子どもの健康

子どもたちの健やかな成長を願って、子どもに関する小児科医の雑記

インフルエンザ、今シーズンはどうしよう?

2007-10-31 17:53:41 | 雑記
散発的ですが、インフルエンザ発生の報告がされ始めました。
このまま流行期に入るとは思えませんが、動向に注意は必要だと思います。

今シーズン、インフルエンザに対してタミフルの処方をどうしようかと考えている医者は多いのではないかと思います。

医学的な判断は別として、現状では10歳以上の未成年者の対する処方は原則行わないといったところでは、ほとんどの医師は同じ対応だと思います。(自分の小児科では、保護者の責任において同意のもとでの処方は行う方向で考えています)

1歳未満の処方(異常行動とは別の問題で製薬会社が通知を出している)に関しては、いろいろと意見が分かれるところですが、保護者に十分な説明をして上で希望があれば処方は可能と考えています。

その他の年齢に対しては、無条件で処方してしてもよいのか?
やはり、「インフルエンザという感染症のこと」および「タミフルに代表される抗インフルエンザ薬のこと」についての正確な情報を元に保護者が判断することになるのではないかと思います。

以前からの何度もの繰り返しになりますが、インフルエンザ自体は無理せずゆっくり療養することで、特別な薬はなくてもほとんどの健康な子どもや成人では自然に治癒する感染症です。
確かに他の風邪に比べて症状が辛いことが多く、重篤な合併症の頻度も多いのは事実ですが、事前にワクチン接種をすることで多くのリスクの低減が期待出来る感染症でもあります。

ここ数年で、「インフルエンザに罹った=早期にタミフルを飲まなくては治らない」といった思い込みが浸透してしまったように思います。

タミフルの他にリレンザという薬がありますが、今のところタミフルのような異常行動に対する注意はでていませんが、今までの使用例がタミフルに比べ非常に少なかったので、今後使用例が増えれば同様の問題が発生する可能性は否定できません。

インフルエンザと異常行動の問題は、タミフル内服の有無に関わらず、熱せん妄や脳症などにおいても起こりうることなのでタミフルを飲まなければ大丈夫という訳でもない(タミフルとの因果関係自体も今のところ明確ではない)ので、保護者の方はインフルエンザに罹ったお子さんの状態に注意を怠らないようにする必要があります。

自分の小児科ホームページ内の情報:「インフルエンザについて」「インフルエンザの薬(タミフル)について」など参考にしてみて下さい。

かぜ薬

2007-10-24 19:33:58 | 雑記
「米食品医薬品局(FDA)の小児医療に関する諮問委員会が、医師の処方なしに買える風邪薬やせき止め薬は、子どもへの効果が確認されていないとして、6歳未満の子どもに使うべきではないとFDAに勧告した。」といった内容の報道がありました。

日本のことではないので関係ないと思うかもしれませんが、今一度かぜ薬(市販)について考えてみたいと思います。。

いわゆる市販のかぜ薬は、風邪を原因から治すような薬ではなく、熱・咳・鼻水といったかぜ症状を一時的に緩和させるための薬で、その成分は解熱剤(アセトアミノフェン)、鼻水止め(抗ヒスタミン剤)、咳止め(メチルエフェドリン、リン酸ジヒドロコデインなど)、去痰剤、など通常4~5種類の成分が混合されたものです。
通常の風邪であれば、薬を飲んで様子をみている内に自然に風邪自体が治ってしまうことが多いとは思います(薬を飲まなくても無理せず休養していれば治ると言う事)。
ただし、かぜ薬を飲んだ時には、熱等が下がったからといって治ったと思い、実は解熱剤の効果で一時的に下がっていただけで風邪自体治り切っていないのに無理をしてしまうようなことにもなりかねないので逆に注意が必要ですし、またいろいろな症状が覆い隠されてしまい気をつけなければならない様な病気の発見を遅らせてしまう可能性も考えられます。

少なくとも子どもに関しては、かぜ薬(市販)はあえて飲む必要はない薬と言えます。
風邪気味だからということで薬の効能より安易に飲むことの弊害のほうが大きいのではないかとも考えられます。

