子どもの健康

子どもたちの健やかな成長を願って、子どもに関する小児科医の雑記

乾燥肌に長湯は禁物

2013-01-30 15:48:27 | 雑記
冬の寒い時期、お風呂でゆっくり暖まりたいとは思いますが、
皮膚が乾燥し易い方は、入浴時間は長くならないよう注意が必要です。

入浴により肌の保湿成分が溶け出てしまうため、
長時間の入浴・熱目の温度・洗い過ぎなどで、入浴後に皮膚は余計に乾燥してしまいます。

最近ではアメリカ皮膚科学会が、アトピー性皮膚炎や湿疹を持つ子どもの対処法の解説の中でも入浴時間は5~10分程度としています。

アトピーなどではなくても乳児は皮膚が未熟なために非常に乾燥し易いので、同様の注意が必要です。健康な乳児の皮膚角質水分量は、入浴後15分ほどで入浴前の状態にもどり、それ以降は入浴前より減少(乾燥)してしまいます。

熱目のお湯は控えて、入浴時間は出来るだけ短く、石けんは十分泡立てて優しく洗う(ナイロンのタオルで強く擦ったりはしないように)、入浴後は速やかに十分保湿ケアを行なう、を心がけて下さい。

保湿ケアは肌に合うものを十分(肌がテカる・ティッシュが張り付く程度)に入浴後は必ず行い、乾燥が強ければ1日数回増やす必要もあります。

アトピー性皮膚炎の発症率は、冬の乾燥の強い時期に出生した方が他の時期に出生した場合より高いことが以前より指摘されており、乳児期の保湿ケアをしっかり行なうことでアトピー性皮膚炎を予防になるのではないかとも考えられています。

水痘ワクチン・おたふくかぜワクチンの2回接種について

2013-01-04 14:16:05 | 雑記
今まで、水痘・おたふくかぜのワクチン接種は1回で行なわれてきましたが、より確実な感染予防の為に2回接種が推奨されています。

麻しん・風しんワクチンは、平成18年度より1期(1歳以上2歳未満)、2期(小学校就学前の1年間)の2回接種が行なわれるようになり、更に2回接種になる以前の年代を対象に、平成20年度~今年度(平成24年度)の5年間限定で、3期(中学1年生)・4期(高校3年生)が行なわれてきました。

ワクチン接種である程度ワクチン対象の感染症の流行が抑えられてくると、自然からのウイルスとの接触機会が減ることとなり、ワクチン接種1回だけでの免疫は年月とともに低下してしまうため、確実に流行を抑制するために免疫維持が必要なため、適切な時期での2回目の接種が必要となってきました。

おたふくワクチンも十分な抗体を維持するために、1回目は1歳以上早期に、2回目は小学校就学前(5歳以上7歳未満)を目処に接種が推奨されています。

水痘に関しては、最近の報告で1回接種での水痘流行時の罹患率は約50%、接種後1年以上経過した場合には80%弱となっており、1回接種後の予防効果が他のワクチンより悪い結果となっています。
検討された事例は少数ですが、1回接種後に抗体が陽転していたのに1年後には陰性となっていることがあり、この陰性化した事例に2回目の接種することで1回目接種後以上の抗体上昇(ブースター効果)が認められており、日本小児科学会は1回目接種後3ヶ月以上あけて、比較的早期の2回目接種を推奨しています。

ただ、水痘・おたふくかぜワクチンの接種率は30%前後で、この程度の接種率では流行を抑えることはできず、流行してしまうとワクチン接種をしていてもある程度の頻度で感染発症してしまうことが避けられません(ワクチンをしていた方が発症していても軽症化は期待できます)。

それなら、ワクチン接種せずにかかってしまった方がよいのではと考える方もいると思いますが、麻しん・風しん・水痘・おたふくかぜの中で、ワクチン接種で麻しん・風しんの流行が抑制された現在、2004年以降死亡報告が最も多い感染症は水痘となっており、またおたふくかぜも髄膜炎・脳炎での重症化や難聴、睾丸炎・卵巣炎などの合併症が比較的多くある感染症ですので、予防が必要な感染症だと思います。

最終的には流行自体を抑制すること必要で、そのために麻しん風しんと同様に定期接種化が望まれており、日本小児科学会も定期接種化の要望書を厚生労働省に提出しています。

なぜ生後2ヶ月から接種開始なのか

2013-01-03 18:26:01 | 雑記
ヒブワクチンや肺炎球菌ワクチンは生後2ヶ月からの接種開始が推奨されています。
最近は浸透してきているように感じますが、「接種回数が少なくなるので大きくなってから接種したい」という方や、単に「出来る時に接種すればよいものと思っていた」などで接種開始が遅れる方がまだ見受けられます。また、残念ながら接種を実施する側(医療機関)の受け入れ体制が不十分という場合もあるかもしれません。

ヒブ(インフルエンザ桿菌b型)や肺炎球菌による細菌性髄膜炎の発生は、生後6ヶ月~1歳台で最も多く、それ以降は年齢と共に少なくなって行きます。そのために生後2ヶ月から接種を開始することで、この発生の多い時期が始まる前(生後6ヶ月)までに、初回3回の接種を済ませることが強く望まれます。
そして、追加接種も1歳のお誕生日がきたら早期に接種することが推奨されています。

