子どもの健康

子どもたちの健やかな成長を願って、子どもに関する小児科医の雑記

夏かぜ

2007-05-30 22:30:15 | 病気
これから6月から7月にかけて「夏かぜ」が多くなってきます。

「夏かぜ」と言うと、なんとなく寝冷えしてかぜをひいてしまった様な印象を持つ方もいるのではないでしょうか。

「夏かぜ」は、この時期に流行するいくつかのウイルス感染によるもので、特徴的な症状を呈するものには「手足口病」「ヘルパンギーナ」「咽頭結膜熱(プール熱)」などがあり、いくつかのウイルス(エンテロウイルス、アデノウイルスなど)によるもので、その原因ウイルスごとに発熱や発疹、下痢や嘔吐、肺炎や髄膜炎など多彩な症状を呈する可能性があります。

抗生剤などは無効で、「夏かぜ」の原因となるウイルスに対して効果的な薬剤はありませんが、多くの場合は自然の経過で治癒する感染症なので、変わったこと(合併症)などを起こさなければ自宅でゆっくり療養することが一番効果的と考えられます。
ただし、溶連菌感染症やマイコプラズマ感染症など抗生剤治療が必要な感染症も最近は散見され、また麻疹なども病初期では「夏かぜ」と区別することは必ずしも容易ではないので注意が必要です。

はしか(麻疹)その後

2007-05-29 17:04:15 | 雑記
あいかわらず首都圏を中心に麻疹の流行が報告されています。

ただし、本来小児科領域の感染症のはずが、今回の流行の中心となっている年齢が高いためか今のところ幸い松戸地区では小児科は麻疹の流行からは蚊帳の外といった感じです。このまま、年少者に感染が広がらないで流行が終息することを願っていますが、まだまだ安心はできません。

以前からの繰り返しになりますが、1歳(感染のリスクが高ければ6ヶ月)以上で、麻疹のワクチン接種歴のない方は成人も含め出来るだけ早いうちにワクチン接種をしましょう。

昨年より麻疹撲滅に向けて、日本でもようやく麻疹・風疹(MR)ワクチンの2回接種が小児の定期接種として行われるようになりました。
しかし、今回の流行状況をみていると小児期だけのワクチン接種の徹底だけでは麻疹の撲滅の道のりはまだまだなのかなとも感じます。一時的な対策にしろ小学生以降30歳代ぐらいまでの年齢も対象に、麻疹の既往歴がない場合には過去のワクチン接種が無いかしていても1回の場合はワクチン接種することも必要ではないかと思っています。

国際的にみて今の日本の現状を考えると、麻疹の撲滅は国の重要な政策として取り組む必要があるのではないかと思います。

日焼け

2007-05-27 09:44:37 | 雑記
日焼けは健康児のシンボルマークのように扱われてきました。
しかし、最近では紫外線傷害としての皮膚がんや皮膚の老化(しわ、しみ)の原因として注意が警鐘されています。
皮膚だけの問題ではなく、白内障発生の要因とも考えられています。

日焼けに対する一般的な注意事項は、いろいろなところで目にすることがあるのでここでは省略しますが、1点だけ「大人(親)や年長の兄弟の活動に合わせてしまい、年少者(乳幼児)に対する注意を怠らないように気をつけて下さい。」

日本人の日焼けに対する反応は、3タイプに分ける考え方があります。
1、日焼けするとすぐ赤くなるけれど、治りが早く黒くなり難い
2、1と3の中間
3、赤くなり難いがすぐ黒くなる

1のタイプの人は、3のタイプと人に比べ紫外線による皮膚の障害(皮膚細胞のDNA傷害)を起こしやすいと考えられており、より注意が必要と考えられます。

各家庭・個人での注意は当然ですが、保育園・幼稚園・学校などの集団活動においての紫外線に対する意識は非常に遅れており早急に改善してもらいたいことだと思います。

こんにゃくゼリー

2007-05-24 02:07:06 | 雑記
一口サイズのこんにゃくゼリーで、3月と4月に続けて7歳の男児2人が窒息死したとの報道を目にしました。

10年ほど前に同様の事故が何件かあり、その後注意が喚起されると共に形状の変更などもされて、その後1999年と2003年に1件ずつ事故の報道がありましたが、最近ではあまり話題になることはありませんでした。

