ご苦労さん労務やっぱり

労務管理に関する基礎知識や情報など。 3日・13日・23日に更新する予定です。(タイトルは事務所電話番号の語呂合わせ)

日本経団連の「労働法制に関する提言」の読み方

2013-05-29 19:16:47 | 労務情報

 日本経済団体連合会は4月16日、『労働者の活躍と企業の成長を促す労働法制』と題する提言をまとめた。
 今となっては少しニュース性が薄れてしまい恐縮だが、これに関して「どう読んだら良いか」のご質問をいただいたので、簡単に整理してみることにした。

 この提言は、「現行の労働法制が労働者の実態に対応していない」ということを背景に、「労働規制の見直しが必要」と結論づけている。
 具体策としては、以下8項目(※コメントしやすく整理したもので、日本経団連自身のくくり方とは異なります)を挙げている。
(1) 企画業務型裁量労働制の対象業務・対象労働者を拡大し、手続きを簡素化
(2) 現行フレックスタイム制の不具合点の改正(計算方式の変更)
(3) フレックスタイム制における清算期間(現行では最長1か月間)の延長
(4) 天災発生時に限り代替日未定の労働日の変更を認める
(5) 三六協定の特別条項に関する基準(一時的・突発的かつ1年の半分以内)の柔軟運用
(6) 休憩時間の一斉付与規制の撤廃
(7) 勤務地・職種限定雇用において、その勤務地・職種が消滅した場合に契約終了とする
(8) 就業規則変更の合理性を、過半数労組との合意・労使委員会の決議等をもって推定

 このうち(2)と(4)と(6)は、現実に即した改善案であり、特に問題とはならなそうだ。
 一方、(7)と(8)は、「判例で示された事由を法定化すべし」との意見であるが、これらは個々の労使関係を踏まえて判断すべき事項を多分に含むので、法律として一般化するのは現実的でないように思える。なお、「金銭解決による解雇」の導入は、この提言では「困難」として見送った。

 物議を醸しそうなのが、(1)と(3)と(5)だ。特に(1)は数年前にも論争となった「ホワイトカラーエグゼンプション」(営業職・事務職等を労働時間規制から除外する)を含む案であり、(3)・(5)とともに過重労働の要因ともなりうるので、労働側からの反発は必至だろう。
 今後の議論を注視していきたい。


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裁量労働制のデメリットを理解しておこう

2013-05-23 10:27:40 | 労務情報

 例えば「デザイナー」や「コピーライター」のように、業務遂行の手段・方法や時間配分等を会社(上司)から命じるよりも労働者個々の裁量にゆだねた方が、より良い成果を期待できる業務がある。こうした業務に就く者には、「裁量労働制」の適用が効果的だ。

 裁量労働制を適用すると、就労時間を労働者の裁量にゆだね、“労使間で予め定めた時間数”を働いたものとみなすことになる。つまり、どれだけ働いても「残業(時間外労働)」にならないので、会社にとっては残業代コスト削減のメリットが生じる場合もある…‥

※この続きは、『実務に即した人事トラブル防止の秘訣集』でお読みください。

  


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事業場外みなし労働時間と「直行直帰デー」

2013-05-13 11:14:51 | 労務情報

 従業員が事業場外で業務に従事し、その就労時間を算定しがたい場合には、所定労働時間もしくは通常必要とする時間を労働したものとみなすこととされている。(労働基準法第38条の2)
 この「事業場外みなし労働時間制」は、主に、具体的な業務指示を受けずに外勤する営業マン(営業ウーマンを含む。以下同じ)等を適用対象とするが、営業マンであっても、オフィス内で見積書を作成したりするのは事業場外労働ではないので、その時間はみなし労働時間に加算し、結果、必要があれば時間外手当も支払わなければならない。そのため、事業場外みなし労働時間制は「直行直帰型」の勤務でないと使いにくいのが実情だ。

 しかし、直行直帰型の勤務は、時間外手当等のコストが削減でき、労働者も業務を効率よく進められ、また「ワーク・ライフ・バランス」も図れるので魅力的である一方、朝礼やミーティングの時間が作れず、フォーマル・インフォーマル両面においてコミュニケーションが取りにくくなるという側面がある。また、モラルが低下しやすいことや会社への帰属意識が希薄になっていくことから、直行直帰型に拒絶反応を示す経営者も少なくない。

 こうした矛盾を解決するには、直行直帰型に完全移行するのでなく、“一部導入”するのがお奨めだ。例えば、週1回~週2回程度の「直行直帰デー」を設けて、その日はオフィスを閉めてしまう。全社一斉に導入するのが難しければ、班やフロア単位での輪番制にしても良い。
 「直行直帰デー」は、一昨年の“節電要請”に対応する形で採用した会社があり、結果として生産性が上がり、コスト削減も実現したという。
 外勤中心の営業マンが多い会社では、導入を検討してみる価値はあるだろう。


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団体交渉の開催場所はどのように決める?

2013-05-03 18:01:24 | 労務情報

 昨今は企業内で組織される労働組合は少なくなっているが、その反面、合同労組(※)が労使紛争に関与するケースが増えている。むしろこういう状況下にあって、かつては組合対策など考える必要の無かった中小・零細企業を含め、すべての企業において、団体交渉を申し入れられる可能性が高まっているとすら言える。
(※)「合同労組」とは、企業の枠を超えて地域単位で労働者を組織する労働組合を言う。具体的には「合同労組」・「一般労組」・「地域ユニオン」等と呼称され、主に中小企業の労働者が個人加盟しているのが特徴。

 さて、労働組合(企業内労組であるか合同労組であるかを問わず)から団体交渉を求められた場合、その開催場所はどのように決めるべきだろうか。

 団体交渉の開催場所は、労使双方が話し合って決めるべきものである。したがって、組合側が指定した場所とする義務は無いし、「社外開催が望ましい」と主張する識者(特に経営者側弁護士)も多い。
 しかし、会社が開催場所を指定し、合理的な理由なくそれに固執してしまうのは、不当労働行為とみなされるケースもあるので気を付けたい。国立大学の地方キャンパス(以前は別の大学であった)の教職員のみで組織する労働組合との団体交渉に関し、「大学本部で開催し、交渉時間は昼休みの1時間に限る」とした大学側の対応を、中央労働委員会が「不誠実団交」(労働組合法第7条違反)と断じた(平成23年(不再)第18号)のは、覚えておきたい事例の一つだ。

 一般的に団体交渉は、労働者側に過度の負担を強いないよう、労働者の就労場所の近くで開催するべきであろうし、また、費用支出(社外開催における会場費等)が発生する場合は会社側が負担すべきであろう。これは法律上の義務ではないが、組合から「団体交渉拒否」とのそしりを受けないための防衛策と考えるべきだ。


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