ご苦労さん労務やっぱり

労務管理に関する基礎知識や情報など。 3日・13日・23日に更新する予定です。(タイトルは事務所電話番号の語呂合わせ)

休職期間満了時における「治癒」の考え方

2014-02-23 14:49:08 | 労務情報

 例えば、ある従業員が私傷病により長期間欠勤した場合、本来なら会社は「労務提供不能」を理由としてその者を解雇することも可能であるところ、一定期間を経過すれば再び働くことができるようになる可能性があるなら、その一定期間、解雇を猶予することは、本人にとっても会社にとってもメリットがある。
 この「解雇の猶予」というのが、「休職制度」の基本的な意義だ。したがって、休職期間が満了してもなお治癒しなかったら、自動退職となることとしているのが一般的だ。

 では、その「治癒」とは、どういう状態を言うのだろうか。

 古くは「原則として従前の職務を通常の程度に行える健康状態に復したとき」(千葉地判S60.5.31)など、完全回復が求められており、この判決の文面にならって休職期間満了後の復職条件を定めている会社も少なくなかった。
 しかし、その社内規定がまだ有効に現存しているとしても、今日それを文言通りに適用するのはリスクがある。

 と言うのも、休職制度を争点とした事件ではなかったが、「現に就業を命じられた特定の業務について労務の提供が十全にはできないとしても、(中略)他の業務について労務の提供をすることができ、かつ、その提供を申し出ているならば、なお債務の本旨に従った履行の提供があると解する」(最一判H10.4.9)との判決が出されて以来、裁判所は、完治していなくても軽微な業務に就かせることの現実的可能性を検討するよう、会社に対して求めてきているからだ。
 これは、「完治」という概念の無い精神疾患の場合には特に顕著であり、また、障害者雇用を推進しようとする社会の動きも労働者にとっては追い風となっている。

 翻って考えてみれば、休職制度は「解雇の猶予」なのだから、休職期間満了時にも、会社には解雇回避義務があると理解するべきだろう。「どうしても本人の労働力に見合った業務が用意できないときに限り復職断念」という手順を踏まなければならないということだ。


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労災特別加入の給付基礎日額は年度内に変更しておくべきか

2014-02-13 09:49:55 | 労務情報

 経営者は、原則として、通常の労災保険には入れない。しかし、一般の労働者と同様の業務に従事する中小事業主や一人親方(ここでは「海外派遣者」についての説明は割愛する)は、労働保険事務組合を介して労災保険に特別加入することができる。

 さて、この特別加入制度においては、一般労働者の「平均賃金」に相当する「給付基礎日額」を特別加入者本人が選択することになっているところ、昨年10月から、その選択の幅が広がっている。
 従来は「3500円から20000円まで」の範囲から選んでいたものを、上限額が高くなり、今後は「3500円から25000円まで」の範囲から選べるようになった。これは、特別加入者の収入額の実態や労災保険本体の給付との均衡を踏まえての改定であり、希望する人には補償を充実させようという意味を持つ。
 ただし、新規に特別加入する者には改定後の選択幅が適用されているが、既に特別加入している者は「年度末(3月下旬)」もしくは「年度更新時期(6月1日~7月10日」でないと給付基礎日額を変更することができない点は、承知しておく必要がある。

 ちなみに、万が一4月1日から7月10日までの間に労災事故が発生した場合、3月31日時点で給付基礎日額の変更が申請されていなければ、労災給付は前年度の給付基礎日額に基づいて計算されることになっている。特別加入者本人が補償を充実させたいと思い、かつ、年度更新時に変更する予定であったとしても、である。
 したがって、給付基礎日額の“増額”を希望しているなら、年度更新を待たずに、3月中に変更申請しておくべきと言える。
 逆に、給付基礎日額の“減額”を考えているなら、変更手続きは、年度更新時期に行うべきだ。と言うのも、減額するのであれば3月中に申請するメリットが無いうえ、仮にそれまでの間に労災事故が発生したら、「給付基礎日額を変更しない」という選択も可能だからだ。(これは蛇足だったか?)


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解雇予告と同時に休業させるのにはリスクが

2014-02-03 17:39:45 | 労務情報

 会社が従業員を解雇するにあたり、「30日前に解雇予告すると同時に休業させれば良い」と勧めるコンサルタント等がいる。そうすれば、休業手当(平均賃金の6割以上×30日分)を支払えば足り、30日分の賃金もしくは解雇予告手当を支払うよりもコストを低く抑えられる、というのが理由だ。
 しかし、この方式は、違法とは言えないまでも、争いの余地もあるので、要注意だ。

 そもそも労働基準法第26条は、従業員を休業させる場合に少なくとも平均賃金の6割を支払うことを、罰則付きで事業主に義務づけているものであって、それで会社が民事的な責任も免れる旨を定めているわけではない。つまり、休業させられた従業員は、「債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは、債務者は反対給付を受ける権利を失わない」とする民法第536条第2項を根拠に、差額を請求できるのだ。
 これに関しては、労働契約(適法に制定された就業規則を含む)で「休業手当は平均賃金の6割とする」と取り決めてあれば、この特約が民法の規定に優先すると考える向きもあろう。ところが、実際の訴訟事案における裁判所の判断を見てみると、そのような特約を無効とする判決例も珍しくなく、まさに「ケースバイケース」としか言いようが無い。

 また、別の面から見れば、休業させている間も、従業員を雇用していることに係る義務や責任が存在し続けることも、忘れてはならない。小さな事では、出勤簿や賃金台帳の作成といった事務的な手間から、大きな事では安全配慮義務や使用者責任まで、発生しうる。

 したがって、従業員を解雇する場合には、解雇予告手当を支払って即時解雇するのを原則と考えるべきだろう。無論、解雇は最終手段であり、できる限り解雇を回避するよう努力しなければならないのは、言うまでもないが。


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