人が作った製品で同様の事故が繰り返される以上は、早急に何かしらの対応が必要だと思います。

一方で、こんにゃくゼリーの問題とは別に、「危険な物=排除」と短絡した最近の風潮に少し違和感を感じてます。
危険なものであっても生活上欠かせないものは、事故があっても使用法など使う人の問題とされ、生活上必ずしも必要のない物で事故が起こったら、その物の危険性がクローズアップされ排除されてしまうように思います。

便利で安全なものと引き換えに、自分で判断する能力が低下してきてしまってはいないでしょうか?

水イボ(伝染性軟属腫)

2007-05-23 16:34:26 | 病気
これからプールの季節を前に、幼稚園や保育園児を中心にプールに入れてもらえないからと「水イボ」で受診する子が増えてきます。

「水イボ」は皮膚にウイルスが感染してできる良性のイボで、ほとんどの場合は半年から数年の経過で免疫が獲得されると自然に消失します。
直接皮膚を接触させたり、タオルなどを共有することで間接的に接触することで感染する可能性がありますが、感染性はそれほど強くなくプールの水を介して感染することはありません。なので、プールだけでなく子どもが集団で生活している以上はある程度の避けられないものなので、プールを制限すること自体はあまり意味がないと考えられています。ただし、まだ幼稚園や保育園では過去の習慣から「水イボ」があるとプールや水遊びを制限されてしまうことが多いようです。
かといって、まったく無頓着でいていいという訳ではなく、タオルを共有しない、プール・水遊び後にはシャワーなどで体をきれいに洗い流すなどの注意は必要です。

「水イボ」があったら必ず治療しなければならないということはないので、治療の適応は症状の程度、集団生活上の問題や親の希望などを総合的に考えて決めています。
治療法は、専用のピンセットで摘んでイボの中身ごと摘出する方法、薬剤(硝酸銀)でイボを腐食させる方法が一般的ですがそれぞれ一長一短があるので、治療の適応を含めかかりつけ医に相談して下さい。(ちなみに、当院ではピンセットでの処置を行っています。)

世界禁煙デー

2007-05-21 02:39:05 | 雑記
今月末の5月31日は、世界保健機関(WHO)が「喫煙しないことが一般的な社会習慣となること」を目指して世界中の国々に呼びかけている「世界禁煙デー」です。
日本の厚生労働省も、平成4年から世界禁煙デーに始まる一週間を「禁煙週間」としています。

今年のテーマは「無煙環境を考える」で、喫煙による健康影響、禁煙による効果等を認識し、効果的な受動喫煙防止対策の重要性等についての普及啓発を積極的に行うとなっています。

喫煙の健康への影響は誰もが認識していることだと思いますが、受動喫煙による他人への影響に関しての認識はまだまだ十分とは言えないように感じます。
特に家族内での子どもの受動喫煙は、小児科医として気になります。健康上の問題以外にも、将来的な子どもの喫煙開始への影響や乳幼児のたばこ誤飲などの問題を考えると、子どもの見える範囲での親や周囲の大人の喫煙は止めるべきだと思います。子ども(子どもに限らずたばこを吸わない人も含め)に対する受動喫煙は傷害行為と同じだとも思います。

時々、喫煙者の権利というようなことも聞きますが、明らかに健康に被害を及ぼすことが解っている以上は、非喫煙者の権利が優先されるべきだと思います。

麻疹

2007-05-18 22:41:09 | 雑記
首都圏中心に麻疹の流行が広がっています。

今の所、流行の中心は中学生以上から20歳代成人のようですが、幸い?年少者の発生は限られている印象です。
小児科医としては、1歳未満の定期接種対象前の乳児に流行が広がらないかと気になっています。

麻疹の発生拡大状況をみていると、記憶する限り(医師になって約20年)で最も勢いがあるように感じます。
前述した流行の中心となっている年齢層が、幼少者と違って活動範囲が広いことが災いしているのかもしれません。

