子どもの健康

子どもたちの健やかな成長を願って、子どもに関する小児科医の雑記

「とびひ」と「虫さされ」

2007-07-30 02:25:45 | 病気
掻き崩しなどの皮膚の傷に細菌(たいていは黄色ブドウ球菌)が繁殖して「とびひ」になってしまうことがあります。
医学的には「伝染性膿痂疹」と言い、水ぶくれ(水疱)や水ぶくれが破れてぐじゅぐじゅした発疹で、病変部の細菌を多く含む分泌物を介して、周囲の皮膚やいじった手を介して離れた場所の皮膚、また病変部の接触で他の人へとうつっていくことがあるため「とびひ」という俗名がついています。

適切な抗生剤の内服や外用と病変部を清潔に保つことで数日で治りますが、治りが悪い場合には抗生剤に対する耐性菌(MRSAなど)が原因菌であることを考える必要があります。

ただ時々、「虫さされ」に対する反応が強い方で、刺された場所が水ぶくれ(水疱)になってしまい掻き崩して一見「とびひ」のように見えることがあり、蚊に刺された痕がすぐ化膿してしまうといって抗生剤の外用薬を塗っていてなかなか発疹が治らないという方をみかけます。
この場合には抗生剤の外用は無効なので、ステロイドや抗ヒスタミン剤といってアレルギー反応を押さえる薬の外用が必要ですので注意して下さい。当然、掻き崩した所を清潔にしていないと、そこから「とびひ」に発展していく可能性はあります。

また、「虫さされ」から「とびひ」に発展した場合には、抗生剤に加えかゆみ(アレルギー反応)を押さえるためにステロイドや抗ヒスタミン剤の外用を併用する必要もあります。

まずは「とびひ」にならないよう、普段から入浴やシャワーなどで皮膚を清潔に保つよう心掛けましょう。

平均寿命

2007-07-28 03:21:49 | 雑記
「2006年の日本人女性の平均寿命は85.81歳で、22年連続で長寿世界一、男性は79歳で、05年の世界4位から04年と同じ2位に順位を戻した。」といった記事をみました。

みなさんはこの記事を見てどう思っているでしょうか?
ただ表面的な数字をみて長生きは良い事だと単純に喜んでいる場合でもないと思います。

今のこの長寿を支えているさまざまな社会要因が今後も機能し続けていけるのか?

長生きといっても、その内容(質)はどのようなものなのか?
喜びを感じながら有意義な生活を送ることができているのか?

まだまだ、いろいろなことを考えさせられることだと思います。

ただ長寿といっても、こらからの自分自身や子どもたちに関わってくる多くの課題を暗示しているのではないでしょうか。

風邪のイメージ

2007-07-25 15:41:02 | 雑記
もなさんは以下の様な発熱を訴えて外来を受診したお子さんの診察場面の会話をみてどう感じるでしょうか。

保護者 「咳も鼻水もないし原因はなんですか?」
医師  「風邪の熱だと思いますよ」
保護者 「じゃ、のどは赤いのですか?」
医師  「のども真っ赤というほどではありません、でも、風邪だと思います」
保護者 「それで、この風邪はうつりますか?」
医師  「うつってもおかしくありません」

まったく保護者と医師の会話は噛み合っていないのは、風邪というもののイメージが双方でまったく違うからだと思います。

この場合に患者側である保護者は、風邪を症状からイメージし、医師は原因からイメージしています。
風邪ならのどが赤くて、咳や鼻水でているといったイメージは必ずしも間違いではありません。
ただ、風邪を原因の面から急性の自然治癒するだろうウイルス感染症全般としてイメージすると、必ずしも喉が赤く咳や鼻水といった症状にこだわる必要はありません。熱だけが主症状のこともあるだろうし、下痢や嘔吐などの消化器症状が主体のこともあるかもしれません、発疹や結膜炎を伴う様なものもあります。そして、ウイルス感染症なのでうつります。

もう少し補足すると、風邪(ウイルス)がうつったら必ず発症するかというそうではなく、その風邪(ウイルス)に十分な免疫がある方はうつっても発症することはなく、免疫が不十分な方が発症してしまいます。ただ、発症せずに済んでもその風邪(ウイルス)を他の人に伝搬する可能性はあります。
人は一見何の症状もなく健康な状態でも、いろいろな細菌やウイルスと共存しています。
代表的は例では、乳児の突発性発疹症の原因ウイルス(ヒトヘルペスウイルス6型や7型)は、ある年齢以上であればほとんどの人がウイルスを保有していて、子どもに対する感染源は保育者である大人であることが多いと考えられています。

医師は出来る限り患者さんに分りやすく説明する責任があると思いますが、限られた診療時間の中で完全に説明することは難しく、ある程度は医師を信頼してもらえると助かります。

