数日前のこと、虚庵夫人と連れだって散歩していたら、奇怪な花? 実? 何れとも見分けのつかない
草に出遭った。
車道の端の街路樹の根元に屈んでカメラを構えていたら、その後ろを車が猛スピードで通り抜けた。
ヒヤットして早々に退散した。その場での観察を諦めざるを得なかったのは残念だったが、「草の観察と
命のどちらが大切なの」とたしなめられて、「敵に利あり」と怯んだら、アレモ・コレモと矢継ぎ早の追い打ちに、虚庵居士は無言の轟沈であった。
女と云うものは、弱味を見せれば途端に威丈夫に変身するものらしい。
帰宅して調べたら、「小判草」だと判明した。
子供の頃、信州の野原で転げまわって育った虚庵居士は、この草を見た覚えがない。野草図鑑によればヨーロッパ(地中海沿岸地方)原産で、明治初期に渡来した帰化植物とあった。明治から100年足らずの信州の田舎には、野生化しても未だ伝播していなかったのかもしれないが・・・。
花か実か判別付かぬ姿して
風に揺れいる小判草かな
名の知れぬ野草をカメラに写さんと
屈めば身近に迫る車ぞ
観察を諦め愚痴れば我妹子(わぎもこ)は
命を草に捨てるかとぞ問ふ
野の草に夢を託すや小判草を
海こえて持ち込む古人の憶ひは