「虚庵居士のお遊び」

和歌・エッセー・フォート 心のときめきを

「鬼田平子・おにたびらこ」

2010-06-02 11:53:54 | 和歌

 長い首の先に、それぞれ七つ八つの黄花をつけて、「鬼田平子」が揺れていた。

 ごくありふれた路傍の野花ではあるが、名前も知らないままに見過ごしてきた。 風に揺れる黄花が、何やら話しかける風情に見えてその姿がいとおしく、カメラに収めた。名前を知らぬままに打ち過ぎて来たことが、野花に済まない思いで、さっそく野草図鑑のお世話になった。
「鬼田平子・おにたびらこ」、初めてお目にかかった名前である。図鑑によれば多少の違いに応じて、「田平子」「小鬼田平子」などの種類もあるようだ。





 タンポポに似た葉が根元に広がり、
その中央に細い花茎がヒョロヒョロ~と伸びて、頼りなげに立ちあがり、黄花を付けていた。

 枯れた花柄は、タンポポ同様に綿毛のついた種を風に運ばせるのであろう、飛び立つ寸前の綿毛が小花の間に見え隠れしていた。道端に咲いた野花が、次には何所へ飛んで花を咲かせるのだろうか。

 頼りなげな細い花茎の「鬼田平子」ではあるが、種の保存にかけ、命を守る野の花の知恵と懸命な生き様に、甚くシビレた。ごく自然の営みの中に、何やら貴重な訓えを頂いたような思いであった。



            小花黄花 かんばせ寄せ合う乙女子か

            路傍の鬼田平子の華やぎ


            一もとの揺れる花茎頼りなく

            語りかけるや鬼田平子は


            いと細き花茎のばして七つ八つ

            黄花は知るや旅立つ綿毛を


            野の花は何処に命を長らふや

            風に任せて舞う綿毛かも