その他、生後2ヶ月からロタウイルスワクチン・B型肝炎ワクチンを開始することができます。

ロタウイルスワクチンの接種時期が非常に限られている(初回接種生後6週~15週未満に開始)のは、腸重積症の発生(紛れ込み)を極力排除するための配慮が主な要因で、それに加え初回感染前に接種を済ませるために早期に接種する必要があるためです。

B型肝炎ワクチンに関しては、絶対に2ヶ月から開始しなければならないものではありませんが、低年齢の方がより確実に免疫がつくことと、その他の予防接種スケジュールに合わせ接種が出来る(忘れずに接種が完了出来る)ことが主要な理由です。B型肝炎予防は一生の問題なので、裏をかえせば年齢に関係なくB型肝炎の免疫のない方はいつからでも接種開始が可能です。

ヒブワクチンの追加接種時期の変更

2013-01-02 21:51:24 | 雑記
2日目はヒブワクチンの追加接種時期についてです。

今までヒブワクチンの追加接種時期は、初回3回終了後おおむね1年後とされていましたが、1年間隔を開ける事で免疫が低下してしまう場合があり、アメリカでも追加接種は1歳になったら早期に行なわれており、昨年(2012年)4月に日本小児科学会の推奨する接種スケジュールにおいても、ヒブワクチンの追加接種時期について1歳になって接種することで適切な免疫が早期に得られるとの1文が加えられました。

ただ、昨年4月の時点で厚生労働省は追加接種時期に関しては「おおむね1年」のままで、各地方自治体の費用助成にあたっても追加接種時期は「おおむね1年」としているところが多く、費用助成を受ける為には「おおむね1年」を守らざるおえない状況でした。

そんな中、昨年(2012年)12月20日に厚生労働省が、追加接種時期に関して「初回接種終了後7~13ヶ月後」との通知を地方自治体にだしました。
これにより、生後2ヶ月から接種開始し初回3回の接種が生後4~5ヶ月で終了していれば、お誕生日が来たらすぐに追加接種が可能となりました。

当クリニックでも、通知後追加接種をお誕生日後早期に接種するよう変更しました。
今まで当クリニックでは、お誕生日がきたらMR(麻しん風しん)混合ワクチンと肺炎球菌ワクチン追加接種(ご希望で+水痘ワクチン・おたふくかぜワクチン)の同時接種をしいていましたが、ここにヒブワクチン追加接種が加わることになります。

チメロサールの安全性に問題無し

2013-01-01 22:11:40 | 雑記
新年あけましておめでとうございます。

正月休みで時間ができたので、この休みの間にいくつか連日で予防接種関連の話題を書いてみたいと思います。

まず初日は、ワクチン添加物のチメロサールについてですが、もともと興味がない方には「特にワクチン添加物としてのチメロサールの安全性に問題はない」という結論だけでよく、今までと何も変わりはありませんので、面白くない話かもしれません。

どのような事なのか興味のある方は、以下を読んでみて下さい。
(簡単にしてみたつもりですが、エチル水銀メチル水銀をしっかり区別して読んで下さい)

チメロサールは、ワクチンの細菌や真菌による汚染防止の為の添加物(防腐剤)として60年以上使用されてきました。
このチメロサールにはエチル水銀が含まれており、水銀による神経毒性などの危険性が指摘されてきました。
メチル水銀による毒性はよく知られていますが、チメロサールに含まれるエチル水銀の毒性・安全性の知見はほとんどありませんでした。
水銀摂取制限の基準値は主に毒性の高いメチル水銀の知見を元に作成され、1990年代米国ワクチンスケジュールでの接種でエチル水銀量が、もっとも厳しい基準での水銀摂取量(米国環境保護庁0.1µg/kg体重/日)を越してしまうなどが指摘され、エチル水銀の危険性についての根拠がないまま1999年に米国小児科学会などがワクチンからのチメロサール除去を求める声明がだされました。
その後、先進国では一部のワクチンを除きチメロサールなど防腐剤を含まないワクチンが使用されるようになってきましたが、世界中の子どもたちにワクチンを供給するために、防腐剤としてのチメロサール使用の有益性からWHOはワクチンからのチメロサール除去に反対の声明をだしていました。
そして、1999年以降チメロサールの安全性/危険性に対する評価が行なわれ、ワクチンのチメロサール使用での危険性を示す根拠は得られず、2012年12月に米国小児科学会は1999年の声明を撤回することになりました。

エチル水銀メチル水銀では、体内への蓄積性(半減期)など大きな違いがあり(メチル水銀の半減期はエチル水銀の7倍程度長い)、同じ基準で規制することに問題があったのだと思います。

ちなみに、クロマグロ握り1個でチメロサール含有ワクチン接種1回分のエチル水銀以上のメチル水銀を摂取している可能性があります。

また、当クリニックで使用しているワクチンでは、B型肝炎とインフルエンザの2種類のワクチンがチメロサールを含有しています。