ご苦労さん労務やっぱり

労務管理に関する基礎知識や情報など。 3日・13日・23日に更新する予定です。(タイトルは事務所電話番号の語呂合わせ)

「残業の事前許可制」は残業代削減に有効か

2014-10-23 14:53:32 | 労務情報

 残業は、基本的には会社が命じるものだ。しかし、会社(上司)からの明示的な命令が無くても、実態として残業していることを会社が認知していたなら、黙示の命令があったものとして扱われ、残業代の支払い義務が生じる(大阪地判H17.10.6、東京地判H22.9.7等)。
 この点に関しては、会社としては、「従業員が“勝手に”残業したのに残業代を支払う」ということに納得できないかも知れない。

 では、これの解決策として、従業員自らの判断で残業する場合には事前に上司の許可を受けるという制度(以下、「事前許可制」と呼ぶ)を導入するのは、有効だろうか。

 事前許可制を導入すると、確かに、「会社の関知しない残業」は無くなる理屈だ。また、「できるだけ所定労働時間内で業務を終わらせよう」という意識が芽生え、結果的に残業そのものの削減が期待できることも、メリットとして挙げられよう。

 しかし、その反面、残業を自宅に持ち帰って行う、いわゆる「風呂敷残業」が多発することが懸念される。
 風呂敷残業は、会社が業務負担を把握できず(得てして過重労働になりがちである)、営業機密や個人情報の管理面でも問題があるため、望ましいものではない。また、現実に所定労働時間内には終わらない分量の仕事を与えていたとしたら、残業命令があったものと推認される(札幌地判H6.2.28、東京地判H22.1.18等)ので、要注意だ。

 さらには、「事前許可が無かった」という理由をもって、実際に残業があったのに残業代を支払わないのは許されない。“勝手に”残業している従業員を見掛けたら、許可を受けるよう指示するか、でなければ、速やかに退社するよう命じるべきだ。

 事前許可制は、残業時間や残業代を会社が適切に管理するために有効な方策の一つではあるが、こういった側面もあることを踏まえたうえで、上手な導入・活用を考えたい。


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職務発明の「対価」は適正に定めていますか

2014-10-13 15:35:25 | 労務情報

 青色発光ダイオードの研究で日本人3人にノーベル賞が贈られるというのは、同じ日本人として誇らしいことと思う。

 ところで、青色発光ダイオードに関しては、「職務発明」に関する裁判も話題になった。1審の「200億円」判決(東京地判H16.1.30)は、控訴審において8億円で和解したとは言え、それでも経済界に大きな衝撃を与えたことは記憶に新しい。
 それは、金額もさることながら、特許法第35条第3項は、会社は職務発明について契約等の定めにより特許を受ける権利を承継したときには相当の対価を支払わなければならない旨を定めているが、その「相当の対価」の額は裁判所が判断するということであって、すなわち、会社は、訴訟が起こされて判決が出るまでは、得られた利益を再生産や新たな投資に注ぎ込むことができないということをも意味していたからだ。

 この点に関しては、平成16年の特許法改正により、「相当の対価」を労使の取り決めで定めることができるものとされた(同法同条第4項)。ただ、この第4項は、その定めが不合理でないかどうかを判断するのはやはり裁判所であり、その際には「労使間の協議の状況」、「策定された基準の開示の状況」、「従業者等からの意見の聴取の状況」等を考慮することとなっている点には、気を付けて読まなければならない。
 とは言え、この法改正後に「対価の額」を争点とした訴訟事案は、少なくとも「判例」と呼べるものは出されていないので、一定の効果があったものと推測される。
 逆に言えば、相当の対価を労使の取り決めで定めていない場合は、冒頭の論に戻り、従業員(発明者)から訴訟を提起される危険に晒されているということでもある。特にベンチャーにおいてはアイデア一つで会社の存亡すら左右しかねないので、考えられる予防策は講じておくべきだろう。

 なお、現在、国の産業構造審議会が職務発明制度の見直しを始めている。「対価の額を会社(労使)が定めるのか、裁判所が判断するのか」についても論点に含まれているので、そういった観点からも、今後の議論の行方を見守っていきたい。


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意外な不当労働行為、労働組合の無い会社でも?

2014-10-03 11:29:15 | 労務情報

 会社は、労働組合の活動に関し、次のような行為をしてはならない。
  1 労働組合の組合員であることや労働組合の正当な行為をしたこと等をもって不利益に取扱うこと
  2 労働組合に加入しないことを雇用条件とすること(黄犬契約)
  3 正当な理由なく団体交渉を拒むこと(不誠実交渉もこれに含まれる)
  4 労働組合の運営に支配介入することや経理上の援助を与えること
  5 労働委員会に申し立てたり証拠を示したりした労働者を不利益に扱うこと
(労働組合法第7条より)

 これらは「不当労働行為」と呼ばれ、これらの行為があったと認められる場合には、労働委員会は労働組合からの申し立てに基づき「救済命令」を発することとなっている。この命令に不服があれば会社側は30日以内に訴訟を提起することができるが、命令を指示する確定判決が出された場合は、それに従わなければ罰則(禁錮・罰金)の適用もある。

 ところで、会社がそれと認識していなくても不当労働行為となってしまうケースもある。
 最近では、団体交渉の直前に三六協定に関する「業務指示書」等を会社が組合員の各自宅あてに郵送した行為について、「専ら組合員を動揺させ、組合活動をけん制し、萎縮させるためのものであった」として不当労働行為とされた例もある(中労委命令平成24年(不再)第62号)ので、特に組合員への対応は慎重を期したい。

 また、こういった話は、社内に労働組合が無くても、無関係ではない。
 と言うのも、一人でも加入できる労働組合があるため、突然、団体交渉の申入れが届くといったことは、労働者を雇用しているすべての会社で起こりうるのだ。
 油断せず、正しい知識を得ておきたい。


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