子どもの健康

子どもたちの健やかな成長を願って、子どもに関する小児科医の雑記

これからのワクチンの話題

2011-06-26 19:02:06 | 雑記
過去20年近く停滞していた日本のワクチン事情が、ここ数年で急速に国際水準に近づこうとしており、それに伴いワクチンに関する話題も多くなっています。
今、分かっているワクチンの話題を紹介します。

1、ロタウイルスワクチン

既にワクチンは承認されており、早ければ、今度の流行期(冬)前に接種が可能になると思われます。

ロタウイルスは、ウイルス生胃腸炎の原因となるウイルスの中の一つで、冬季に乳幼児を中心に流行し「乳児嘔吐下痢症」とよく言われるもので、症状としては「白色の下痢」でみなさんご存知かと思います。

乳幼児期にほとんどの子どもが初感染を経験し、多くの場合は自宅での療養で対応できますが、40人に1人程度の頻度で重症例がみられ入院治療が必要になることがあります。

現在諸外国では2種類のワクチンが使用されており、2種類とも経口生ワクチンで接種回数にそれぞれ2回と3回といった違いがあります。今回日本で導入予定のワクチンは2回接種で、生後6週から24週の間に2回飲むことになります。1回目は生後15週になる前に済ませ、2回目を4週以上間隔をおいて接種することになると思われます。

定期接種に組み込まれるなり費用助成で全ての接種対象となる子どもたちに接種できるようになることが望まれますが、当面は任意の接種で費用がかかると思われ、接種対象は限定されてしまうと思います。乳児期から保育園など集団生活を考えているような場合には、費用を考えても接種のメリットがあるのではないかと思います。


2、インフルエンザワクチンの小児接種量の見直し

現在日本では、1歳未満:0.1ml、1~6歳未満:0.2ml、6~13歳未満:0.3ml、13歳以上:0.5ml(成人と同量)で、13歳未満は2回接種となっています。

昨シーズンに接種量の変更が予定されていましたが間に合わず、今度の接種から接種量が変更される見通しとなっています。

今回、3歳未満:0.25ml、3歳以上:0.5mlとなり、過去に接種歴のない場合のみ2回接種となる見込みです。

以前から、1歳未満のインフルエンザワクチンの効果は、接種量が少ないため限定的(不確実)とのことで積極的にはお勧めしていませんでしたが、今回変更になれば1歳未満でも6ヶ月以上なら接種をお勧めすることになると思います。

高校2年生対象の子宮頸がんワクチン新規受付再開

2011-06-26 18:21:17 | 雑記
子宮頸がんワクチン新規接種受付は、メーカーのワクチン供給体制の問題で一時見合わせていましたが、供給改善にともない順次接種再開できる見通しとなりました。

まず、高校2年生接種希望者の新規接種が可能となりました。
高校2年生以外の接種希望者の方はもうしばらくお待ち下さい。

今年度は高校2年生も接種費用助成の対象となっていますが、費用助成を受けるためには松戸市では平成23年9月30日までに1回目の接種をする必要がありますのでご注意下さい。
また、3回目の接種も平成24年3月31日までに済ませるようにして下さい。

「松戸市:子宮頸がんワクチン接種再開のお知らせ(高校2年生相当年齢の方へ)」

高校2年生の接種は当クリニックでも受け付けていますので、ご希望の方はお問い合わせ下さい。

ヒブワクチン・肺炎球菌ワクチン同時接種後の死亡報告(熊本市)について

2011-06-15 22:05:53 | 雑記
既に報道でご存知と思いますが、熊本市が13日に「市内の医療機関でヒブワクチンと小児用肺炎球菌ワクチンの同時接種を6月3日受けた同市在住の2カ月の男児が、接種翌日に死亡していた」との発表をしました。

3月に報道された予防接種同時接種後の死亡報告(7例)後の初めての死亡報告(8例目)で熊本市では2例目の報告となります。

熊本市は接種と死亡との因果関係について「現時点では不明」としており、 厚労労働相は「接種時の状況などについて情報収集し、因果関係の有無について専門家に意見を聞いている段階」とのこのとで接種見合わせなどの対応は今のところ行われてはいません。

