子どもの健康

子どもたちの健やかな成長を願って、子どもに関する小児科医の雑記

抱っこひも

2006-03-26 21:49:07 | 雑記
ライフスタイルの変化に伴い、赤ちゃんの頃から外出することが昔にくらべ多くなってきていると思います。

赤ちゃんにとって長時間の外出はそれだけでも負担になり、特に首のまだ座っていない時期にはより注意が必要です。
そんな時に利用される「抱っこひも」で総称されるベビー用品の使い方で少し気になることがあります。

最近よく見かける「ベビースリング」といわれるようなタイプの抱っこ用品の使い方で、
すっぽり赤ちゃんを包み込んで横抱きにしている方を良く見かけます。

この状態で気になるのは、赤ちゃんの両足が外側から圧迫され動きも制限されてしまうことです。
先天性股関節脱臼の予防のために一番大切な『赤ちゃんの足の自由な運動を制限しないこと」に反する状態です。
毎日長時間でなければ良いのかもしれませんが、できれば避けたい状態だと思います。

おそらく、「べビースリング」に代表される抱っこ用品自体の問題ではなく、その使用法の問題だと思います。
正しい使い方をしなければ、どんなに良いものでも逆効果になってしまうのではないでしょうか。

デジタル思考

2006-03-19 21:27:34 | 雑記
最近、全ての物事の結果がはっきりしないと気が済まない人が増えて来ているように感じます。

病気の診断や治療などに関しても、すぐに結果を求められることがよくあります。
はっきり結論から言うと、診療の場で100%確実に言い切ることはできません。

いろいろな可能性の中から、一番可能性の高い状態を考え、適切に余計なことを省いて患者さんにお話しています。
当然、経過によっては途中修正を必要とすることもあります。
できるだけ適切な判断を行うために、色々な経験とともに常に専門的な知識の習得に努めています。
それでも、結果の出せないこともまだまだ多く存在します。

単なる風邪にしても、可能性の話をしだしたら切りがありません。

事務的な契約のような、修正の余地のない診療は不可能だと思います。
診療は、医師と患者さんの人間的な信頼関係の上になりたつのだと思います。
その為には、我々医療者がみなさんに信頼してもらえる努力をしていかなければならないのは当然です。

ただ、医療の場に限らず、白黒(善悪)どちらかといったデジタル的な思考をする人が増えている様に感じます。こうのような思考では、人と人との信頼関係や思いやりなどを考えることができないのではないかと思います。

溶連菌感染症

2006-03-17 22:46:30 | 病気
今、溶連菌(溶血性連鎖球菌)感染症が流行しており、今年は例年に比べて患者さんが非常に多くなっています。

症状としては、発熱・のどの痛み・発疹・イチゴ状舌など典型的な症状が揃えば診断は比較的簡単です。
しかし、これら症状は必ずしも揃うとはとは限りません。
また、ちょっとした微熱、体のだるさ、腹痛など非典型的な症状のみで受診される子もいます。

診察して典型的なのどの赤みがあれば症状にかかわらず疑って検査します。
のどを綿棒でこすって検査することで外来ですぐ結果がわかります。

流行しているということで念のために検査をすると、「この症状で溶連菌感染症なの?」ということもあります。

検査をすることで、教科書的な症状だけでなく非典型的な症状の患者さんが多く存在することを痛感します。

まずは、流行状況や色々な症状の患者さんを診ることで、溶連菌感染症を疑う目を持って診察することが大切になってきます。

溶連菌自体は抗生剤が良く効くので、治療を開始すればすぐ症状は改善されます。
ただし、溶連菌治療は症状の改善だけではなく溶連菌消失が終了目標となります。そのために、標準的な治療はペニシリン系抗生剤の10日間内服が行われます。

溶連菌の合併症として、急性糸球体腎炎やリウマチ熱などがあり、また不十分な治療では症状を繰り返したり、周囲の人への感染源となる可能性があるため、症状が改善してもしっかり抗生剤を飲み切る必要があります。

