十二月中旬に広島を訪ねて、「広島・大崎上島」、「竹原の町並み保存地区」、「広島平和記念資料館」の三編を先に書いた。聊か間が空いたが、広島の締めくくりは「牡蠣」で〆たい。
新幹線の発車時刻が迫る中で、オイスター・バーに飛び込んだ。レストランの入り口には、一斗缶にギッシリ詰まった牡蠣が届けられた直後らしく、まだ海水が滴ったまま、置かれていた。 牡蠣の産地ならではの素朴な 情景だった。
店内には、未だ客も疎らだったが、早速メニューが出された。
ウェイターにお勧めを聞いたら、「特大牡蠣のフライが人気です」との返事だった。
仙台でのビジネスが長かった虚庵居士の好みは、松島湾の小粒の牡蠣だが、「郷に入っては郷に従え」の古語に倣い、特大牡蠣のフライを注文した。併せて、生牡蠣をレモンで食べたいと注文した。
何時ものように、白ワインのシャブリを飲みながら、生牡蠣を愉しんだ。
丁度ころあいを見計らったかの様なタイミングで、特大牡蠣のフライが届いた。
お客さんが少ない時刻だったので、ウェイターが次の料理のタイミングを気配りして呉れたようだ。大皿に牡蠣殻が盛られ、その上に特大牡蠣のフライが、デン・デン・デーンと乗っていた。なるほど特大である。
レモンを絞り、そのままかぶり付いた。
普通の牡蠣フライは、一口か精々二口で食べ終えるが、この特大牡蠣は略その倍以上の大きさだ。衣の歯触りと、牡蠣の柔らかい身と、薫り高いジューシーな味が絶品であった。シャブリのお代りを飲み干して、特大牡蠣のフライを堪能した。
それにしても大きな牡蠣殻が、豪勢に大皿を飾っているではないか。
シャブリの酔いもあって、食事の後のお遊びを試みた。牡蠣殻は、単なるお飾りであろう。食べた特大牡蠣とは別物だろう。殻のメオトモ合うまいと想像していたが、何と六片の牡蠣殻は見事ピッタリと合致して、納まった。
そんなお遊びをしていたら、ウェイター君が笑みを浮かべて、「特大牡蠣のフライには、牡蠣殻もそのまま盛り合わせております」と、誇らしげであった。
広島の締めくくりには、打ってつけの牡蠣であった。
広島の旅の終わりの締め括り
牡蠣を召せとのお告げを聴くかも
探し当てたオイスターバーの入り口には
牡蠣ギッシリの二缶迎えぬ
海水のしずく垂れるは獲りたての
証しなるらし素朴な迎えは
お勧めを問えば特大牡蠣フライ
流石なるかな広島の牡蠣は
シャブリ飲み酔いにし序のお遊びは
古典に倣ふや 牡蠣殻合わせは
牡蠣を剥き殻をも添える心根に
いたく痺れぬ牡蠣への誇りに