ご苦労さん労務やっぱり

労務管理に関する基礎知識や情報など。 3日・13日・23日に更新する予定です。(タイトルは事務所電話番号の語呂合わせ)

「退職勧奨」ならトラブルになりにくいとは言うものの…

2012-07-23 18:57:04 | 労務情報

 会社が従業員を退職させたい場合、一方的に解雇するよりも、まずは「退職勧奨」を検討したい。無論「状況が許すならば」という前提条件が付くが、労働者を説諭して会社からの提案に同意してもらっておけば、通常はトラブルに発展しにくいからだ。
 さりとて、退職勧奨におけるトラブル事例も、皆無というわけではない。では、どういう点に注意すべきかを、以下に挙げてみたい。

 まず第一に、退職勧奨は、あくまで“勧奨”なので、会社からの提案を本人が拒否することも許される。そこに会社側の強迫行為があったなら、その合意は事後に取り消すことができる(民法第96条)ので、退職勧奨する上司や人事担当者の言動には慎重を期さなければならない。

 第二に、これは盲点なのか(あるいは知っていながらとぼけているのか)、誤解している向きが多いが、退職勧奨に応じて退職した場合であっても、離職事由は「会社都合」であることに違いない。併せて、雇用保険料を財源とする助成金の多くは、会社都合での離職者を出すと原則として向こう6ヶ月間は受給できなくなるので、そういったことも、会社は承知しておかなければならない。
 また、退職金制度の有る会社では、退職金も会社都合での係数を用いて算出することになる。もっとも、退職金に関しては、むしろ、勧奨に同意しやすいよう金額の上乗せを用意することも考えなければならないくらいだ。

 第三に、合意を得られたら、『退職合意書』を交わしておくのは鉄則だ。少なくとも、会社からの提案内容を予め文書化し、納得できたならそれに記名捺印してもらう準備はしておいて良いだろう。

 なお、これらは、“普通解雇”に相当する事由における退職勧奨の話であって、“懲戒解雇”に相当する事由における退職勧奨(「諭旨解雇」または「諭旨退職」とも呼ばれるケース)では扱いが異なる部分もあることは承知しておかれたい。


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中小企業には好材料も。政府の「若者雇用戦略」

2012-07-19 15:10:03 | 労務情報

 大卒では2人に1人、高卒に至っては3人に2人が、「就職できなかった」または「就職できたがすぐに退職した」(2010年3月の卒業生を対象にした内閣府の推計)という。こういう状況の下、政府は、若者の就職を支援する「若者雇用戦略」を正式決定した。
 これは、“雇用のミスマッチ”を解消し、早期離職の防止を図るため、「積極的な就職関連情報公開による求職活動の効率化」、「中小企業就職者の人材確保・定着支援」、「ステージに応じた“伴走型支援”の制度化」といった施策を講じることとしたもの。

 具体的には、
(1) ジョブサポーターを大学へ恒常的に出張させて相談に応じ、就職が内定していない学生の登録・集中支援等を行う「大学生現役就職促進プロジェクト」の実施、
(2) 「わかものハローワーク」におけるフリーター等の正規雇用化に向けた支援や「ジョブカフェ」における就職関連サービスの提供等を行う「若者ステップアッププログラム」の推進、
(3) 「地域若者サポートステーション」におけるニート等の職業的自立の支援、等々
に取り組むこととしている。
 また、「若年者等トライアル雇用」(1人あたり月4万円の奨励金を最大3か月間、雇用した事業主に支給)の対象者を「39歳以下」から「44歳以下」に拡大することも予定されている。

 この戦略については、識者の間では「対症療法ばかりだ」として実効性を疑問視する声も上がっているという。なるほど我が国の社会経済全体から見るならば、その指摘も的を射ているかも知れない。
 しかし、個別の対策ごとに見てみれば、若い人を積極的に活用しようとしている企業(特に、知名度が低く思うように学生を採用できない新興企業や“雇用のミスマッチ”に困っている中小企業等)が使えそうな策も含まれている。
 世間の評判が悪いからと言って初めからすべてを拒絶するのでなく、自社で使える施策があるか否か検討してみて、使えるなら、上手に活用したいものだ。


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給与振込に関する同意は取れていますか

2012-07-13 13:26:13 | 労務情報

 給与は、その全額を直接通貨で支払わなければならない。「通貨」すなわち「現金」で支払うことを労働基準法は求めているのだ。しかし現実には、銀行振込により給与を支払っている会社は多いが、労基法上それは例外扱いであって、労働者の同意(労働協約または個別同意)が有って初めて銀行振込が可能になると解される。

 さて、この「同意」は、労働協約なら必ず書面をもって締結されるが、個別同意なら口頭でも良いことになっている。しかし、トラブルになったときのことを考えれば、個別同意も書面に残しておくのが望ましいだろう。
 まれに「預金通帳のコピーの提出」をもって同意の意思表示とみなしている会社も見かけるが、コピーを提出しただけで「同意した」と読み取るには無理がある。せめて、その余白にでも「給与振込先はこちらです」ぐらいは本人に自筆させておきたい…‥

※この続きは、『実務に即した人事トラブル防止の秘訣集』でお読みください。

  


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厚生年金基金を脱退するには2段階の障壁が

2012-07-03 10:24:44 | 労務情報

 年金資金の運用を委託されていた投資顧問会社の“犯罪的”とも言える運用失敗の影響で、複数の厚生年金基金(以下、単に「基金」と呼ぶ)が解散に到ってしまっている。
 件の投資顧問会社へは委託していなかった基金も、その財政状態は決して芳しいものとは言えない。大多数の基金で運用実績は想定利回りを下回っており、厚生労働大臣から財政健全化計画の提出を求められた基金も、平成23年12月時点で81基金に上っている。多数の基金が積立不足を抱えたまま解散することも、俄然、現実味を帯びてきた。

 現行制度では、その積立不足は加入企業が共同して負担しなければならないことになっているので、間違いなく企業経営を圧迫することになろう。政府や国会内には基金の解散に際して公金を投入する案も出ているようだが、今の国会情勢は「それどころじゃない」ので、現行制度のまま変わらない可能性も高い。
 となれば、財政状態の悪い基金に加入している企業としては、財政改善が見込めないのであれば、傷の小さい今のうちに基金を脱退することも考えたいところだ。
 しかし、そのためには、社内外2段階の障壁がある。

 まず、社内的には、従業員の半数以上が基金脱退に同意していなければならない。特に基金に加入していることをリクルートの材料にしていたり、退職金に代わる措置として設けていた会社では、従業員に納得してもらうために大変な時間と労力を要するだろう。労働協約や労使協定を締結しなおさなければならない場合もある。
 そして、社内の問題が解決したとしても、基金の代議員会で承認されなければ脱退できない。しかし、任意脱退を安易に認めてしまうと残された企業の負担が増えることになるので、なかなか承認されないのが現実のようだ。存亡の危機に瀕している会社からの脱退申し出であればいざ知らず、黒字会社が“食い逃げ”するのは、代議員(=他の加入企業)が簡単に許さないのは想像に難くない。それでも無理を通すと言うなら、業界の中で孤立する覚悟も要るだろう。


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