近研ブログ

國學院大學近代日本文学研究会のブログです。
会の様子や文学的な話題をお届けします。

安岡章太郎「愛玩」 読書会

2013-06-19 03:52:40 | Weblog
6月17日の例会は、安岡章太郎「愛玩」の読書会でした。
司会は2年松尾が務めさせていただきました。

今回の例会で焦点となったのは、物語の最後で仲買人の腕を噛んだウサギを「僕」が見ているシーンです。
特に話題になったのは、なぜ「僕」は頭に血がのぼったのか、ということについてです。
この部分の意見としては、
・「僕」と父と母がウサギと同一化していたのでウサギと感情が同調した
・社会的に見下されている立場である「僕」が同じく見下されているウサギに共感した
・嫌悪していたウサギですら失ってしまうことに気付き愛着を持った
などたくさんの意見をいただきました。
また、なぜ「僕」は父が侮辱されたときではなく、ウサギがけなされたときに頭に血がのぼったのか、ということも問題としてあがっていました。

また他にも、
・漢字がカタカナで書かれていることで、作品で描写されている異常さや滑稽さを表している
・この作品に敗戦後の影響を暗示させる描写が多くあり、そのことから解釈できることも多くある
など様々な意見をいただきました。

岡崎先生からは、先行研究の現状を把握することや先行論者の研究を丁寧に読み、それを自分の読みに生かす、といった先行研究の扱い方についてや、語り手がある程度物語が進んだところから語っていることなどをご指摘していただきました。

次回6月24日は、中島敦「牛人」の研究発表になります。

2年 松尾