先のFDAへの勧告の意味はこのようなことではないかと思います。

風邪はどこで感染するのか

2007-10-22 01:21:41 | 雑記
まだまだ数は少ないようですがインフルエンザ発生の報告を耳にするようになってきました。

インフルエンザを含め風邪はどこで感染が広がっていくのでしょうか。
家庭内、学校、幼稚園、保育園などはすぐ思い浮かぶのではないでしょうか。
それ以外にも、最近は週末など多くの人が集まる大型の商業施設や娯楽施設などは要注意の場所です。
残念ながら、病院の待合室というのも注意が必要な場所です。

ただ、病院や家庭内、学校、幼稚園、保育園などでは、あらかじめ感染が広がらないよう注意し対策をとることができますが、不特定多数の人が集まる場所でははなかなかそういう訳にもいかないのでそれなりの配慮が必要になります。
風邪(特にインフルエンザなど)の流行期には、出来るだけ多くの人の集まるような場所には出かけることを控えるなど心がける必要があると思います。電車、飛行機、映画館など閉鎖された狭い空間なども特に注意が必要ではないかと思います。

最近は昔に比べ、乳児期のお子さんを連れて出かける方も多くみかけるようになりましたが、お子さんが小さいうちは子どもにとって必要のないお出かけはできるだけ少なくする配慮(親の我慢)も必要ではないかと思います。

また、自分が具合の悪い時には出来るだけ自宅の療養するようにして、他の人にうつさないようにする心がけは社会のマナーだと思います。

多くの人の行き来する現代社会はインフルエンザなどの風邪が流行しやすい環境といえますが、その流行を出来るだけ大きくさせないためには、我々一人一人の心がけが重要なポイントではないかと思います。

脳科学

2007-10-14 21:29:08 | 雑記
「脳を鍛える・・・」「脳を活性化する・・・」「脳が若返る・・・」
などとといった本やゲームが世の中にあふれています。
「脳科学」に基づいたものとして、いかにも脳に良い働きをする物のようにもてはやされています。

「脳科学」の言葉のもとで言われていることが正しい事として一人歩きしているようで心配になります。
今「脳科学」で解っていることというのは、ごく基礎的ないろいな脳の働きのそれぞれ一部の側面からみたことがらだけで、実際にそのことが総合的にどのように個々の人間に表現されているのかといったことはまったく解っていない段階です。
確かに、何もしないでボーとしているよりも少しは何らかの形で脳を働かせた方が良いとは思いますが、実際にどんな効果があるのかは疑問です。

最近は「脳科学」を子育てや教育に取り入れるようは動きも見受けられ、本当に良いのかどうか解らないような方法論だけ一人歩きしてしまわないかと心配にもなります。
道徳観や人間性や人の能力といった事も「脳科学」で説明できるかのように錯覚させられてしまいそうですが、いずれはそうなるかも知れませんが、今の段階では「脳科学」はそのようなものではありません。

正しいかどうかは別にして、はっきりした方法論を提示されるとついそれに頼ってしまうのが人間だと思いますが、それよりも我々大人ひとりひとりが、子どもが子どもらしく生活出来る環境づくりや家族や社会全体が愛情や思いやりを持って子どもを見守っていくような環境づくりを心掛けることの方が大切ではないかと思います。

子どもの運動能力

2007-10-08 11:51:30 | 雑記
文部科学省の行っている体力・運動能力調査で、20年来低下傾向にあった子どもの運動能力が下げ止まり傾向にあるとの報道をみました。「子どもに運動が少ないライフスタイルが定着し、これ以上は下がらないとも考えられる」との専門家の意見も書かれていました。

運動能力だけではなく、最近では学力低下の話題も気になります。
どちらも、子どもを取り巻く様々な環境や価値観の変化によるもので、細かく見ればいろいろなことが考えられると思います。

子どもが育っていく環境を作りその方向性を決めているのは我々大人であり責任は重大だと思います。運動にしろ学力にしろ子どもたちの僅かな一面しかみていませんが、その他にも良い面も悪い面も含めて子どもたちは大きく変化しています。
子どもの状況は大人を鏡に映したようなものだと思います。
自分自身をふくめ我々大人が何か大切な方向性を見失ってしまっているのではないかと心配になります。