手足口病

2007-07-24 19:39:27 | 病気
手足口病が多くなってきました。

手足口病の原因となるウイルスの一群(エンテロウイルス)は、手足口病以外にもヘルパンギーナ(発熱と口内炎)などの原因にもなるし、発疹等特徴的な症状を認めず熱だけが症状だったりと多彩な症状を呈するウイルスです。
何かかぜと言う以外に特別に名前が付いていると大変な病気のように感じるかもしれませんが、手足口病は夏に流行するウイルス性感染症(夏かぜ)の中の一つです。

症状は、名前のとおり手足の発疹と口内炎が特徴で、発疹は膝、おしり、肘にも認める場合が多く、高い熱がでることもありますが、熱もなく元気にまま経過することも少なくありません。

特に薬は必要なく(効果のある薬はありません)、多くの場合自然の経過で治癒します。

潜伏期は3~7日程度で、熱もなく元気があれば隔離の必要はありませんが、便中には数週間に渡りウイルスが排泄され続けますので、トイレの後の手洗い、乳児のオムツ替え後の手洗い、などはしばらく徹底する必要があります。

ただ、希にですが髄膜炎・脳症や心筋炎といった重篤な合併症を認めることもありますので、状態の変化に注意を怠らないよう心掛けて下さい。

危機管理と説明責任

2007-07-22 17:27:35 | 雑記
7月16日の新潟県中越沖地震での柏崎刈羽原子力発電所の被災関連のニュースを見ていて危機管理と周辺住人や国民に対する説明責任など医療にも共通する問題があるように思いました。

絶対(100%)安全ということはあり得ないということ(医療ミスや薬・治療に伴う不測の副作用などはある頻度で必ず起こる可能性がある)を前提に、どのような事が起こりうる可能性があるのか、そのような事態が起こらないようにまた万が一に発生したら大きな問題に発展しないよう最小限に停めるための対策・態勢がとられていることが危機管理というものです。

そして、今回の原子力発電所であれば周辺住民や国民に対し電力会社や国は、医療であれば医療行為を受ける側の方たちに対し医療者は、そのことを説明する責任があります。

原子力発電所にしても医療行為にしてもその必要性を考慮しリスクが許容出来る範囲内でなければなりません。
ただ、何にしてもお互いの信頼関係がなければ成り立たないことだと思います。

日本脳炎予防?

2007-07-20 01:56:26 | 雑記
19日の朝日新聞夕刊に、「日本脳炎予防 ポスター作戦 (厚労省全国配布へ)」という見出しの記事が出ていました。

ポスターの内容は記事によると、「西日本地域(中国、四国、九州等)でブタの多い場所や、蚊が発生する水田、沼地の周辺では特に気をてけましょう」「長袖、長ズボンの着用」「防虫薬の使用」「蚊の活動が活発な夕方は注意する」などとなっているようです。

内容的に何か違和感を感じるのは私だけでしょうか・・・
何か実際には注意しようにもどうしようもないことを羅列しているだけで、「予防接種の積極的推奨の差し控え」の期間が長くなる中、患者が発生した時に厚生労働省に向けられる責任問題を回避する言い訳作りのようにも見えてしまいます。

日本脳炎は、日本脳炎ウイルスに感染したブタから蚊(コガタアカイエカ)が媒介して人に感染します。
日本脳炎や蚊・ブタの感染状況などについての情報は、国立感染症研究所ウイルス第一部HP国立感染症研究所感染症情報センターHPなどを参考にしてみてください。

厚生労働省は、日本脳炎予防に対しての現行ワクチンでの予防の必要性(有用性)に関して態度を明確にするべきだと思います。

夏休み

2007-07-18 23:36:34 | 雑記
幼稚園・学校など夏休みの時期になりました。

子どもたちそれぞれいろんな夏休みの過ごし方があると思います。

就寝起床食事など生活のリズムを崩さないよう、また何かしっかり目標を決めて過ごすことが大切だと思います。

私が子どもの頃、何か目標を持って夏休みを過ごしていたというと、そんなことはなく、外にでて遊んでいただけだったように思います。ただ、虫取りにしろ、自転車で走り回るにしろ、しっかり目標を立てた訳ではなくても自分たちで考え体を動かし、何かしら遊びの中から得るものがあったように思います。

今の子どもたちの遊びをみていると、ゲームや娯楽施設で過ごしたり、大人が作った与えられたものの中での遊びが多いように思います。このような、遊びはその時は楽しいかもしれませんが、その後何か子どもたちの経験として得るものがあまりないように思います。
今の世の中、このような与えられた遊び(娯楽)に時間を多く取り過ぎないためにも、何か目標をもって自由になる時間を有意義に過ごすための気配りが必要なのではないかと思います。

かぜ薬

2007-07-15 19:24:06 | 雑記
夏かぜなどウイルス性の感染症の場合に、薬の内服の必要がないことも多く「普通のかぜなので薬の必要はないからゆっくり休んで様子見てください」と言うことがあります。そのような時に保護者から「何かかぜ薬はでないのですか?」と聞かれることがあります。

いったい「かぜ薬」とはなんでしょうか?

