「虚庵居士のお遊び」

和歌・エッセー・フォート 心のときめきを

「竹原の町並み保存地区」

2012-12-16 00:32:04 | 和歌

 国立・広島商船高等専門学校での対話会を終えて、フェリーで竹原港に戻ったのは夕刻だった。 虚庵居士の住む横須賀まで帰るには、時間的に無理があるので、竹原に一泊した。折角広島まで来たのだから、広島平和記念資料館も是非視察したいと予定していた。

 翌朝、ホテルから竹原駅まで歩くことにして、途中の「町並み保存地区」をほんの
三十分程散策した。細い路地を辿り、古い民家や造り酒屋、或いは寺などの醸す雰囲気は虚庵居士を虜にした。 

 町並み保存地区はさして広い範囲ではないが、三十分と言わず半日ほどかけてゆっくりと見物したい思いであった。

 竹原は元来竹の豊富な土地柄ゆえ、竹細工なども盛んだとは聞き及んでいたが、町並みの其処ここに設えられた側溝の竹覆いや、照蓮寺門前の竹飾りなどには目を瞠った。古い町並と細い通りの石畳が、竹の設えと程よくマッチして絶妙であった。

 

 時間がたっぷりあれば、町の皆さんの暮らしぶりや、竹飾りの謂れ等も伺い、歴史民俗資料館も展示物を観覧したかたっが、広島平和記念資料館の視察と帰路の予定を考えれば、余り時間を割けられぬのが残念であった。

 

 山際の西方寺には、普明閣と称する能舞台があって、此処からの竹原市街の眺めを薦められたので、急ぎ足で石段を上った。清水の舞台ほどではないが、岩山を利用した舞台は見事なものであった。早朝のことゆえ寺の関係者も居なかったので、無断で舞台に昇らせて頂き、竹原の市街の眺望を愉しませて貰った。

 ごく短時間の「町並み保存地区」の散策であったが、豊かなものを頂戴した。

 


             白水の港を出でて竹原に

             フェリーで帰りぬ対話を土産に


             竹原の宿に泊まりぬ満ちたりた

             学生対話を振り返りつつ


             広島の旅にしあらば原爆の

             資料館をば明日は訪ねむ


             竹原の歴史をとどめる町並みを

             せめても覗かむ宿りの序に


             駆け足の古き町並み見物は

             失礼ならむや永き歴史に


             何時の日かまた訪ね来むこの街に

             人の息づく歴史を訪ねて


             いと短き散策なるも豊かなる

             ものを得しかも町並みを経て