子どもの健康

子どもたちの健やかな成長を願って、子どもに関する小児科医の雑記

夏かぜ

2006-05-23 23:55:44 | 病気
今年は例年より早く「夏かぜ」の患者さんが増えてきました。

「夏かぜ」とは、主にエンテロウイルスやアデノウイルスに起因する感染症の総称です。
特徴的な臨床症状を呈するものとして「手足口病」「ヘルパンギーナ」「プール熱(咽頭結膜熱)」などがあり、同じウイルスが原因であっても他に特徴的な症状のない発熱、下痢、発疹などさまざまな症状を呈することがあります。

「夏かぜ」には抗生剤は無効で、原因を治す様な効果的な薬はありません。
水分栄養の補給に注意しゆっくり休養することが一番で、薬は解熱剤などの症状を一時的に軽減するような対症的な薬を症状がつらければ使用しますが絶対必要なものではありません。
薬を使えば早く治ることはありませんし、ひどくなならないようにと早めに薬を飲んでも経過に影響はありません。
逆に薬を飲んで無理をすることで、症状を悪化させることのほうが注意が必要です。

多くの場合は自然の経過で治癒する感染症ですが、稀に重症化するものや合併症を併発することもあるので、経過中の症状には注意をはらい症状に応じて適切に病院に受診しなければなりません。

麻疹

2006-05-22 01:39:57 | 雑記
まだ限局的な報告ですが千葉県・茨城県での麻疹発生の報告が気になります。
平成14年と15年にも流行がありました。
その時には、麻疹の予防接種をしていなかった小中学生やまだ予防接種をしていない1歳未満の乳児を中心に感染者が多く、
残念ながら予防接種をしていたのに罹ってしまった方(多くは小中学生や大人)もいました。

いわゆる先進国と言われる国で麻疹が流行するような国は日本ぐらいで、
アメリカでは日本は麻疹の輸出国としてレッテルを貼られています。

麻疹は合併症なども多く、通常のインフルエンザよりも重症感の強い感染症で、有効な薬もありません。
ただし、麻疹の予防接種をみんなが受けることで麻疹の流行は阻止することが可能です。

1歳になったら確実に予防接種をうけましょう。
また、年齢にかかわらず麻疹の予防接種を受けていない方は接種をお勧めします。
1歳未満の乳児でも身近に麻疹の発生があれば、接種を考えても良いと思います。

日本脳炎予防接種

2006-05-14 22:47:57 | 雑記
厚生労働省から「日本脳炎ワクチン接種の積極的勧奨の差し控え」の通知が平成17年5月にだされ1年がたちます。

現行の日本脳炎ワクチンによる健康被害(急性散在性脳脊髄炎)が差し控えの理由です。
現行のワクチンが製造工程でマウスの脳を使用しているため、理論的に健康被害(急性散在性脳脊髄炎)の少ないと考えられるマウスの脳を使用せず製造される新しいワクチンが認可供給されるようになればこの差し控えは解除される予定になっています。

ただし、去年差し控えの通知がだされてから一年たっても、差し控え解除の見とうしや解除後のワクチン接種の実施の仕方等、被接種者であるみなさんや接種を行う現場に対して何の通知もないのが現状です。

診療の場でも、日本脳炎予防接種はどうしたらいいのかとよく質問されます。
一番良くないのは、予防接種を受けないでそのままになってしまうことだと思います。
私のところでは、定期接種(予防接種法で決めらえた接種)の対症年齢を過ぎてしまいそうな場合には現行のワクチンでの接種を勧めています。また、1期の追加接種などが残っている場合も接種を勧めていることが少なくありません。
まだ、対症年齢に余裕がある場合には新しいワクチンがでてからの接種を勧めていますが、実際のところ十分現状を解ってもらえれば現行でのワクチン接種も実施しています。

国を含めた行政は、できるだけ多くの子どもたちが安全で効果的な予防接種を受けれる様な制度環境づくりをする義務があります。
また子どもたちは予防接種を受ける権利があります。
今の日本の行政の姿勢は何かあった時の責任回避に力を入れ、多くの子どもが接種できる機会を狭めているように思えてなりません。

憲法記念日

2006-05-04 01:41:51 | 雑記
昨日5月3日は憲法記念日でした。
子どもの健康には関係ないと思うかもしれませんが、そう言わずに少し考えてみて下さい。

今の子どもたちのために、日本の未来をどのようにしていくのか?
多くの人がそれぞれの意見や方向性を考えるよい機会だと思います。
子どもたちが健全に育っていくためには、子どもたちの生活している社会自体が健全であることが前提となります。
そのための一つの手段として、ごく当たり前に存在していて、あまり意識することがない日本の憲法を年に一度ぐらいは意識して考えてみるのも必要ではないかと思います。

今話題になっている憲法第九条の改正などここでその是非を議論するつもりはありません。
ただ、私自身にとって中学高校と憲法を習った中で「戦争の放棄」ということは非常に記憶に残るものでした。
この憲法が現実にそぐわないということで改正の是非を議論されている訳ですが、もし改正されるとこれからの子どもたちにとってはそれが当たり前のことになってしまうということも少し考えなくてはならないかなとも思います。

どちらにしろ、これからの日本の方向性を左右する問題であり、今(これから)の子どもたちの未来に関わる重要なことだと思います。子どもを持つ親として、無頓着でいることのできない問題であることは確かではないでしょうか。