近研ブログ

國學院大學近代日本文学研究会のブログです。
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卒論発表「幸田文 人と文学論―「あとみよそわか」「台所のおと」「きもの」を中心に―」

2010-10-12 11:20:06 | Weblog
 発表者の方お疲れ様でした。今週は卒論発表という形で、発表が行われました。発表者は幸田文の「あとみよそわか」「台所の音」「きもの」の三作品を中心に、作者の文学論を読み解く論旨で発表されました。

 論文の構成としては、
序、『しつけ怗』『台所怗』『きもの怗』について
1、同時代表
2、先行論
3、作品分析
結、特殊な空間と身体的描写

 という構成で書く予定のようです。

 今日の発表では、論文を構成する前段階の発表として、作者の原点となっている父から教育された「衣・食・住」を題材とした三作品を中心に、藤本寿彦氏が指摘した〈身体性〉を探っていくことが主なテーマとなりました。
 まとめでは、父の厳格な教育を受けた非常に特殊な空間で、培われた作者の体験が、「台所の音」の〈音〉や「あとみやそわか」の〈父〉の姿のような、身体的な描写を描かく〈玄人〉としての文体へと変貌させていると述べられました。

 一方、参加者から発表者への指摘では、〈父〉の教えの本質的な意味が不足していることや、使用しているテキストの年代がそれぞれ異なることから、〈身体性〉という言葉の意味合いも各作品によって異なるといったことが指摘されました。
 私としましては、三つの作品を同時平行に扱って論文を執筆するというのは、技術的に難しく、精神的に辛いことだと思われます。
 ですから発表者の方は、まだ制作段階が途中ですが、残りの分を今回先生や先輩方が指摘されたことを踏まえて、新たな論文作りに励んでもらえればと思います。頑張ってください。

 以上が卒論発表の報告でした。来週は倉橋由美子の「パルタイ」です。来週発表の方は頑張って準備してきてください。

司会:石井