お寝坊して、眼をこすりつつ「おはよう」とご挨拶したら、テーブルには目を瞠る珊瑚樹の紅葉が、一枚だけ飾られていた。
様々な紅葉に眼を奪われる晩秋から初冬のこの頃だが、「うつろ庵」のテーブルで、こんな見事な紅葉に出会うとは、ついぞ想像すらしなかった。 虚庵夫人が早朝に、珊瑚樹の生垣から散る寸前の一枚だけを選んで、アレンジしたものだ。
憎いことに、頂戴した信州リンゴの白いクッションネットに添えて、対比が真に鮮やかであった。
彼女曰く、「白いドレスの胸元に飾ったら、どんなに素敵だろうと思ったのよ・・・」と。
目を瞠る珊瑚樹の葉の真紅かも
メッシュの白妙 ふくよかな胸元に
ただ一枚を 選んで我妹子(わぎもこ) お寝坊の
我に見せむとアレンジするとは
その思ひにじじとは雖も ときめくを
如何に告げばや言葉を知らずも
夕暮れに素焼きの鉢にて焚火して
焼き芋捧げる 素朴な爺かな