子どもの健康

子どもたちの健やかな成長を願って、子どもに関する小児科医の雑記

発熱外来

2009-05-31 18:46:04 | 雑記
新型(豚)インフルエンザが国内で発生して1ヶ月近く経ちます。
少し落ち着きを見せてはいますが、今後必ず流行が起こるのはほぼ確実ではないかと思います。
南半球ではこれからインフルエンザの流行期になり、まだ初期の段階で報告数が少ないのでどうなるか分りませんが、現在の報告ではチリではインフルエンザの9割が新型(豚)という報告を目にしました。

こんな中、新型インフルエンザ発生時に「発熱外来」なるものを地域に設置する対策が考えられています。
新型インフルエンザの診療を、他の診療と分けて、インフルエンザの蔓延防止が目的のようです。

言葉だけで説明されたら、もっともな対策だと思うかもしれませんが、そう単純な問題ではありません。

現在のような新型(豚)インフルエンザの流行(パンデミック)を阻止する事は、多くの専門家の意見を含め現実的に不可能と考えられています。

医療機関で区別化しても、その他の状況で感染するリスクの方がはるかに大きいと思います。
また、症状だけで新型(豚)インフルエンザを他の発熱性感染症と区別することは不可能ですし、迅速検査だけで振り分けることも100%出来ることでなありませんので、発熱したら「発熱外来」で全て対応するようなことにもなり、
現在、医師の不足から医療崩壊などと言われている状況で、更にこのような新たな業務を行う事は非現実的と考えている医療者も少なくありません。

少なくとも新型インフルエンザの感染拡大防止策としての「発熱外来」は、無意味ではないかと思います。

「発熱外来」の発想は、拡大解釈をすれば、通常の季節性のインフルエンザでは同じ対策は何故必要ないのかということにもなります。
また、熱のある方は診療しませんという医療機関での診療拒否の絶好の口実ともなりかねません。

現在のところ考えられている「発熱外来」は、「何か対策を講じています」といった象徴や何か問題が発生したときの責任転嫁のための対策のようにも感じてしまいます。

日本以外の諸外国では「発熱外来」と言った発想は見当たりません。

ただし、何もしなくて良いと言う訳ではありません。

インフルエンザに感染する事で色々な健康被害を受け易い方や重症の方に対してどのように対処して行くか、医療全体が機能不全にならないようどうすべきか、などパンデミックが起こることを想定して、「発熱外来」をどのように設置するかなどの感染拡大防止対策より先の対策を考える時期に来ているのではないかと思います。

この問題は、皆さんの意識や行動を変えて行かなければならない問題を含んでいます。
医療や社会の混乱を防ぐため、誰が軽症で誰が医療が必要なのかの最終的な判断は医師にしか出来ないとは思いますが、比較的症の軽い方などは慌ててすぐに医療機関にかかるようなことを自粛しなくてはならないかもしれませんし、症状も軽くリスクの少ない方には薬は処方されなくなるかもしれません。

今の小康状態の内にしなくてはならないことは何なのか、みんなで考えなくてはならないことだと思います。



日本の予防接種の現状ついて

2009-05-28 00:30:41 | 雑記
日本は予防接種の後進国と以前にも書いたことがありますが、日本の予防接種行政は国民の健康を予防接種で守るという力より、何かあったら行政が責任をとらないようにする体制を維持する力の方が強く働いているように感じてしまいます。

予防接種法に定められ推奨されている定期予防接種は、病気を予防するための重要性が高いものと言えますが、予防接種法に定められた接種年齢や時期を守らなければ法令に定められた定期接種として接種することができません。
アメリカなどは、推奨される時期に接種が行われていない子ども達に対してある程度の接種をする機会を設けていますが、現在の日本では法令で規定された接種時期を逃した場合には定期接種として接種する機会は設けられていません。

