子どもの健康

子どもたちの健やかな成長を願って、子どもに関する小児科医の雑記

中国でのポリオ発生

2011-09-23 17:22:50 | 雑記
9月20日にWHOが、中国でのポオリ発生を発表しました。

ポリオ感染、中国で確認=パキスタンから拡大の恐れ-WHO(時事通信社)

中国内陸部(新疆ウイグル地区)での発生で、隣国のパキスタン(野生ポリオ発生国)からの流出した可能性が疑われています。

中国は、日本と同様に野生のポリオ根絶宣言がされていましたが、今回の出来事は「集団での免疫低下=ワクチン接種率の低下」により、野生ポリオの発生はまだ起こりえるということを警告しています。

世界的に人の行き来が多くなった現在では、遠い地域の出来事として無視する訳にはいかないと思います。

ポリオ生ワクチンによるポリオ発症(VPD)、来年度に日本でもポリオ不活化ワクチンの導入、などの報道からポリオ生ワクチン接種を控える方が見受けられます。
不活化ワクチンの導入は、定期予防接種にするためには法改正が必要で、その後メーカー・行政・現場での準備などもあり、来年度すぐには期待できず、おそらくは来年度後半から平成25年度になるのではないかと思われます。

このような状況で、接種率が低下して免疫を持たない子どもが増えてしまいその期間が長引くようだと、日本での野生ポリオ発生もまったくないとは言い切れません。

予防接種は、感染症が流行してから慌てて行うものではなく、感染症を流行させないために行うものなので、現在日本で野生ポリオの発生がないからといって油断はできないと思います。

ポリオ不活化ワクチンの早期導入が望まれますが、それまでの間は生ワクチンの接種率を低下させないことが必要だと思います。

** 個人輸入の不活化ワクチンで接種を行っている医療機関もありますが、そこで接種ができる子どもの人数は限られており、日本での野生ポリオの発生を起こさないためには、生ワクチンでの接種が現状では必要と考えられます。

ヒブワクチン・肺炎球菌ワクチンの接種時期

2011-09-19 18:37:48 | 雑記
先日、肺炎球菌ワクチンの全国接種率が40%程度とメーカーから情報提供がありました。
千葉県でも、全額費用助成がされているにも関わらず40%にとどまっているとのことでした。

本年3月に、ワクチン接種後の死亡事例の報告があり、両ワクチン自体や同時接種に対する不安が広がってしまった影響が考えられますが、それ以外にも医療機関側のワクチン接種受け入れ能力の限界もあるように感じます。

多くの小児科で、予防接種業務は処理能力の限界にきています。

幸いに当クリニックでは、ワクチン同時接種に対する不安から個別に接種を希望する方が比較的少なく、なんとか適切な時期にヒブワクチン・肺炎球菌ワクチンを接種できているのではないかと思います。

他の小児科では、個別に接種を希望する方が増えてしまい、思うように適切な時期に接種ができなくなっているような話も耳にします。

予防接種は単に受ければ安心と言うだけでなく、適切な時期に接種しなければ、その恩恵は半減してしまいます。
ヒブ・肺炎球菌による髄膜炎は、1歳未満の乳児~1歳代での発生が多く、その後年齢を重ねるごとに発生数は急激に減っていきます。なので出来るだけ早い時期からの接種(生後2ヶ月)が推奨され、DPTなどとの同時接種をすれば、順調にいけば生後4ヶ月には初回3回の接種を終了することができます。

どんなワクチンでもワクチン単体での重篤な副作用の発生は希にありますが、ワクチンの同時接種で問題が発生することはありません。多くの子どもたちが適切な時期にワクチン接種を受けるためには同時接種は必要です。不適切な不安により、ワクチンで病気を予防するという本来の目的を損ねてしまわないよう考えてみて下さい。

インフルエンザワクチン

2011-09-07 15:10:57 | 雑記
今年もインフルエンザワクチン接種の時期が近づいてきました。

まだ当クリニックでの日程は未定ですが、10月初旬には接種開始する予定ですので予約開始など含めもう少しお待ち下さい。

前々回にも書きましたが、今シーズンから予防接種の接種量が見直されました。
今まで日本でのインフルエンザワクチン接種量が、現行のワクチンで十分評価されたものではなかったこともあり、世界的な標準量に合わせる形で見直されました。

ただ、急いで1回の量的な評価を優先したため、接種回数など細かい評価までできなかったのかなという印象が残ります。

WHOやアメリカなどのインフルエンザ接種指針では、
9歳以上の接種回数は1回
9歳未満も前年接種歴のある場合は1回、接種歴がない場合などには2回
となっています。
(接種量は、3歳未満 0.25ml、3歳以上 0.5mlと今回の変更後の接種量と同じです)

私の子どもたちは、以前から自己責任でずっとこの世界的な基準で接種してきました。
(みなさんには、規定外接種になってしまうので責任上できませんでした、、、)

人種差や製造メーカーなどの要因で多少効果に差がでる可能性などありますが、時間がかかるかもしれませんが、最終的には日本も同じになっていくのではないかと思います。

効果の面での日本のワクチンの治験による確認はされていませんが、今シーズンのワクチンと昨シーズンのものは内容的に変更がなく同じ内容なので、少なくとも今シーズンは接種量が0.5mlとなる3歳以上では、昨シーズン2回接種をしっかりしているようであれば、1回の接種で十分ではないかと思います。