ご苦労さん労務やっぱり

労務管理に関する基礎知識や情報など。 3日・13日・23日に更新する予定です。(タイトルは事務所電話番号の語呂合わせ)

生理休暇を正しく与えていますか

2022-04-23 16:59:16 | 労務情報

 生理休暇については、必要とする者が遠慮なく取得できている職場がある一方で、取得しづらい雰囲気の職場も多いようだ。
 生理休暇を取得するかどうかは本人次第なのだが、会社としては、請求されたら必ず与えなければならない。

 ところで、労働基準法第68条は「使用者は、生理日の就業が著しく困難な女子が休暇を請求したときは、その者を生理日に就業させてはならない。」と定めているが、“就業が著しく困難”であるなら“病気欠勤”として扱うべきではないかとの疑問が生じるかも知れない。
 たしかに、労働協約や就業規則等で「有給の生理休暇を与える」と取り決めていない限り、不就労日に係る賃金を支払う義務は無い。 この点において、病気欠勤として扱うのと違いが無いようにも思える。
 しかし、病気欠勤の場合は…‥


※この続きは、『実務に即した人事トラブル防止の秘訣集』でお読みください。

  

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給与を複数の銀行口座に分けて振り込むことの是非

2022-04-13 16:19:55 | 労務情報

 従業員から、複数の銀行口座への給与振り込みを求められることがある。
 理由はいくつかあるが、代表的なものでは、「住宅ローン等の返済」、「貯蓄用」、「家計費」、「小遣い」といった用途ごとに設けた口座に、給与の一定額(またはその残額)を振り込んでほしいというものが多い。

 さて、こうした要望があった場合、会社はこれに応じなければならないのだろうか。

 結論として、これに応じる義務は無い。

 そもそも、給与は、通貨(=現金)で支払うべきことを原則とする(労働基準法第24条)。 ただし、「当該労働者が指定する銀行その他の金融機関に対する当該労働者の預金または貯金への振込み」も“できる”(労働基準法施行規則第7条の2)。 そして、その金融機関については、「一行、一社に限定せず複数とする等労働者の便宜に十分配慮して定めること」とされている(平10・9・10基発530号、平13・2・2基発54号、平19・9・30基発0930001号)。
 誤解されがちだが、この行政通達の言う「一行、一社に限定せず」というのは、「会社が特定の金融機関を指定してはならない」という意味であって、複数口座への振り込みを義務づけるものではない。
 したがって、会社は、複数の選択肢から従業員が希望するいずれか1か所への振り込みに応じれば足りる。

 しかしながら、複数の銀行口座へ振り込んではいけないわけでもない。
 「労働者の便宜に十分配慮」という面から見れば、そのほうが望ましいとすら言える。
 ただ、その場合でも、振込手数料を差し引いて支払うことは許されない(同法第24条;賃金の全額払い)ので、振込先が増える分、会社のコストアップになることは承知しておかなければならない。 仮に複数口座への給与振り込みを希望する従業員から「2口座目への振込手数料は本人が負担する」との一筆を取ったとしても、労働基準法に反する労働契約は無効とされる(同法第13条)ので無意味だ。

 また、複数口座への振り込みを1人に認めれば、他の従業員も追従することは想像に難くない。 そうした場合、振込手数料のコストとともに、担当者の労力やミス・トラブルのリスクも高まることに気を付けたい。

 今、厚生労働省の労働政策審議会(労働条件分科会)では、賃金のデジタルマネー払いを可能とする法整備を検討中だ。
 会社としては、「労働者の便宜」と「コスト・労力等」とを比較考量したうえで、給与の振り込み方法について考えておく必要があるだろう。


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今こそジョブローテーション試行の好機なのでは?

2022-04-03 15:59:07 | 労務情報

 労働契約上、会社は、従業員に対し、労務の提供を命じる権利を有する。 したがって、その具体的な業務(配属)を決めることも、その派生として配置転換を命じることも、基本的には(当事者間に職種限定の特約がある場合を除き)、会社の裁量で可能だ。
 これは「人事権」(会社が有する「経営権」に属する権限の一つ)と呼ばれ、従業員は、特段の事情の無い限り、これに従わなければならない。
 このことは、会社が「解雇権」を制限されていることの、いわば“裏返し”という見方もある。 すなわち、会社の責めに帰するケース(典型例は整理解雇)はもとより、本人側に非のあるケース(例えば私傷病や能力不足等、場合によっては懲戒解雇に相当する事案ですら)であっても、会社は、配置転換等によって解雇を回避するよう努めなければならないのだ。
 それならば、そうであればこそ、会社は、長期雇用を前提とした人材育成を図るべきであり、そのためにも人事権を有効に行使するべきと言える。

 具体的には、計画的な「ジョブローテーション」の導入を検討したい。
 ジョブローテーションには、次のようなメリットがあるとされる。
  (1) 個々人の隠れた適性を発見でき、適材適所の人事が可能となる
  (2) 受け入れ部署では、別の視点をもった社員を迎えることで組織の活性化が図れる
  (3) 前任者の手順を見直すことでミスや不祥事を防ぎ効率を高めることが期待できる
  (4) 従業員にとっては新たな知識・技術を身に付ける機会となる(マンネリの打破)
  (5) 他部署の事情を理解しあうことで、社内の風通しを良くし、一体感を醸成できる

 もっとも、ジョブローテーションにはデメリットもある。
  (1) 業務の引き継ぎに費用と時間を費やされる
  (2) (一時的に)生産性が低下する
  (3) 配置転換が従業員のディモチベーションとなりうるリスクがある
 このような理由を挙げてジョブローテーションを実施していない会社(特に小規模企業)も多く見受けられる。
 しかし、そういう会社の人事は、実のところ「欠員補充」を主とする「場当たり人事」になってしまってはいないだろうか。 そんな“後ろ向き”な人事よりも、「多能工化」や「情報やノウハウの共有化」を企図したジョブローテーションのほうが、特に人的資源の限られている小規模企業には、メリットが大きいはずだ。

 皮肉にもこの景況下で業務に余裕ができた会社にとっては、今が、(上に挙げたデメリットを勘案したうえで)ジョブローテーションを試行してみる好機と言えるのではなかろうか。


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