だからといって、任意で定期接種の対象となっている予防接種を接種しようとすると、医学的な必要性や安全性とは関係なく、その予防接種の添付文書の接種時期は、予防接種法に定められた時期に接種することとなっており、万が一副反応が発生した場合に「医薬品副作用被害救済」などの保障が受けられない可能性があり、接種する医師の責任と保護者の同意のもとでしか接種ができない状況です。

このように、定期接種の対象となっている予防接種は、安易に任意接種として接種出来ないというおかしな状況になってしまっています。

定期接種の時期を逃してしまった子どもに対して、多くの小児科医は、病気を予防するという観点から、自らリスクを背負って定期接種対象ワクチンの任意接種を行っているのが現状だと思います。

ただ、今後色々なことを考えると、なかなかそれも出来なくなってくるように思います。

多くの子ども達が、安心して多くのワクチンを接種できるような方向に体制が変わっていって欲しいと願っています。

クリニックの流行状況

2009-05-24 18:56:29 | 雑記
保育園や小学校低学年を中心に、4月から継続して「おたふくかぜ」が流行っています。診断がしっかりついたら、「おたふくかぜ」に対する治療薬はないので、熱や耳の下などの痛みに対して解熱鎮痛剤などを使う等して、耳下腺や顎下腺の腫れが治まり、他人へ感染しなくなるまで自宅療養となります(通常最低でも1週間程度はお休みすることになります)。
合併症として、髄膜炎・睾丸炎などがよく言われますが、その他あまり注目されることがないのですが、難聴も気をつけなくてはならない合併症ですので注意して下さい。

その他、「夏かぜ」も増えてきています。
「夏かぜ」とは、6月前後に流行るウイルス性の感染症の総称で、発熱が主症状で、その他発疹や消化器症状などを伴うことがあります。
症状だけでは、今話題の「新型インフルエンザ」と区別することは困難なので、それぞれの発生状況などと併せて考えていかなければならず、これからの「新型インフルエンザ」の広がりによっては、診断に苦慮する可能性が考えられます。

インフルエンザ

2009-05-17 18:58:17 | 雑記
やっと季節性のインフルエンザの発生もなくなったと思っていたら、
関西方面で新型(豚)インフルエンザの発生の報道があり、
今後の広がりには注意が必要になってきました。

ただ、今のところ新型(豚)インフルエンザの症状は季節性のインフルエンザと大きく異なる事はないようなので過度の心配は必要ないようです。

ただ、流行り出すとみんなが免疫を持っていないので、季節性インフルエンザ以上に多くの方が罹ることになり、また慢性疾患などのある方など重症化するリスクのある方など色々な事を考えると、みんなが予防に心掛け対応する必要があると思います。

共感

2009-05-10 13:39:42 | 雑記
お互いに相手の気持ちや思いを理解し合うこと、
人が平和に暮らしていくのに大切なことだと思います。

自分の価値観だけで相手をみていると、お互いに相容れることなく、関係が悪くなってしまいます。

診療も同じで、医療側と患者さん側が共感できるかが大切だと思います。
医療側が患者さんの状況を汲み取るのは当然かもしれませんが、患者側にも医療側の考えや思いを理解してもらいたいと思います。

診療は、患者さんと我々医療従事者の共同作業だと思います。

こちらの意図が患者さんに伝わらない時などには、何ともいえない疲労感が残ります。当然、患者さんも期待した診療が受けられなければ同じではないかと思います。

ただ、簡単には思うようにはいかないのかなとも思います。

思いのほか多い季節性インフルエンザ

2009-05-06 02:28:42 | 雑記
豚インフルエンザの報道で思ったことはですが、
今の時期でも季節性インフルエンザ(香港型やソ連型)の発生が結構あるのだなということです。

この時期になると、集団発生でもしないと発熱といってもインフルエンザの検査を行わないで済ませてしまうことが今までは多かったと思います。

数も多くなく不必要だとは思いますが、発熱を主訴の方に片っ端から検査を行えば、1年中インフルエンザの患者さんもいるのかもしれません。

メキシコでは落ち着いてきた豚インフルエンザですが、まだまだ油断はできないと思います。