「かぜを治す薬」と言うのなら、それは違います。
かぜ=ウイルス感染症と考えるなら、かぜを治す薬はインフルエンザを除けば存在しません。抗生剤はウイルスにはまったく効果はありません。かぜは、自分の免疫の働きで自然に治るのを待たなければなりません。

「かぜの症状を軽減する薬」と言われれば、そのとうりです。
咳や鼻水をおさえる薬(咳止め、鼻水止め)、吐き気おさえる薬(鎮吐剤)、熱や痛みをおさえる薬(解熱鎮痛剤)などなど症状を一時的に軽くする作用の薬で、症状の原因となっているかぜ自体を治す薬ではないので、効果は薬の作用している間に限られ、かぜが治らなければ完全に症状は治まりません。
なので、かぜの症状自体つらいことがなければ、このような薬も必要ありません。逆に、薬の効果で一時的に体が楽になり、かぜが自体治っていないのに無理をする結果にになり結局かぜの治りを遅らせたり、咳などは気管から痰を出すために必要なこともあり、何でも薬を飲めばいいかと言うとそうとは限りません。

症状や状態に応じ必要な薬をだすことになるので、「かぜなのでかぜ薬を出しておきます」と言うことはありません。

日本脳炎予防接種

2007-07-14 01:27:31 | 雑記
平成17年に現行ワクチンでの推奨接種の差し控えの通知が厚生労働省からだされ、先行きの具体的な見通しも示されないまま現在に至っています。

そんな中、現在日本脳炎ワクチンの供給が不足しています。
ワクチン製造メーカーの生産量自体も差し控えの通知後少なくなっているのもあるのですが、差し控え後新しいワクチンでの再開の見通しもはっきりせず、差し控えの期間が長くなってしまったため、接種をする医療機関と接種を希望する保護者の方が増えてきたためではないかと思います。

厚生労働省は、ワクチンの副反応が出た時の責任問題に萎縮してしまい、病気を予防するという予防接種の本来の目的に対する積極的な姿勢を示す事なく、日本脳炎ワクチン接種の判断を現場(接種する医療機関と保護者)に任せた姿勢を続けています。
新しいワクチンでの接種再開まで、日本脳炎の発生が増えるなどしない限り厚生労働省は今の状態を続けるのだと思います。

今年の麻疹の流行で、厚生労働省の予防接種に対する姿勢がいかに不十分で国際的に遅れたものなのかがみなさんも分ったのではないでしょうか。
予防接種は、病気が流行してから対応するものではなく、病気を流行させないために事前に行っておくものであることを忘れないで下さい。
厚生労働省の姿勢の問題だけではなく、我々予防接種を受ける側も「何かやらなくてはいけない予防接種と言われたので」「通知が来たから」などと受け身の姿勢で予防接種を受けるのではなく、病気の予防ということを積極的に考えて予防接種に関心を持つ必要があると思います。

夏風邪と溶連菌感染症

2007-07-11 16:56:21 | 雑記
熱を出して病院に受診する子が増えてきました。

6月から7月にかけては、いわゆる「夏風邪」が多い時期なのと、「夏風邪」に混じって「溶連菌感染症」が多いためかと思っています。

「夏風邪」は、アデノウイルスやエンテロウイルスといったウイルス感染によって引き起こされるもので、発熱を主症状とするものが多いのですが、その他に下痢などの消化器症状や発疹など多彩な症状を呈する可能性があり、重篤な合併症としては髄膜炎・脳炎・肺炎などを認めることもあります。

特徴的な症状が見られるものとして「プール熱」「手足口病」「ヘルパンギーナ」などが「夏風邪」の中に含められます。

多くの場合は数日の経過で自然に治癒する感染症で、抗生剤を含め原因に対して効果のある薬はないので、水分や栄養の補給に心掛け回復するまでゆっくり休養することが大切です。

一方「溶連菌感染症」は、「夏風邪」とは逆にしっかり抗生剤を内服して治療する必要があります。

典型的な症状があれば、「溶連菌感染症」は診察だけで診断できることが多いのですが、必ずしも診察した時点で典型的な症状がみられる訳ではなく、「夏風邪」と区別が困難な場合も少なくありません。
「夏風邪」と診断して抗生剤を処方せず経過観察とした子が翌日発疹がでたと再診し「溶連菌感染症」だったこともあります。
「溶連菌感染症」には外来で数分で結果のでる迅速検査があるので、「夏風邪」と「溶連菌感染症」を区別するために検査をすることがどうしても多くなってしまいます。

どんな病気でも診察した時の診断は100%ということはあり得ないので、その後の経過で何か変わったことや心配なことがあれば、必ず再診するなどそのままにしないようにして下さい。
病気の治療は、患者さんと医療の間の信頼関係があって始めて成り立つ共同作業のようなものだと思います。