人への感染は、抗生剤の内服開始し1日たって症状も落ち着いていれば心配する必要はありません。

子どもだけの病気ではなく大人も感染することはありますし、何回でも感染する可能性があります。

治療して症状もよくなったのに、検査をすると陽性になってしまうこともあり、治療開始後の経過のみかたなどは受診した医師の指示に従うようにして下さい。


子どもの頃の気持ち

2006-03-13 22:23:39 | 雑記
時々、子どもが今何を見て聞いて、何を感じているのか、と思うと何か胸が締め付けられる様な妙な感じになることがあります。

自分が子どもだった時にはどうだったか?
子どもの時いろいろな状況で親や大人の言葉や行動をどのように感じていたか?

なんか思い出せそうで思い出せない感じ。

今は自分が大人になり子どもたちからどのようにみられているのか?

別に子どもに好かれようとは思っている訳ではありません。
ただ、いざというときに子どもに信頼してもらえる大人でありたいとは思っています。

予防接種

2006-03-12 22:50:24 | 雑記
日本の予防接種実施体制は諸外国に比べると非常に遅れているのが現状です。

何が遅れているのかというと、
「みんなが接種する基本的な予防接種の種類および回数が少ない」
「多くの人が接種する機会を逃さないようにするような接種体制」
に要約できるのではないかと思います。

だからと言ってここで、厚生労働省や行政の問題を議論するつもりはありません。

確かに、予防接種実施体制に問題はあると思いますが、予防接種を受ける側の意識にも問題があると思います。

予防接種に対する我々医療者の啓蒙が不十分なのかもしれませんが、
予防接種の必要性など十分に理解せず、みんなが接種するものだからぐらいの意識で予防接種を受けてはいないでしょうか?

インフルエンザの予防接種を例にすると、つい数年前まで接種する人はあまりいませんでした。
しかし、インフルエンザの迅速検査が外来で出来るようになり、その後インフルエンザの薬が開発され、また新型インフルエンザや脳症などの合併症など、マスコミでインフルエンザを話題にすることが増えたことなどからかインフルエンザワクチン接種は年々増えてきています。
なんとなく漠然とした不安やみんなが受けているからといったことで接種してはいないでしょうか。
また一方で、インフルエンザワクチンを受けたのにインフルエンザに罹ってしまいワクチンは効かなかったと思ってしまっている人はいないでしょうか。
インフルエンザワクチンは接種した人みんながインフルエンザに罹らないで済むという効果はなく残念ながら流行自体を阻止することはできません。接種していてもインフルエンザを発症することはよくあることですが、接種することで入院を必要とする様な重症化を回避できる可能性が増えますし、接種することで発症しないで済んでいる人も確実に存在します。ただし、接種した人の中から一定の頻度で接種していてもインフルエンザに罹ってしまったと言う人や、中には残念ながら重症化してしまう人も出てくる可能性があるので接種する人が増えればそのような人の数も増えてきてしまいます。

予防接種というものは、個人の感染症予防という意義と同時に社会的な感染症予防という役割も持っています。
ワクチンにより確実にインフルエンザを発症しないで済む人、重症化しないで済む人が増えれば、社会的にはインフルエンザワクチンは効果があるといえるのです。

インフルエンザ以外の子どもたちが受ける基本的な予防接種についてはインフルエンザワクチンと事情は違い、みんなが接種することでその対象となる感染症の流行自体を阻止することが可能で、ポリオや麻疹などは撲滅することが目標となっています。

予防接種が普及しその対象となる感染症が減ってきたために、予防接種の効果を実感することなく予防接種の副反応が強調されてしまうようになってきました。ただ、現在このような感染症の流行の少ない状況にあるのは今まで多くの人が予防接種を受けて積み上げてきた成果であることを考えてみてください。今でも、予防接種する人が少なくなれば対象となる感染症が流行する危険性は常に存在しています。

なんか話が固くなってしまいましたが、
言いたいことは予防接種を受けることは「子どもの権利」であり「社会に対する義務」であるということです。
諸外国で受けられるものが日本では受けられない状況があります。
そろそろ、受ける側(みなさん)が予防接種を受ける権利を行政に対し主張しなくてはならないのではないでしょうか。