具体的な調査結果がでていないのでどのような対応がとられるのか結果を待つしかありませんが、今得られる情報から判断して、今の段階で当クリニックでは今まで通り同時接種を含めヒブワクチン・肺炎球菌ワクチンの接種は継続します。
当クリニックで接種予定している方で、結果がでるまで接種することに不安があり接種を見合たいなどの場合は早めにご連絡をお願いします。

亡くなられたお子さんの遺族の方は非常に辛い思いをし、色々な報道や色々な人の発言を聞いたり見たりすることで色々な思いを持たれることに考え無責任な事は言えないという思いと同時に、何も自分の態度をはっきりしないまま接種を続けることもできないと考えて、今の自分の立場を書きましたので、これから接種を予定している方は参考にして下さい。

3月の死亡報告に関しては予防接種との明確な因果関係はないとのことで4月より、同時接種を含めヒブワクチン・肺炎球菌ワクチン接種は再開されていました。

今回の事例は時間経過(接種翌日に死亡)以外に乳児突然死症候群(SIDS)の可能性が示唆されている他、死亡の原因は今のところ報道されていません。

予防接種が原因で翌日の死亡するようなことがあるのなら、死亡後にしても調べれば何かしらはっきりした異常が認められるだろうと、多くの医師は考えることだと思います。
何もはっきりした原因が調べてもわからなければ、乳児突然死症候群(SIDS)という可能性になる訳ですが、予防接種(または同時接種)で乳児突然死症候群(SIDS)の危険性が高まるのではないかとという可能性が残されます。ただ、日本では同時接種を含めヒブワクチン・肺炎球菌ワクチンの接種の歴史が浅いため結論は出せません(今のところ危険性の増加はない)が、日本以外の諸外国では同時接種を含めヒブワクチン・肺炎球菌ワクチンの接種は10年以上の実績があり、今まで乳児突然死症候群(SIDS)の危険性が高まるといった報告はなされていません。

厚生労働省の予防接種後副反応報告書(平成16年4月1日~平成21年3月31日)では、時間経過や因果関係など詳細は読み取れませんが、5年間でヒブワクチン・肺炎球菌ワクチン以外の小児定期接種(単独接種)で29例の死亡が報告されています。

一方で、ワクチン接種をすることで予防できる病気で亡くなられたり・後遺症を残す事になってしまったり辛い思いをする子どもや保護者の方も少なくはなく、ワクチンを適切な時期にすることでこれらのことの多くが防げることは諸外国の状況をみれば明らかです。

これらのことを考慮し、現段階では厚生労働省からはっきりした通知が発表されるまで、当クリニックでは今まで通りワクチン接種をしていく方針です。
ただ、保護者の方に強制するつもりはありませんので、同時接種を含めヒブワクチン・肺炎球菌ワクチンをどの様に受けるかの最終的は判断は保護者がすることになります。

難しい判断かもしれませんが、接種をどうしたらよいかと聞かれたら、現状では同時接種も含め接種することをお勧めします。

日本脳炎予防接種:「積極的勧奨の差し控え」で接種を完了していない場合

2011-06-12 17:55:02 | 雑記
旧日本脳炎ワクチンによる重篤な副反応(急性散在性脳脊髄炎)の事例の発生をきっかけに、平成7年5月30日に厚生労働省から「日本脳炎ワクチン接種の積極的勧奨の差し控え」の通知がだされ、それ以降日本脳炎ワクチン接種行われてはいましたが、多くの接種対象となるお子さんは接種をしていないか、規定回数の接種を完了しないまま現在に至っていると思います。

平成21年6月以後は、新しい日本脳炎ワクチン接種が可能となっていましたが、色々な事情(主にはワクチンの供給体制)で「接種の積極的勧奨の差し控え」が続いていました。

今回、平成23年5月20日に厚生労働省より、「接種の積極的勧奨の差し控え」の影響で接種が完了していないお子さんへのへの接種に関する通知が発表されました。

平成7年6月1日~平成19年4月1日生まれの方は、20歳になるまでの期間いつでも日本脳炎ワクチン接種ができるようになりました。

今までの接種状況や各自治体(市町村)の対応状況で、接種の仕方が異なりますので、実際の接種については自治体担当部署にお問い合わせ下さい。

当クリニックで接種希望の方は、予約時に確認しますので母子手帳をみて今までの接種状況が分かるようにしておいて下さい。

厚生労働省通知内容:「日本脳炎の予防接種についてのご案内」