従業員を懲戒するに際して、処分内容を決定するために懲戒委員会(「懲罰委員会」とも称される)を開催することとしている会社がある。
これは法律で設置が義務づけられている機関ではないが、次のようなメリットを有するため、懲戒委員会の設置を勧める識者は多い。
1.客観的な資料と複数の者の意見に基づいた冷静な判断が期待できる
2.本人の弁明を聴く機会を与えることにより、本人の反省や納得を促せられ、また、会社にとっては真相究明と再発防止の一助となる
3.労働基準監督署や裁判所に対して、公正な手続きに則った懲戒処分であることを主張できる
4.議事録を保管しておくことにより、類似事案が発生した際の参考にできる
これらを総じてみると、労働契約法第15条(懲戒)・第16条(解雇)の求める「合理性」と「相当性」をクリアするために懲戒委員会が活用できるということに集約できそうだ。
しかし、懲戒委員会で懲戒処分を決定することには次のようなデメリットもあることは承知しておく必要がある。
1.結論が出るまでに時間が掛かる
2.議事録等に不備があると、懲戒委員会を開催しなかったとみなされることがある
ちなみに、就業規則で「懲戒委員会を開催する」と定めているのにその手続きを経なかった場合には、原則的にはその懲戒処分は無効となる(大阪地決S47.7.12、東京高判H16.6.16等)ので、会社の規程に則った対応が必要だ。懲戒委員会を経ないで科した懲戒処分を有効と断じた裁判例(大阪地決H6.3.31等)も無いではないが例外事案と言えるだろう。
以上を踏まえれば、懲戒委員会を設置するとしても、例えば「役員全員による」といった大規模なものよりも、「社長、人事管掌役員および当該従業員の上長たる役員の三者による」くらいの構成にしておいた方が、運用面で使い勝手が良く、また、情報漏洩を防ぐ意味でも有効と言えそうだ。
あるいは、就業規則には懲戒委員会については明記せず、人事担当部内での「内規」として委員会の構成や審議事項(特に本人に弁明の機会を与えること)等を定めておく、というのも一策だろう。
結論として、懲戒処分は懲戒委員会を開催して決定するのが望ましいが、それを就業規則にどのように記載するかは慎重に考えたいところだ。
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