散歩の途上で、真紅の薔薇に出会った。
クリスマスが近づき、寒気も急ぎ足でやって来たが、そんな寒さに耐えて薔薇は今年最後の花を咲かせたのだろう。薔薇の花びらは陽ざしを受けて、恰もビロードの様な表情を見せていた。
許されるものならば摘み取って、一緒に散歩していた虚庵夫人の胸元を飾ってやりたいような、そんな誘惑に駆り立てる不思議な魅力を持った薔薇であった。
年の瀬の寒気もものかわ紅の
一輪の薔薇 健気に咲くかな
ビロードの花びら重ねて紅の
薔薇は咲くかな熱き思ひに
たれ恋ふや滾る思ひを秘めるらし
真紅の薔薇は真冬に咲くかな