ご苦労さん労務やっぱり

労務管理に関する基礎知識や情報など。 3日・13日・23日に更新する予定です。(タイトルは事務所電話番号の語呂合わせ)

労働条件の不利益変更は個別同意を得ていれば充分なのか

2018-05-23 21:59:15 | 労務情報


 労働契約も契約の一種であるから、その内容は、原則として、当事者同士で自由に決めることができる。したがって、労働条件を労働者にとって不利益に変更することも、両当事者の合意があれば可能だ。
 ただし、こと労使関係においては使用者側が労働者側よりも情報量や交渉力の点で圧倒的に勝っているため、「契約自由の原則」に法令で一定の制限が設けられていることは、前提条件として押さえておきたい。

 ここで言う「(広義の)労働契約」には、「雇用契約」(狭義の「労働契約」;労働者各人と個別に締結するもの)ばかりでなく、集団的な労働契約である「労働協約」や、使用者が一方的に制定する「就業規則」も含まれる。
 そして、これらの優劣関係に関しては、労働基準法第92条第1項では「就業規則は、法令又は当該事業場について適用される労働協約に反してはならない」と、労働契約法第12条では「就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については、無効とする」とされている。
 これを整理すれば、「法令>労働協約>就業規則>雇用契約」という図式になる。

 これを踏まえれば、就業規則を変更しようとする場合でも、新しい労働条件が労働協約に反してはならない。そのため、就業規則変更に先立って新たな労働条件を含む労働協約の締結を要するわけで、事実上、労働組合の同意を得なければ、仮に労働契約法第10条の要件を満たしたとしても、就業規則の変更による労働条件の不利益変更はできないのだ。

 一方で、従業員各人と雇用契約を交わし直して(個別同意を得て)労働条件を不利益に変更しようとするのは、一見問題なさそうに思えるが、これとて就業規則に定める労働条件を下回ってはならないので、就業規則の変更も同時に必要となる。この手続きを失念しないよう、実務担当者は細心の注意を払いたい。
 もっとも、個別に従業員各人を説得して同意を得ているのなら、就業規則の形式を整えるだけのことなので、この期に及んで特段の問題が生じる心配は無いだろう。


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自社の従業員でないのに使用者としての責任を負うべきケース

2018-05-13 14:59:08 | 労務情報

 自社の従業員に係る労務管理に関して会社が責任を負うのは当然のことだが、自社で雇っていない者との労務問題においても、会社の責任を問われることがある。

 まず、法律上明文化されているものとしては、労働者派遣法第44条に定める「労働基準法等の適用に関する特例」が挙げられる。
 これは、派遣労働者の雇用主は派遣元事業主であるところ、労働時間管理や安全衛生の確保などについては派遣労働者保護の実効を期する上で派遣先事業主に責任を負わせるのが適切であることから、労働基準法・労働安全衛生法・育児介護休業法等の一部については派遣先事業主を使用者とみなして適用することとしているものだ。
 例えば、公民権行使の保障、安全衛生教育、ハラスメント防止策といったものは、派遣労働者に対しても派遣先が責任を負う。
 そしてこのことは、損害賠償や安全配慮義務といった民事的な責任も伴うことも承知しておくべきだ。

 また、下請け会社の社員に対しても、使用者とみなされるケースがある。
 過去の裁判例を見ると、裁判所は「当該労働者の基本的な労働条件等について事業主と同視できる程度に現実的かつ具体的に支配・決定することができる地位にある場合には使用者に当たる」(最三判H7.2.28;趣旨を変えずに一部改変)という立場を採っており、限定的とは言え、その責任が無いわけではない。

 今後、雇用形態が複雑化するにつれ、「雇用に準じた関係」にも労使関連の法令や判例が適用されることが多くなってくるのは容易に推察される。
 「自社で直接雇用していなければ責任を負わない」とは考えるべきではないだろう。


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外国人技能実習生にも労働法規の適用あり

2018-05-03 15:59:01 | 労務情報


 出入国管理法の改正により「技能実習」という在留資格が新設されて久しい。
 これは、それまで「特定活動」の一つに位置づけられていた「技能実習」と、就労できない在留資格である「研修」とを統合して整理したものだ。これにより、「研修」の在留資格を有していた外国人も、座学による講習(研修期間中の原則1/6以上)の期間を除いて、就労可能となった。

 ところで、外国人が就労する場合にも、当然、日本の労働法規が適用される。例えば、労働者に支払う賃金額は、労働局長の減額特例許可なしに最低賃金を下回ってはならないこととされている。「技能実習」の在留資格で就労する者も例外ではない。
 しかし、それを知らないのか、知っていながら無視しているのか、理由はともかく、外国人を低廉な賃金で就労させる会社も多いようだ。
 ちなみに、減額特例の対象となりうるものの一例として挙げられている「職業に必要な基礎的な技能及びこれに関する知識を習得させることを内容とするものを受ける者」には、外国人技能実習生はそもそも該当しないので、これも覚えておきたい。

 茨城県潮来市のメッキ工場で働いていた中国人実習生が急性心不全で死亡した事件は、「外国人初の過労死」・「劣悪な労働条件(時給400円など)」・「技能実習制度の悪用(実質的に低賃金労働者として扱っていた)」ということで話題になった。また、報道されてはいないが、遺族が会社を相手取って民事訴訟を起こした(あるいはこれから起こす)可能性も充分考えられる。

 技能実習生に限った話ではないが、法違反の報いは会社存亡に関る問題にまで発展する可能性があることを、経営者は認識しておくべきだろう。


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