周りの流行状況から、自分自身も具合が悪く麻疹が疑われると思う様な時には、極力出歩かないように心掛けることも必要ではないかと思います。

予防接種による予防にしても、個人の判断に任せておくのではなく、行政は乳児などに流行が広がらないよう積極的な対応が必要ではないかと思います。
行政の対応を待つまでもなく、1歳未満の乳児(ただし6ヶ月以上)の方も予防接種を考えてもよいように思っていますが、予防接種をしなくても、不必要に人ごみに外出しない、周りの大人(親)が麻疹の罹患歴がなければワクチン接種をするなどの対処を考える必要があるかもしれません。

今までにも何回も繰り返してきましたが、麻疹はワクチン接種を徹底して行う事で痘瘡やポリオと同様に撲滅することが可能な感染症です。麻疹に罹かることでしっかり免疫をつけた方が良いという考え方ま間違いで、とにかくみんなが確実にワクチン接種することが大切なことです。

R指定

2007-05-17 00:54:01 | 雑記
映画には、その内容によりR-15やR-18と言ったように観賞年齢制限規制があります。

最近のニュースを見ていると、子どもには見せたくない(見せる必要のない)ような内容のものが少なくないように思います。
発生した事件などの事実を報道する必要はあると思いますが、いろいろな事件の内容が詳細に(場合によっては興味本位に)報道され、そこまで報道する必要があるのかと思えることもあります。

現在、ニュースに限らずいろいろな情報が誰の目にも触れる形であふれています。
そして、私の子どもの頃を考えると、大人と子どもが目にする情報の内容の差が現在はなくなってきているように感じます。
子どもたちは、さまざまな情報を見聞きして、何かを感じ、何かしらその子どもたちの心理的な発達に影響しているものと思われます。

子どもたちが、さまざまな情報に触れること自体を適切に制限することは残念ながら完全にはできないと思います。
ただ、子どもに不適切と思われる様な情報を子どもが見聞きしたとき、親なり周りの大人が適切な助言をするなり何かしらの対応をしてあげなくてはならないと思います。
あまりにも当たり前の様に日常的にショッキングな事件などが報道され、社会全体の感覚が少しずつ麻痺してきてしまい、子どもへの配慮を忘れてしまってはいないでしょうか?

越境汚染

2007-05-13 18:52:25 | 雑記
「越境汚染」という言葉を耳にしたことがあるでしょうか?

先日の光化学スモッグ発生要因の一つとして、中国からの大気汚染の流入が関与している可能性が考えられています。

最近では、黄砂と健康被害の関係もよく耳にします。
気管支ぜんそくとの関連なども考えられています。

食物にしろ空気にしろ、今の世の中知らないうちに多くの人工的な化合物に暴露され、それがどのように健康に影響してくるのか予想が困難な状況になってきたのではないでしょうか。

黄砂に関して環境省が試験的に飛来情報を提供しているサイトを見つけました、環境省黄砂飛来情報でみることができます。花粉情報のように参考にしてみるのも良いかもしれません。

光化学スモッグ

2007-05-10 00:56:16 | 雑記
5月9日に東京都内で、光化学スモッグ注意報が発令されました。
平成になってからはもっとも早い時期の発令だそうです。

光化学スモッグは、自動車や工場から排出された窒素酸化物や炭化水素などが、太陽の強い紫外線を受けて光化学反応を起こして二次的汚染物質(光化学オキシダント)を生成し、気象条件等により空気中に停滞することにより発生します。

光化学スモッグが発生すると、目がチカチカして痛い、喉の痛み、ひどいと頭痛や吐き気などの症状を認めるようになります。対処法は、屋内に退避し、洗眼やうがい、シャワーを浴びるなどして休むことです。

日差しが強く気温が高く(25度以上)、弱い南風のときなど発生しやすい気象条件があるようです。

私が小中学生の頃(1970年代)によく発生していた記憶がありますが、その後工場や自動車の排出規制などにより一時期は耳にすることが少なかったのですが、またここ数年増加傾向にあるそうです。地球温暖化や都市部のヒートアイランド現象などの影響かとも言われているようです。

発生状況は各地域ごとに県や市町村で情報が提供されています。
千葉県では最新大気環境情報(光化学スモッグ情報等)でみることが出来ます。