子どもの健康

子どもたちの健やかな成長を願って、子どもに関する小児科医の雑記

働く女性のための子育て支援

2006-12-27 17:11:51 | 雑記
少子化により今後日本の人口は減少していき、2050年には8833万人になるという推計もだされました。
これに伴い社会を支える働く世代の人口比率も減少してしまうため、女性の安定した社会進出がどうしても必要と考えられています。そこで「働く女性のための子育て支援」が考えられ、社会での整備が課題となっています。
当院でも松戸市の委託事業として病(後)児保育を行っていますが、社会の要望に十分対応できるような運営はなかなか困難な状況です。

いずれにしろ実際の状況はまだまだといったところですが、それとは別に「働く女性のための子育て支援」という発想に小児科医として以前から違和感を感じています。
何に違和感があるかというと、働く女性(大人)の視点からの発想であり、子どものための子もの立場を考えての発想でないように思えるからです。屁理屈のように思われるかもしれませんが、「子どものための働く女性支援」という発想も必要なのではないでしょうか?子どもが社会に訴えることは通常は出来ないのですから、大人が子どもの立場に立って考えてあげる必要があるのではないかと思います。大人の都合ばかりで子ども自身が置き去りにされてはいないでしょうか?

咳のかぜ

2006-12-23 01:07:35 | 雑記
今週になり、感染性胃腸炎にのかわりに咳を主症状にする風邪が急に増えてきた印象があります。

寒くなりインフルエンザの流行前ごろから毎年流行る「RSウイルス」による風邪ではないかと思われます。
咳が主症状で長引く傾向があり、熱を伴うこともあります。特に1歳前後からそれ以下のの乳幼児では、咳・鼻水と熱に加えゼーゼー(喘鳴)する症状を認めることがあり、症状がひどい時には入院管理が必要となることがあります。

咳は特に急性期には薬を使っていても完全にコントロールすることができないこともあり、1歳前後からそれ以下のの乳幼児では呼吸症状のため入院するリスクが比較的高く、ある意味でインフルエンザより厄介なかぜでもあります。
「RSウイルス」自体に効果のある薬はないため、呼吸器症状に対する対象的な治療を行いながら自然の経過で治ってくるのを待たなければなりません。ただし、風邪自体が治ってもその後に咳が長引くことが多く、喘息の様な症状が続くこともあり、また実際に喘息発症の引き金になることもあります。

診断に関しては鼻水を採取して数分で結果のでる迅速診断キットがあります。外来での検査は保険適応外ですが、年齢や症状によっては外来での診断が診療の上で有用であるため、実際には必要に応じ病院の費用負担で外来での検査は行っています。ただし、あくまで医師が必要と判断した一部の場合のみに限られます。

現代日本の社会生活様式の問題?

2006-12-16 22:39:55 | 雑記
相変わらず感染性胃腸炎(ノロウイルス)の流行が続いています。
感染性胃腸炎の問題だけでなく、インフルエンザなど感染症の流行の裏には現代日本の社会的な問題が隠れているように思います。

具合が悪くても仕事が休めない、休めるにしても十分な休養がとれない。
子どもたちにしても保育園、幼稚園や学校を十分に休めない。試験や行事があれば無理をしてでも出席してしまう。親の都合で十分休みがとれない。感染力があるのに元気だからと出かけてしまう。週末になれば、大規模ショッピングセンターなど娯楽施設に子どもを含め多くの人が集まる。

特に子どもたちが具合の悪い時に無理をしなければならないのは、子どもの生活環境(家庭、学校などすべてを含めた総合的な社会環境)を作っている大人の責任だと思います。休む事が子どもたち対して不利益に作用するような環境であってはならないと思います。

目先ばかりの業績や効率ばかり追求するのではなく、長期的な視点にたって、具合が悪くなったら余裕をもってゆっくり休めるような社会作りも必要なのではないでしょうか。

感染性胃腸炎

2006-12-03 19:45:11 | 病気
感染性胃腸炎(ウイルス性胃腸炎)が流行っています。
現在流行っている原因ウイルスはノロウイルスが多いのではないかと思います。ノロウイルスというとなんか特別な病気のように聞こえますが、いわゆる「おなかの風邪」のことです。牡蠣にあたったと言った時の原因も多くはノロウイルスが原因です。ノロウイルス以外にもロタウイルスやエンテロウイルスなども感染性胃腸炎(ウイルス性胃腸炎)の原因となります。
症状は吐き気で始まり、その後下痢や発熱などを伴う場合もありますが、人により症状の程度はさまざまです。感染性胃腸炎(ウイルス性胃腸炎)の原因ウイルスに対する治療薬はありません。感染性胃腸炎(ウイルス性胃腸炎)自体は自然の経過で治癒するのを待たなければなりません。多くの場合、嘔吐や吐き気は最初の半日から1日程度たつとその後次第に落ち着いてきます。子どもの場合、その間に脱水にならないよう乗り越えられれば後は時間の問題です。
薬は初期に吐き気止めを使用したり、下痢があれば整腸剤を処方したりしますが、水分などの補給ができていれば必ずしも薬は必要ありません。下痢止めは原則的に使用しません。
発症後初期には、水分と塩分の補給が最優先されます。母乳を飲んでいれば母乳でよいし、幼児用のイオン飲料などを利用するのもよいと思います。白湯やお茶であれば時々お味噌汁の上澄みやコンソメスープなどの塩分のあるものをあげてください。
なんにしても、最初は少量ずつ根気よくあたえることが重要です。飲むからといって一度に量が多すぎたり、あたえるペースが早すぎたりすると吐いてしまいます。ある程度水分を吐かずにとれるようであれば、糖分(炭水化物)の補給も始めなければなりません。ご飯やうどんなど少しずつ開始し、どうしても固形物がとれなければリンゴジュースなどもよいかもしれません。母乳やミルクを飲んでいるのであれば母乳やミルクでかまいません。下痢が始まると、飲んだり食べたりすると下痢ですぐ出てしまうと心配されるかたも多いですが、飲んだり食べたりすることで下痢がひどくなっている訳ではなく、腸に貯まっていていずれ出てくるものが飲んだり食べたりの刺激がきっかけで出てくるだけなので、下痢になるからといって飲んだり食べたりすることを控える必要はありません(控えることで逆に回復を遅らせてしまいます)。
吐き気がある程度落ち着いてきたら、食べる物は脂肪の多い物や冷たいもの・刺激物などを除けば極端な制限は必要ありません。
お母さんお父さんたちに頑張ってもらえればお家でなんとかなる場合が多いと思います。ただし、水分の補給が十分にできないような場合には病院で点滴が必要になることもあるし、脱水にいたっていなくても初期に点滴をを行うことである程度初期の症状を軽減できる場合があります。
また、感染性胃腸炎(ウイルス性胃腸炎)はその名のとおり感染するため、家族内などでの感染も多く注意が必要です。発症した人の触った場所(ドアの取っ手や水道の蛇口など)にはウイルスがついている可能性があり、そのような場所を触った手を洗わず手を口に持って行ったり食事をすることで感染する可能性があります。おむつを換えた後の手も注意が必要です。手洗いをこまめに行う事、タオルなどを別にするなどの注意である程度家族内での感染は予防出来ます。