子どもの健康

子どもたちの健やかな成長を願って、子どもに関する小児科医の雑記

傷の消毒は今や非常識

2007-06-29 03:06:20 | 雑記
傷(やけどを含む)の処置の常識はここ数年で逆転してしまいました。

消毒は細胞を傷害するため傷の治りを悪くさせるので行わないのが今では常識になっています。
また、傷は乾かした方が早く治ると思われがちですが、早く綺麗に治すためには乾かさないことが常識になっています。

外などで転んでけがをした様なとき、土や砂など汚れている場合は優しく傷を水で洗ってあげ汚れを落とし、とりあえずはワセリン等を塗ってサランラップなどで傷を保護すると良いと思います。
最近は薬局などで、傷に直接密着する絆創膏(ハイドロコロイド)が市販されているの上手に利用すると良いと思います。
ガーゼは、傷にくっついてしまったりして傷の治りを悪くするのでお勧めしません(使用しない方がよい)。

けがにしろやけどにしろ、消毒して、抗生剤(化膿止め)の軟膏を塗って、ガーゼを貼るような処置は今や医療の現場では非常識となっています。

ここだけでは全てを記載することは出来ず誤解を招く可能性もあるので、ここで述べた傷の処置の仕方を積極的に広めた先生のホームページがあるので参考にしてみて下さい。
「新しい創傷治療」
とりあえず、このページの「その他」の項目の中にいろいろ役立つ情報が記載されています。

発熱したら、暖かくする、冷やす?

2007-06-26 14:59:57 | 雑記
子どもが風邪で熱をだした時、みなさんはどうのようにして様子をみますか。

「暖かくして汗をかかせるとよい」というようなことを時々耳にする一方で、「冷やしているのに熱がさがらない」というようなことも聞くことがあり、実際に自宅でどのようにしていることが多いのか(暖かくしているのか冷やしているのか)少し不思議に思うことがあります。

「汗をかかせたら熱が下がった」とよく聞きますが、気をつけなくてはいけないのは、「熱が下がる時に汗がでる」のであって「暖かくしたりして汗をかかせることで熱が下がる」のではありません。高い熱のある時には通常暖かくしたからといって汗がでるようなものではなく、逆に熱が放散できなくなり熱が上がってしまう可能性もあり避けなければなりません。

一方、冷やすことで熱が下がるかというと、これも必ずしもそうとは言えません。
冷やすことで一時的に多少熱が下がるかもしれませんが、熱の原因が改善されなければすぐ熱は上がってきます。例えて言うなら、「火にかけた鍋の中身に火を消さずに氷を入れる」のと同じような状況だと思います。
熱が体にこもらないように部屋の温度や服装に注意する必要はありますが、冷却シートや氷などで積極的にに冷やすようなことは、本人が冷やすことで気持ちがいい(楽になる)ならしてあげてよいですが、逆に嫌がるような時に無理強いする必要はないと思います。

原則は、(1)熱の上がり始めに手足が冷たかったり震えたりしているような時期には暖かくしてあげて、(2)少し時間がたって熱が上がりきって手足も暖かくなってきたら、熱がこもらないように少し薄着にしたり部屋の温度を調節したり注意してあげて下さい。

ただし、今の時期「熱中症」などの時は、風邪の熱と違い積極的に冷やす必要があるので注意して下さい。

便利すぎて・・・

2007-06-25 00:09:15 | 雑記
世の中色々と便利になってきていますが、便利になった分時間に余裕ができて自分の時間が多く持てるようになったかというと、逆に忙しく時間に追われるようになってはいないでしょうか。
物事の処理能力が早くなった分、やらなければならないことが逆に増えてしまったのだと思います。
人が楽になるはずの工夫や道具に、逆に人が振り回されてしまっているような状況ではないでしょうか。

だいぶ昔に読んだ本なのですが、ミヒャエル・エンデの「モモ」という物語のことを思い浮かべてしまいます。
「時間どろぼうとぬすまれた時間を人間にとりかえしてくれた女の子のふしぎな物語」なのですが、いまの世の中を暗示しているように思います。

時々、便利さの代償に気付かないうちに何か大切なものを失っていないか不安になります。

水分補給

2007-06-20 23:35:35 | 雑記
関東は梅雨入りしたと思ったら、暑い日が続いています。

暑くなってくると、喉が乾き水分を取る機会も増えてきます。
日常生活で水分補給のためにみなさんは何を選んでいるでしょうか。また、実際にはどんな飲み物が適切と思っているでしょうか?

