ご苦労さん労務やっぱり

労務管理に関する基礎知識や情報など。 3日・13日・23日に更新する予定です。(タイトルは事務所電話番号の語呂合わせ)

私傷病で休職しているのに海外旅行?

2018-12-23 10:59:18 | 労務情報


 私傷病による欠勤が長期間にわたるような場合にその従業員を休職させる制度を設けている会社は多いが、その休職中に海外旅行に出掛けるという“不届き”な者もいると聞く。
 本来、私傷病により労務の提供ができないのなら会社はその者を解雇しても良いところ、治療のために一定の期間を設けて、言わば「解雇を猶予」するのが、「休職制度」の意義である。それを、治療とは関係ない(湯治や転地療養とは異なる)個人的な旅行に使われてしまうのは、会社としては面白くないし、従業員間の不満やモラールダウンの要因ともなりかねない。

 では、そういうことを防ぐために、就業規則に「休職期間中に旅行に出掛ける場合は会社の許可を得ること」といった規定を盛り込んでおけば良いかと言うと、そんな簡単な話でもないのだ。


 休職期間は、前述のとおり「治療のための解雇猶予期間」なのだから、病状を悪化させもしくは治癒を遅らせる行為は許されない。しかしこれは、逆に言えば、病状を悪化させもしくは治癒を遅らせる行為でない限り(もちろん反社会的な行為や会社に損害を与える行為を除き)、会社は従業員の私的行為を規制することはできないということでもある。
 会社としては、「長期間自宅を留守にする場合は連絡先を届け出ておくこと」と定めておくのが精々だろう。

 また、昨今は「新型うつ」への配慮も求められている。その典型症状は「出社拒否」であるが、休日は元気なのに、会社に行くと(または行こうとすると)体調が悪くなるという人にとっては、会社が私生活に口出しすること自体が治療面においてマイナス効果となる可能性すらある。

 さらに手続き面においては、休職中の私生活について従来の就業規則に無かった制約を新たに設けるのであれば、“就業規則の不利益変更”である。となれば、労働契約法第10条を踏まえた変更手順が必要となるわけで、その場合、「変更の必要性」・「内容の相当性」を説明する材料を会社は用意できるだろうか。


 そもそも、この話は「面白くない」とか「不満やモラールダウン」といった“感情面”の問題なのだから、制度の変更ではなく、当事者との話し合いで解決を図るのが最善ではなかろうか。


※この記事はお役に立ちましたでしょうか。
 よろしかったら「人気ブログランキング」への投票をお願いいたします。
 (クリックしていただくと、当ブログにポイントが入り、ランキングページが開きます。)
  ↓

 

内規の不利益変更は労働契約法の適用を受けるか

2018-12-13 21:49:02 | 労務情報

 多くの会社では、就業規則をはじめとする諸規程の下位に、「内規」を設け、規程に記載しきれない細かな運用ルールを定めている。そして、内規は、そうした性格ゆえに、頻繁に見直されるのが一般的だ。
 ところで、その内規の変更が労働者にとって不利益になる場合には、労働契約法第8条または第10条の適用を受けるのだろうか。言い換えるなら、そもそも「内規」は「労働契約」なのか、という疑問について考えてみたい。

 さて、内規について言及する前に、「就業規則」が労働契約になりうる要件を整理しておくこととする。
 就業規則は、会社が一方的に定めるものではあるが、合理的な労働条件が定められ、かつ、それを労働者に周知させていた場合には、労働契約の内容は、その就業規則で定める労働条件による(労働契約法第7条)とされている。

 これを踏まえれば、労働条件(労働基準法第89条各号に列挙された項目)を定めたものであって、従業員に周知している「社内ルール」があるならば、それは、その会社内でどのように呼称されていたとしても、実質的に「就業規則」の一部であって、「労働契約」を構成すると言える(参考裁判例:東京地判H28.5.19)。
 したがって、そのような内規の内容を労働者に不利益に変更するなら、労働契約法第8条または第10条に定められた手順を踏まなければならない。

