ご苦労さん労務やっぱり

労務管理に関する基礎知識や情報など。 3日・13日・23日に更新する予定です。(タイトルは事務所電話番号の語呂合わせ)

「名ばかり役員」に労働者性あり

2019-02-23 23:28:13 | 労務情報

 会社の役員(取締役・会計参与・監査役)は、会社との委任契約に基づいて経営を託されている者であって、基本的には、従業員とは異なる立場とされる。
 従業員である身分と取締役である身分とを兼務する「使用人兼務役員」(以下、単に「兼務役員」と呼ぶ)というのもあるが、それであっても、それぞれの身分における立場や役割は明確に区別しておかなければならない。ちなみに、会計参与・監査役は、従業員であってはならない(会社法第333条第3項・第335条第2項)ため、会計参与・監査役に係る「兼務役員」という概念は無い。

 さて、役員は、従業員(=労働者)ではないのだから、労働関連諸法令の適用を受けない。すなわち、役員に就任した者は、労働者としての法的保護を受けられないこととなる。

 かつて、それを悪用して、従業員の大多数を取締役に就任させてしまった会社があった。そうすれば、労働基準法の制限に関係なく働かせることができ、残業代も(そもそも賃金自体すら)支払わなくても(労基法上は)許される。労働安全衛生法も、労働契約法も、男女雇用機会均等法も、役員に対しては事業主としての義務を負わない。
 これは妙案のようにも思えるが、訴訟に発展した事例を見る限り、会社の言い分が否認され、労働者性が認められた裁判例がほとんどだ(東京地判H24.5.16、京都地判H27.7.31ほか)。
 裁判所は、おおむね以下のような観点で判断している。
  (1) 社長の指揮監督に服していたか
  (2) 勤務場所や勤務時間の拘束を受けていたか
  (3) 対価(役員報酬)の決定方法やその額
  (4) 取締役会に出席していたか
  (5) 従業員としての退職金を支給されたか
 つまり、役員としての役割を持ちそれなりの処遇を受けているなら問題ない。しかし、実態が従業員と変わらないのであれば、それは労働者として保護されるべきであって、残業代(労働基準法第41条第2号に定める管理監督職であるとしても深夜労働に係る割増賃金は対象となる)も支払わなければならないのだ。
 しかも、訴訟沙汰になったら、裁判所から未払い賃金額と同一額の付加金(労働基準法第114条)支払いを命じられる可能性まである。

 そう考えると、こういう「名ばかり役員」は、リスクが高いと言わざるをえないだろう。

 なお、まれに混同される向きもあるが、「執行役員」は、法令上の役員ではない。執行役員は、言わば名誉職的な意味合いの役職であって、法令上の扱いは一般の従業員と何ら変わらないことを理解しておきたい。


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1日8時間以内なのに割増賃金が必要になる場合も

2019-02-13 16:59:02 | 労務情報

 割増賃金は、法定労働時間を超える労働に対して支払うものだ。
 したがって、例えば1日の所定労働時間が7時間である会社では、1時間だけ残業させても、通常の賃金1時間分を支払えば足り、割増賃金を支払う義務は無いと、一般的に言われている。
 しかし、この原則は、すべての会社にあてはまるわけではなく、しかも、あてはまらない会社が「例外」と呼べるほど少なくもない。

 労働基準法は、労働時間を「1日8時間以内」かつ「週40時間以内(一部の小規模事業を除く)」と定めている。
 これは、基本的には「1日8時間×週5日」を想定したものだが、必ずそうしなければならないものではなく、「1日6時間40分×週6日」としても、あるいは、変形労働時間制の採用により一定期間(「1か月」・「1年」など)を平均して1週間あたり40時間以内になれば、それでも良い。
 そして、その“法で定める労働時間”を超えて労働させた場合に、割増賃金(基本的には2割5分以上)を支払わなければならないこととされている。

 つまり、「8時間以内の労働には割増賃金を支払う義務はない」というのは、「変形労働時間制を採らない週休2日制の会社」に限った話ということになる。
 ちなみに、「フレックスタイム制」も変形労働時間制の一種であるので、フレックスタイム制を導入している会社においては、むしろ8時間以内の残業に割増賃金を支払うべきケースが多くなりがちだ。大企業だからと言って必ずしも原則があてはまるとは限らないのだ。

 なお、法定労働時間を超えて労働させるためには、俗に「三六協定(サブロク協定)」と呼ばれる労働基準法第36条に定める労使協定を締結して労働基準監督署に届け出ておかなければならない。しかし、三六協定の有無に関わらず、現実に時間外労働をさせたのなら、割増賃金を支払う義務が発生する点は認識しておきたい。


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“団塊ジュニア”は70歳までの雇用が義務づけられる?

2019-02-03 12:59:05 | 労務情報

 2025年には、いわゆる“団塊の世代”が後期高齢者となり、2040年には、“団塊ジュニア世代”までもが高齢者に仲間入する。そのため、今後、医療や介護に係る担い手が減少することが大きな課題となっている。
 その一方で、高齢者の“若返り”が見られ、高齢者の就業ニーズも(実際、就業率も)上昇している。

 こうした現状を踏まえ、政府は、昨年10月22日、厚生労働大臣を本部長とする「2040年を展望した社会保障・働き方改革本部」を設置し、「国民誰もが、より長く元気に活躍できるよう、多様な就労・社会参加の環境整備や健康寿命の延伸を進めるともに、医療・福祉サービスの改革による生産性の向上を図りつつ、給付と負担の見直し等による社会保障の持続可能性の確保を進める」(同本部設置規程より)という方針を打ち出した。
 具体的な施策は、
①健康寿命延伸TF(疾病予防・介護予防に関する施策等)、
②医療・福祉サービス改革TF(ロボット、AI、ICTの実用化等)、
③高齢者雇用TF(高齢者の雇用就業機会の確保等)、
④地域共生TF(縦割りを超えた地域における包括的な支援体制の整備等)
の4TF(タスクフォース)で検討される。

 医療業界やAI業界などに影響するテーマが多い印象だが、すべての業種に関係しそうなのは、高齢者雇用の問題だろう。

 奇しくも同じ10月22日の夕方に首相官邸で開催された「第20回未来投資会議」では、「70歳までの就業機会の確保を図り、高齢者の希望・特性に応じて、多様な選択肢を許容する方向で検討する」こととされ、席上、安倍首相は「2019年の夏に『実行計画』で具体的制度化の方針を決定したい」と述べている。
 当然、この「改革本部」においても、それを睨んだ方向性が示されると思われる。

 「2040年を展望した」と銘打ってはいるが、そう遠くないうちに「70歳までの継続雇用」が義務づけられる可能性があることを、企業経営者は承知しておかなければなるまい。


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