花粉症

2006-03-11 00:49:20 | 雑記
11日土曜日はとても暖かくなるとの予報ですが、
この時期に暖かいと花粉もいっぱい飛ぶので花粉症を持つ身としては春の到来を嬉しく思う反面ちょっと憂鬱です。

昨シーズンは大量のスギ花粉が飛散し、新たに花粉症を発症した人も多いのではないでしょうか?
今年は飛散量の予想量が少ないからといって油断しないように。
今シーズンも花粉症での外来受診は増えてきています。

数年前に比べて、明らかに花粉症の発症は低年齢化している印象があります。

子どもでも、症状がはっきりしている場合には抗アレルギー薬の内服や点眼・点鼻といった治療は大人と変わりません。
花粉症に限らず病気等で、大人なら辛ければ自分で病院を受診することができますが、
子どもの場合は親の判断しだいで病院にかかるかどうか決まることになります。
子どもに辛い思いをさせないようにしてあげて下さい。

花粉症の治療に関しては、ちょっと気になるこがあります。
「1回で花粉症によく効く注射」のことをよく耳にします。
この注射は、内容の説明があまりされずに花粉症の注射ということで安易に行われている場合があります。
この注射の内容は「持続性のステロイド」なので、ステロイドの副作用がでる可能性があります。
花粉症自体の症状が非常に強く通常の治療だけでは生活に支障をきたすような場合には適応が考慮されますが、
花粉症だからというだけで安易に行うべきものではないと思っています。
特に子どもに関しては、副作用を考えると適応はありませんので気をつけて下さい。

ただし、ステロイド全てがいけない訳ではなく、
点鼻・点眼などの局所的な使用は症状に応じて躊躇する必要はありませんし、
症状のひどい時に短期間のステロイド内服は必要な時があります。

ステロイドは非常に良く効く薬なのですが、
症状の程度とステロイドによる副作用のバランスを考えて使う必要があります。

このようなステロイド使用の判断も信頼してまかせてもらえるような医師でありたいと思っています。

様子をみる

2006-03-09 22:50:41 | 雑記
外来で診察をしていて、『じゃ、これで様子見て下さい」と言うことがよくあります。

「様子をみて下さい」の中には、「何かあったらまた診察に来て下さい」という意味が込められています。
今まで何の心配もなく使っていたこの「様子をみて」という言葉を最近は安易に使えなくなってきた感じがします。

「何をどのように様子をみる」の自体がわからないお母さんお父さんたちが増えて来ているように感じます。

お子さんの具合に関して、いろいろ具体的な起こるかもしれない状況を説明する必要が以前より多くなってきました。
それでも、お母さんお父さんたちは説明されていない状況になるとどうしたらよいか不安になってしまいます。

それと同じで、「大丈夫」ということも安易に言えなくなってきました。
診察の時に「大丈夫」と言われたから、ということで状態にかかわらず受診せずにいたということもあります。

このことの何が問題か?

本来、生き物に備わっている子どもを育てるという能力(本能)を人間は失ってきているのではないでしょうか。
ただし人間は他の動物と違って本能的な能力の代わりに、どのような子どもの状態が大丈夫で何に注意が必要なのか、子どもを育てる上での基本事項に関して、知識の伝承ということでそれを補ってきたはずです。
今まで、その役割は家族や地域社会が担っていたはずです。
それが、現代の日本社会では失われつつあるのではないでしょうか。

今の世の中は昔とは比べものにならないほど多くの情報を簡単に得ることができます。
ただし、その情報をうまく利用出来ていないのではないでしょうか。
直接人から人へ伝える情報の大切さを見直さなければならないのではないでしょうか。

このような状況で、今まで家族や地域社会が担っていた役割を我々医療が役割分担していかなければとも思っています。
お子さんのことで、何かわからないこと・不安なことがあれば我々に聞いてください。

ただし我々も何でも答えられる訳ではありませんし、すぐに問題が解決するとは限りません。

でも少しはみなさんのお役に立てることもあるのではないかと思っています。