下すことは考えられる。

 以上を踏まえれば、出向先が出向者の賃金全額を負担しているなら、その出向者の労務管理は、ほぼすべて(「身分」に関する事柄を除き)出向先の責任において行うものと認識して差し支えない。 その場合、出向元では、出向者の身分に関する事務(労働者名簿や賃金台帳の整備等)のみを行うこととなる。


※この記事はお役に立ちましたでしょうか。
 よろしかったら「人気ブログランキング」への投票をお願いいたします。
 (クリックしていただくと、当ブログにポイントが入り、ランキングページが開きます。)
  ↓

 

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする