子どもの健康

子どもたちの健やかな成長を願って、子どもに関する小児科医の雑記

手足口病

2013-06-30 16:58:55 | 雑記
6月中旬頃から手足口病の患者さんが増えてきました。

手足口病は、6月~7月に流行するいわゆる夏風邪の一つです。
エンテロウイルス属に属する数種類のウイルス(コクサッキーA16、エンテロウイルス71など)が原因の感染症なので、何回も罹ってしまうことがあるます。

今まで日本に流行していた手足口病の症状は、発熱(熱のない場合もある)、手のひら・足の裏や膝・肘・お尻のど限局した部位の発疹、口蓋垂(のどちんこ)周辺に口内炎を認めるといった症状でした。

潜伏期は3~6日程度で、特に薬はなく、自然の経過で治癒します。
希に髄膜炎や脳炎なのど合併症を起こすこともあります。

2011年頃より、コクサッキーウイルスA6による手足口病の流行がみられ、このウイルスによる手足口病の発疹は、比較的大きめの水泡をつくり、手のひら・足の裏の発疹は少なく、体の広い範囲に出現し、一見水ぼうそうと見分けが難しい場合があります。
今年もこのタイプの手足口病が多く、発熱時(比較的高熱)で発症し、発疹や口内炎は翌日以降にでてくる経過の子が多いように思います。
当院でも、最初水ぼうそうの診断をして、後日修正した子もいます。
また、このタイプの手足口病は後日、手足の爪がはがれてくることがありますが、また新しい爪が生えてくるので心配はいりません。

咽頭から排泄されるウイルスによる飛沫感染、便中に排泄されたウイルスによる経口感染、水疱内容物からの感染の可能性があり、ウイルスは咽頭から1~2週間、便からは3~5週間排泄されます。

ウイルスの排泄期間が長く急性期のみの隔離は意味がないため、保育園・幼稚園・学校などは、しっかり解熱(1日以上熱がない)して、いつも通り食事が取れ、元気であれば、登園・登校は可能となっています。ただし、プールや水遊びは、発疹が落ち着くくらいまでは控えるようにして下さい。

風しんの流行とワクチンについて

2013-06-20 20:51:04 | 雑記
成人男性を中心とした風しんの流行が続いています。

風しんが流行することでの一番の問題は、妊娠初期の妊婦さんが感染発症してしまうと、胎児に風しんが感染して心臓の障害・難聴・白内障・発達障害などの障害(先天性風しん症候群)をきたしてしまう場合がでてくることです。

昨年から風しんの流行があり、残念ながら昨年秋から現在までに11例の先天性風しん症候群が報告されています。

今年の風しん患者の報告数は、6月の時点(約1万人)で昨年1年間の報告数の4倍を超えています(実際には、報告数の数倍の風しん患者がいる可能性があります)。

普通に考えても、これから先天性風しん症候群の発生数は増えてくると思われます。

こらから生まれてくる子どもを守るために、大至急風しんにかかる可能性のある人(十分な抗体を持っていない人)に対して風しんワクチンの接種を行い流行を収束させるよう対策を国がとるべきことだと思います。

しかし、昨年から流行が分かっていて、「ワクチンの費用助成を初めたのは今年度に入ってから」、「いざワクチンを受けましょうと言いながら、今度はワクチン不足」、、、、
あげくには、おとといのニュースで見た田村厚生労働相の発言は「(臨時接種とは)緊急時のパンデミック(世界的大流行)のおそれがあるものに対してという話で、なかなか風疹がそのような状況ではない。なかなか財政的措置をして、ほかの予防接種疾病と(比べ)、特別な対応ということころまでは来ていない。風疹は、まだ1万人ということでございますので」、、、、もうあきれるしかありません。

風しん単独ワクチンはもともと生産量が少なく先に不足しており、麻しん風しん混合ワクチン(MRワクチン)での接種が勧められていましたが、このMRワクチンの供給にも制限がでてきました。

当院では、1歳でのMRワクチン1期定期接種・就学前のMRワクチン2期定期接種が出来なくならないよう優先に考え、成人に対する接種は「風しん抗体価が不十分(HI:16倍以下)の妊婦さんのいる同居人」の方(できれば抗体価を確認して頂いて)には出来るだけ接種に対応していく予定ですが、それ以外の成人の接種はワクチンの供給が回復するまではお待ち頂くよう考えていますのでご理解の程宜しくお願い致します。

ヒトパピローマウイルス(子宮頸がん)ワクチンについて

2013-06-16 13:56:23 | 雑記
6月14日の厚生労働省の会議で、ヒトパピローマウイルス(子宮頸がん)ワクチン接種の積極的勧奨の一時的な差し控えが決まりました。

中止ではく今年4月から定期接種はそのままで、「積極的に接種をするよう呼びかけない」というなんともはっきりしない決定です。

今回の決定に至った一番の要因は、「複合性局所疼痛症候群(CRPS)」という副作用が十分に把握評価できていないためで、今回の決定は調査の結果がでるまでは積極的に接種が勧めませんというもので、評価の上で問題がなければ再度積極的に接種を勧めるようにまたしますと言う事です(結果が悪ければ中止になるのかもしれませんが、、)。

接種するかどうかは、子宮頸がん予防のベネフィットとワクチン接種によるリスクを天秤に掛けて、本人(保護者)が判断して接種希望があれば、定期接種としての接種は出来ますよと言う事です。

ただ、あまりにも情報が少なく、簡潔に誰でもわかるような情報がほとんどみあたりません。
6月14日の会議の資料が厚生労働省のサイトにアップされればもう少し分かるかもしれなせんが、そこから情報を読み取るのは一苦労です、、興味のある方はリンク先「厚生労働省関係審議会議事録等」内の「予防接種・ワクチン分科会 副反応検討部会」6月14日をチェックしてみて下さい(これを書いている時点でまだ掲載されていません)。

今回の決定も専門家委員(5人)の採決は、「現状のまま接種の継続」対「副反応(副作用)の情報提供体制ができる状態となるまで、接種の積極的な勧奨を一時控える」の二択で、2対3で「積極的勧奨を一時控える」になったようです。

「複合性局所疼痛症候群(CRPS)」は、ヒトパピローマウイルス(子宮頸がん)ワクチンのみに関連した疾患ではなく、他の原因でも起こりうるものですが、この病気自体の全体像が把握されておらず、診断できる医師も非常に限られているのが現状です。
他の原因で発症している方以上に、ヒトパピローマウイルス(子宮頸がん)ワクチン接種での発症が明らかに多いのかなど、まったく分かりません。

ヒトパピローマウイルス(子宮頸がん)ワクチンは、2009年12月にサーバリックスが発売され、2011年8月にガーダシルが発売され、今年3月末までに推計328万人に接種されています。
「複合性局所疼痛症候群(CRPS)」と思われる報告は43人(内11人が未回復)でした。

一方、子宮頸かんはおよそ年間9000人が発症し、年間2700人が死亡しています。

ヒトパピローマウイルス(子宮頸がん)ワクチンで、子宮頸がんを100%予防できる訳ではありませんが、ワクチンで予防できる16型・18型ウイルスは日本の子宮頸がんの原因の6割程度と言われており、子宮頸がん発症のリスクを6割は減らせることになります。
当然ながら接種したら安心しないで、成人後は子宮頸がん健診を受けることも忘れてはなりません。

日本より先に、接種が導入された諸外国でも「複合性局所疼痛症候群(CRPS)」の報告がありますが、接種が中止になった国は今のところありません。

しばらく、調査結果による判定を待つことになるのだと思いますが、厚生労働省には同時に、接種3回の途中の方はどうすればよいのか、待っている間に接種対象年齢を過ぎてしまった時の対応(日本脳炎接種の時はその後救済処置が取られています)など、具体的な指示もお願いしたいものです。