結論から言えば、日常的な水分補給はに水が一番です。

スポーツドリンクなどいわゆるイオン飲料が良いのではと言う方もいると思いますが、日常的な水分補給に、電解質(塩分)や糖分などが入っている必要はありません。
イオン飲料の悪い点としては、イオン飲料を常用している子どもに虫歯の頻度が多いことがわかってきており、また小さいうちから甘い飲み物を飲む習慣がついてしまうのも問題だと思います。

病気で下痢や嘔吐などの症状がある時やスポーツなどの身体活動で非常に発汗などが多く水分や塩分の喪失が多い時には、水分と伴に適切な量の塩分と糖分の補給が必要になるので、そのような時にはイオン飲料を上手に利用するのは良いと思います。ただし、病気の時も病状により、また病気の時とスポーツ等の時などその状態に応じてイオン飲料の種類を適切に選ぶ必要はあります(下痢や嘔吐の症状が激しい時には、一般的なスポーツドリンクなどでは塩分の補給が十分にできません)。

お子さんが病気の時に乳幼児向けのイオン飲料などを上手に利用するのは良いと思いますが、元気になってからも水代わりにイオン飲料を飲ませ続けない様にして下さい。

男の子は小さいうちに「おたふくかぜ」に罹った方が良い?

2007-06-17 22:28:49 | 雑記
「男の子は小さいうちに”おたふくかぜ”に罹った方が良い。大きくなってから罹ると大変だから、しっかり免疫をつけておきたいし。」と言ったことを時々聞きます。

男性が大きくなってから”おたふくかぜ”に罹ると何が大変なのか? >> 子どもが出来なくなると言ったことをよく耳にします。

思春期以降に”おたふくかぜ”に罹ると、合併症として睾丸炎の頻度が増加します。左右両方の睾丸炎を起こすと不妊の原因となる可能性がありますが、片方の場合が多いので過度の心配はいりません。頻度は男性ほどではありませんが、女性も卵巣炎を合併することがあります。

確かに、思春期以降に”おたふくかぜ”に罹ると子どもの頃に罹るより症状もつらいことが多く、片方にしろ睾丸炎の合併などを考えると罹りたくないのは確かだと思います。

だからと言って、予防接種があるのに小さいうちに罹ってしまった方が良いのでしょうか?

小さい頃に罹っても、頻度は少ないにしろ睾丸炎になることもあるし、その他に髄膜炎や難聴などの合併症の可能性もあります。保育園や幼稚園・学校なども休まなければならないし、何か行事に重なれば残念な思いをすることもあるかもしれません。

予防接種をしていても”おとふくかぜ”に罹ってしまう方もいて、予防接種だけでの免疫では不安という方もいるかもしれません。ただ、多くの人が予防接種を行えば”おたふくかぜ”の流行自体も少なくなり、免疫が十分でない人も感染する機会も少なくなります。また、予防接種をしていて罹った場合には症状も軽くすむことが期待できます。

それでも予防接種だけでは大人になった時に心配と思う方は、大人になって子どもとの接触の機会が増えることがあれば、その時に再度予防接種を受けることを考えてもよいと思います。

自然に”おたふくかぜ”に罹るに任せておくのではなく、男の子に限らず多くの方が予防接種を受け”おたふくかぜ”の流行を起こさないようにすることで、”おたふくかぜ”の合併症などで不利益を被る人を減らせることが期待できます。

なので、「男の子には小さいうちに’おたふくかぜ”に罹った方が良い」などと言わずに、予防接種を受けてもらいたいと思うし、更には”おたふくかぜ”も麻疹や風疹と同じように行政が推奨する定期接種にしてもらいたいと思っています。

夏かぜが増えてきました

2007-06-16 03:27:03 | 雑記
熱を主症状とするウイルス性のかぜが増えてきました。
39度前後の熱がでて数日続くような経過のことが多い印象です。前にも投稿しましたが、夏かぜのウイルスに有効な薬はないので水分や栄養の補給に気を配りゆっくり休むことが必要です。

その他、溶連菌感染症が夏かぜと区別しずらいことがあり注意が必要です。

麻疹は、相変わらず内科の年齢層での発生は続いているようですが、松戸では小児の大きな流行は今の所なく、当院小児科にも受診する方は最近はいません。

あと以外だったのは、冬に流行することの多い咳のかぜ(RSウイルスによるかぜ)の患者さんを最近3例続けて検査で確認しました。このかぜは、以前にも紹介したことがありますが、咳がひどくまた長引き、呼吸がゼーゼーして喘息のような症状が出現することがあり、特に1歳以下の乳幼児で症状がひどくなることが多いので注意が必要です。夏の時期には医者(私)もあまり考慮することがない感染症だったので、これからは少し意識を変えなくてはならないと思っています。