 逆に、従業員に周知していない内規は、労働契約として労使双方を拘束することはない。裁判例を見ても、休職後の復職基準について定めた内規が人事部の内部資料として作成されたものに過ぎないとした事例(東京地判H26.11.26)、年俸の内訳に諸手当や賞与が含まれることについては内規で定められたもので従業員への説明はなされていないとした事例(東京地判H27.10.30)など、裁判所は「周知」を判断材料にしていることが窺える。
 ちなみに、内規である旨を明記して従業員に開示されたルールが労働契約の内容とならないとした裁判例(大阪高判H27.9.29)もあるにはあるが、他の事情も斟酌されたうえでの判決なので、この部分だけを抜き出して鵜呑みにするのは危険だろう。

 結論として、その内規が従業員に周知されていなければ、労働契約法の適用を受けることはなく、会社が一方的に(ただし労働協約や就業規則に反しない範囲で)変更することが可能だ。
 加えて言うなら、内規が経営陣や人事部局内における“運用ルール”であるなら、それを従業員に周知するべきではないとすら言えよう。


※この記事はお役に立ちましたでしょうか。
 よろしかったら「人気ブログランキング」への投票をお願いいたします。
 (クリックしていただくと、当ブログにポイントが入り、ランキングページが開きます。)
  ↓

 

「常時使用」という用語、法令により定義に違いが

2018-12-03 19:59:03 | 労務情報

 労働関係法令には「常時使用」という用語がしばしば登場するが、その正確な定義を誤解している人も多いので、ここで整理しておくこととする。

 まず、労働基準法において「常時使用」とは、「常態として雇っていること」をいう。
 例えば、労働基準法第89条は、「常時10人以上の労働者を使用する事業場」に就業規則の作成と届け出の義務を課している。これは、事業場の規模を「常態として何人雇っているか」によって見るものであるので、短時間労働者も短期雇用労働者も含めてすべての労働者を数えなければならない。仮に正社員は2人だけであったとしても、短期アルバイトを常に8人以上(顔ぶれは変わったとしても)雇っている会社は、この規定の適用対象となる。
 同法第32条の5(1週間単位の非定型的変形労働時間制)や第138条(時間外割増賃金の一部適用除外)等についても、これと同じ考え方を採る。

 労働安全衛生規則(労働安全衛生法が委任する厚生労働省令)においても、第4条(安全管理者の選任)や第7条(衛生管理者の選任)等、事業場の規模により適用の有無を判断するに当たっては、労働基準法と同様に、すべての労働者を数える。
 ところが、同規則第44条「事業者は、常時使用する労働者に対し、医師による健康診断を行わなければならない」(一部略)等に個々の労働者が適用対象となるか否かについては、行政通達(平成19年10月1日基発第1001016号)により、次の要件(1)と(2)のいずれも満たす場合に「常時使用する労働者」として扱うことが示されている。
  (1) 次のいずれかに該当する者
     a 期間の定めのない契約により使用されている
     b 1年以上使用されることが予定されている
     c 更新により1年以上使用されている、のいずれかに該当する者
     ※特定業務従事者は、b・cの「1年」を「6か月」に読み替える
  (2) 所定労働時間数が通常の労働者の4分の3以上である者
 すなわち、労働者それぞれの雇用条件によって適用の有無が定まることになる。
 これは、同規則第43条(雇入れ時の健康診断)・第45条(特定業務従事者の健康診断)・第52条の9(ストレスチェック)等についても同様だ。

 ちなみに、「常用労働者」という似た用語もあるが、こちらは、毎月勤労統計調査(統計法第9条に基づいて厚生労働大臣が実施する基幹統計調査の一つ)において用いられる、まったく別の概念だ。「常用労働者」は、「期間を定めずに、または1か月以上の期間を定めて雇われている者」と定義されており、短時間労働者は含むが、短期雇用労働者は含まない。

 事業場の規模を見るための「常時使用」、労働者個々の雇用条件を見ての「常時使用」、そして国の統計調査で用いられる「常用労働者」、これらを混同しないようにしておきたい。


※この記事はお役に立ちましたでしょうか。
 よろしかったら「人気ブログランキング」への投票をお願いいたします。
 (クリックしていただくと、当ブログにポイントが入り、ランキングページが開きます。)
  ↓