ご苦労さん労務やっぱり

労務管理に関する基礎知識や情報など。 3日・13日・23日に更新する予定です。(タイトルは事務所電話番号の語呂合わせ)

退職勧奨が「退職の強要」にならないように

2024-09-23 04:41:26 | 労務情報

 会社の経営上の都合で、あるいは、従業員自身の能力等に問題があるためなどにより、特定の従業員を退職させたいことが起こりうるかも知れない。こうした場合、状況が許すならば、一方的に解雇するよりも、退職勧奨することをまずは検討したい。「会社が退職を勧め、労働者がこれに同意した」という形式を取ることにより、本人の納得を得られ、後のトラブルに発展しにくくなるからだ。
 しかし、これが「退職勧奨」のレベルを超えた「退職の強要」になってしまったら、そこでの同意は事後に取り消すことができ(民法第96条)、また、そもそもの目的に反してトラブルに発展するリスクすら高まるので、退職勧奨する際には慎重な対応が求められる…‥

※この続きは、『実務に即した人事トラブル防止の秘訣集』でお読みください。

  

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定期健康診断に女性向け項目を追加することのハードル

2024-09-13 08:27:44 | 労務情報

 厚生労働省に昨年12月から設置された「労働安全衛生法に基づく一般健康診断の検査項目等に関する検討会」において、労働安全衛生規則第44条に定められている検査項目に「女性の健康に関する事項」(月経困難症・更年期に係る問診、その他女性の就業率向上に着目した検査項目)を追加することが検討されている。

 これは、「女性活躍・男女共同参画の重点方針2023(女性版骨太の方針2023)」(すべての女性が輝く社会づくり本部・男女共同参画推進本部;令和5年6月13日決定)で「事業主健診(労働安全衛生法に基づく一般定期健康診断)に係る問診に、月経困難症、更年期症状等の女性の健康に関連する項目を追加する」と、「経済財政運営と改革の基本方針2023(骨太の方針2023)」(令和5年6月16日閣議決定)で「事業主健診の充実等により女性が尊厳と誇りを持って生きられる社会を実現する」と、それぞれ示されたことに基づき、健診項目を追加するにあたっての障害や配慮すべき事項を整理しているものだ。

 検討会では、次のような意見が出されている。
  ・健康診断は原則無症状のものが対象になるが、その意味で効果があるか
  ・検査で判明した健康事象・危険因子が業務に起因もしくは業務によって増悪するか
  ・有所見とされた者に対して事業者が実施できる事後措置(就業上の措置)は何か
  ・有所見とされた者に対して過度に就業制限をかけることの不利益可能性はないか
  ・検査は巡回健診でも実施可能か、また、対象となる労働者全員に対して実施可能か
  ・検査に要する費用の増大を事業者が許容できるか
  ・検査結果は「事業者が把握するべき健康情報」として事業主に提供できるか
  ・要望する声の多い「がん検診」や「眼底検査」等の追加は考えないのか
 その他にも否定的な意見も目立つが、上述のとおり女性向けの健診項目を追加することは既定路線であるので、その適切な実施を担保する方法やそのための政府指針を示す方向で意見が集約されるものと思われる。

 ちなみに、日本経済団体連合会は「2024年版経営労働政策特別委員会報告」において、女性の一層の活躍促進に向けて「働き続けられる環境の整備」等に積極的に取り組むとしており、具体的には、①生理休暇を刷新・拡充した「L休」(「Life Style Support 休暇」の略)の創設、②女性の健康に関する管理監督者への意識啓発、③産業保健スタッフによる相談支援や専門医への受診勧奨等、女性の健康と仕事との両立支援に向けた実効性ある対応に着手することとしている。
 これらも働く女性の健康保持に有効な施策であるので、健診項目の追加と併せて検討する価値はあるだろう。


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社会保険の適用拡大を踏まえてワークシェアリングの活用を

2024-09-03 09:03:49 | 労務情報

 社会保険は長らくいわゆる正社員またはそれに近い労働者を適用対象としてきたが、健康保険・厚生年金保険は(各種要件はあるものの)週20時間以上就労する者が強制適用となり、その要件が今年10月にさらに緩和(適用拡大)される。
 また、雇用保険も、週10時間以上就労する者を被保険者とする改正法(令和10年10月1日施行)が先ごろ成立した。

 こうした動きを踏まえて、自社内におけるワークシェアリングを考えている会社もある。 というのも、これまでワークシェアリングを躊躇させていた「従業員各人の業務量(端的に言えば労働時間)を減らすと社会保険の適用から外れてしまう」というボトルネックが解消されるからだ。

 「ワークシェアリング」は直訳すれば「仕事を分け合う」ことであり、「1人に任されていた業務を複数人で分ける」と説明されることもあるが、イメージで言えば「3人の業務を4人で分担しなおす」というのが現実的なところだろう。 これにより1人あたりの業務量は25%減となる計算だ。
 もっとも、業務量が25%減ったからと言って賃金を25%減額するのは労働者が納得しないだろうし、それまでは不要だった“調整”業務が増え、また当然“引き継ぎ”も必要になるだろうから、経営者としては「ワークシェアリングは短期的にはコストアップにつながる」と理解しておかなければならない。

 それでも、ワークシェアリングには以下のようなメリットがあるとされる。
 まず、マクロ的には、雇用を創出すること、育児中・介護中の者や高齢者等がそれぞれの意欲と能力に応じて働けるようになること、ひいては人口減少社会にあって労働力不足に対処できるようになる、といった効果がある。
 個々の企業においても、従業員の健康保持が図れ、組織の連携や一体感醸成にも寄与しうるといったメリットがある。 また、ワークシェアリングを進める過程で業務プロセスの見直し(リエンジニアリング)が必須であることから業務が効率化することも期待できる。 さらには、副次的な効果として、従業員が“自分の時間”(それが自己啓発であれ副業であれ)に得たものが会社にフィードバックされる可能性もある。

 もちろん、市場が縮小している業界においては「雇用が維持できる」という最大のメリットがあるわけだが、上に挙げたようにワークシェアリングには他にもさまざまなメリットがあるので、業績が好調であっても、積極的な活用を考える価値があるのではなかろうか。


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