2足のわらじ

2007-06-14 12:18:19 | 雑記
柔道の谷亮子選手に、世界選手権にむけて柔道に集中するよう子離れを全日本柔道連盟の強化委員長が勧めたといった記事をみかけました。

実際に谷選手がどうするのかは分かりませんが、いろいろな意見が飛び交いそうな話題です。

人が目標を達成するためにそのことに集中して努力することは良いことだし、そのためにいろいろと犠牲にしなければならないこともあると思います。

一方、子育ても生涯の中で経験できる数少ない貴重な出来事だと思います。乳幼児期の親の役割は子どもにとっても親にとっても、他のことに換えがたいその時にしかない重要かつ貴重な経験だと思います。

柔道だけに集中してきて今回代表になれなかった選手のことを考えると中途半端なことはできないだろうし、かといって子育てを甘くみられてしまうのもどうかと思うし、世界選手権と子育て(特に乳児期)の2足のわらじ自体が欲張り過ぎのように思うのは私だけでしょうか。

強い薬?

2007-06-12 12:27:20 | 雑記
「強い薬」からどのような印象をみなさんはもたれるでしょうか?
「良く効く薬」「副作用の強い薬」「良く効くけど副作用も出やすい薬」・・・

診療していると、「症状が変わらないのでもっと強い薬が欲しい」「強い薬に変えたのに症状が変わらない」「強い薬のせいで副作用がでたのではないか」・・・などのことを患者さんに言われることがあります。

単に強いといっても何が強いのかよく分からないような気がします。

薬は強い弱いで表現されるものではなく、その症状や病状に必要かつ適切であるかがポイントだと思います。症状や病状と起こるかもしれない薬の副反応のバランスを考え、薬の処方を考えます。病状によっては、副作用を覚悟の上で薬を使わなければならないこともあるし、病気の原因によっては少し症状には我慢してもらい薬を使用しない方がよい場合もあります。

診療する際、薬に関して強い弱いという表現は出来るだけ使わないようにしていますが、ステロイドの外用薬などに関してはその作用のランクに応じどうしても強い弱いという表現が必要な場合もあり、そのような場合には強い弱いがどういう意味なのか患者さんに分かるように使用するよう心がけています。

当たり前のこと

2007-06-10 22:52:44 | 雑記
最近の健康ブームをみていると、いろいろとちょっとどのよなものかなと思うことがよくあります。

なにかとても良い話のように聞こえても、それが当たり前の定着したものになったものはあまりないように思います。
とても良いことで、しかもみんなが出来る様なことであれば、当たり前のこととして定着してもよいように思います。

ただ、早寝早起き、食事をしかっりバランスよく取る、などよく言われるような当たり前のことをしっかり実行するものなかなか難しいのかもしれません。

病気の治療に関しても、同じことが言えるように思います。
目立つ様なことではなくても、確実に当たり前のことを行うことが大切だと思っています。

ただ、そのためには医療者側だけでなく医療を受ける方の理解と協力が不可欠です。
病院にかかったのに問題がすぐに解決しないと不安になったり焦ったりするのは当たり前だと思います。
医療側が何か気付かずにいる場合もあるかもしれませんし、一方で焦らず経過を見ながら判断していかなければならないことも少なくはありません。どちらにしても、医療を受ける患者さんと医療側双方の信頼と理解がなければうまくいかないと思います。よく、患者さん側からは信頼出来る医者かどうかということが言われますが、反論もあるかと思いますが医療側からみて信頼できる患者さんかどうかということも医療の現場では大切なことだと思います。

ただ、患者さんと医療者の良い関係というのも、当たり前が前提であるのが普通だと思います。

ゆっくり休む

2007-06-09 00:15:28 | 雑記
風邪にしろ何にしろ、具合の悪い時は無理せずにゆっくり休むのが大切です。

大人は仕事などがあり、どうししても多少の無理は自己判断でしかたないとも思いますが、最近では子どももゆっくり休む事ができないような社会環境になってしまっているように感じます。

学校は休めない、塾もある、小さい頃も親が仕事のため多少のことでは保育所へ、などなど子どももなかなか具合が悪いからと言ってゆっくり休むことができなくなってきてはいないでしょうか?

大人の生活や価値観を基準にして、子どものことを置き去りにしてしまってはいないでしょうか。