「うつろ庵」の椿の木陰で、「乙女のサルビア」が咲いた。
正しい花の名前は「サルビア・ミクロフィラ・ホットリップス」だが、こんな長い名前は頂けないので、勝手ではあるが「うつろ庵」では「乙女のサルビア」と呼ぶことにした。花びらの縁に仄かな朱がさして、如何にも乙女の初々しさを思わせる。この呼名は「いける」のではあるまいか。
椿の木陰に育ち、日あたりが十分でなかったのが原因かもしれないが、花びらの縁色は、本来だと鮮やかな深紅に咲くはずだ。白い花びらの鮮やかな深紅の縁どりは、まさしく情熱的な唇、「ホットリップス」を思わせる。「ホットリップス」にならなかったのは残念だが、仄かな朱がさして、乙女の初々しさを連想させるこの気色も捨てがたいではないか。
あるがまま そのままがよし花の名は
「乙女のサルビア」君に捧げむ
生い茂る椿の枝葉のその陰に
ふた花咲くかな乙女のサルビア
たそがれの風に揺れるも相ともに
寄りそう侭なる二つ花かな
夕闇の乙女のサルビアほの白く
もの語るらし幽かに揺れるは