子どもの健康

子どもたちの健やかな成長を願って、子どもに関する小児科医の雑記

予防接種の効果

2011-11-23 17:39:26 | 雑記
病気に対する薬は、症状が良くなることでその効果を実感することが出来ますが、
予防接種の効果を実感することは普通ないと思います。

予防接種の対象となる感染に罹からないでいる(あるいは罹っても重症化しない)ことが、予防接種の効果なのですが、みんなが予防接種を受けることで、その感染症が流行らなくなったり、感染症による重篤な健康被害が少なくなっても、その状態が普通のことで、予防接種の効果を実感することがなくなってきます。

例えば、インフルエンザワクチン接種などは、接種の主目的が罹らないようにするものではなく、罹って重症化しないためであって、実際には予防接種の効果でインフルエンザに罹っても合併症などなく重症化せずに治癒したとしても、予防接種の効果かどうかは分からず、せっかく接種したのに罹ってしまったと思われてしまいます。

ただ、あくまでみんなが予防接種を受けている状態があって維持されている状態なので、予防接種の効果を忘れて多くの人が予防接種を受けないことになると、その感染症が流行ったり、感染症に罹って合併症など重篤な健康被害に苦しむ子が増えることになってしまいます。

予防接種は感染症から身を守るためのリスク管理ですので、みんなが予防接種を受ける事で、感染症の被害を少なくし、日常的に予防接種の効果が実感できない状態を維持することが大切だと思います。

日本では定期接種と任意接種と言う枠組がありますが、あたかも定期接種の方が重要のように思われるかもしれませんが、これは行政上の枠組みであり、日本以外の国ではこのような区別はありません。子どもたちを感染症の危険から守るためには、定期・任意にかかわらず適切な時期に全てのワクチンを受けられることが望まれます。

子どもたちは、全てのワクチンを受ける権利があると思います。
これからの社会を担う子どもたちのために、全ての子どもたちが平等にワクチンを受けられるような制度・体制作りが必要でであると共に、保護者の方が予防接種に対して受け身ではなく、子どもを感染症から守るという積極的な意識が必要だと思います。

ずっと、、

2011-11-20 22:50:31 | 雑記
時間の感覚は、状況に応じその人それぞれ異なるものだと思います。

診療していて症状が「ずっと続く」と言ったとき、
皆さんはどのくらいの期間のことを思い浮かべているのでしょうか。

症状にもよると思いますが、
私自身は、熱なら数日、咳や鼻水なら週単位といった感覚ですが、
実際に患者さん(保護者)の話を聞くと、当日朝からの場合もありますし、症状によっては数ヶ月の場合もあります。

最近は、僕が思うのより短い期間で「ずっと」と訴える方が増えたように感じます。
生活が便利になり、何でも直ぐにということで、時間の感覚が変わってきてまったのかと思います(こちらが歳をとったと言うことなのか、、)。

時間の感覚が変わってしまっても、風邪にかかってしまったら治るのまでに時間がかかるのは変わらいので、多少辛抱しなければならない場合もあると思います。

現代社会は、いろいろ便利になった割に、なぜかいつも時間に追われているように感じるのは自分だけでしょうか、、

ポリオワクチンについて

2011-11-16 18:06:15 | 雑記
日本小児科学会がポリオワクチンについての見解を発表しています。

「ポリオワクチン接種に関する予防接種・感染対策委員会の見解」

早急な不活化ワクチンの導入が望まれますが、
現状では、「不活化ポリオワクチンが導入されるまでポリオワクチン接種を待つことは推奨できません。」と言う事で、
1、生ワクチンを接種する
2、不活化ワクチンを接種する(国内未承認のため、接種医と保護者の責任の上での接種)
のどちらかを選択する事になります。
必然的に、2に関しては接種環境が限定されているため、多くの方は1を選択することになります。

生ポリオワクチンによるポリオ麻痺の発生頻度は、接種100万回に約1.4人(ちなみに日本の年間出生数は約100万人)で希な事例ではあるので過度に心配する必要はありませんが、ある頻度で発生するとわかっていて接種する不安は残ってしまいますし、実際に発症してしまった場合のことを考えると、行政の早急な対応が望まれます。
ただ、今ワクチンを接種しない選択肢は、本当のポリオの発生を招くリスクを選ぶことになり、より大きなリスクを選択することになってしまうということになるので、よく考えて下さい。

またこの中で、「世界保健機関(WHO)が、生ポリオワクチンによるポリオ麻痺を予防するために、お母さんからの免疫が残っている間に初回の接種を受けることを勧めています」と記載があります。

*原文の記載は、「母親からの免疫が残っている時期に生ワクチン初回接種することで、少なくとも理論的にはポリオ生ワクチンによる麻痺を予防するだろう。」で、生ワクチン接種がポリオ発生のリスクのある地域を対象としていて、接種開始時期など日本とは著しく異なります。
原文リンク:Polio vaccines and polio immunization in the pre-eradication era: WHO position paper

そうなると日本では、接種可能となる生後3ヶ月になったら出来るだけ早く1回目のポリオ生ワクチンを接種するよう考えなければなりません。
この時期は、ヒブワクチン・肺炎球菌ワクチン・DPTの接種時期とも重なり(任意接種ではありますが、11月21日登場予定のロタウイルスワクチンも接種時期が重なってきます)、松戸市では接種が集団接種で日時が限定されるなど、スケジュール的に非常に困難が予想されます。



市民公開セミナー「ワクチンで守ろう!子どもの未来」(新潟市)

2011-11-14 02:24:27 | 雑記
予防接種について、いろいろ知りたいという方へ、

11月12日に新潟市で行われた、市民公開セミナー「ワクチンで守ろう!子どもの未来」をUstreamで見ることができます。
第二部が、予防接種全般についての講演となっていますので、1時間ちょっとですが時間を作って観てみて下さい。

第一部:http://www.ustream.tv/recorded/18465915

第二部:http://www.ustream.tv/recorded/18467244

▼講演:第一部

○ 新潟市保健所保健管理課感染症対策室室長上田睦子さん
「新潟市の予防注射について」

○ 済生会新潟第二病院小児科部長平野春伸先生(新潟市小児科医会副会長)
「細菌性髄膜炎ってどんな病気?」

○ 細菌性髄膜炎から子どもたちを守る会会長田中美紀さん
「細菌性髄膜炎から子どもたちを守ろう
~不安になってもいいんだよ、みんなで守るかけがえのないいのち~」

▼講演:第二部

○ 新潟大学医歯学総合病院小児科教授齋藤昭彦先生
「こどもの予防接種その効果と副反応」

○ 講演いただいた4人の先生への質疑応答・Q&Aセッション
(申し込み時にいただいた質問にずばり回答)

受診時定額負担制度

2011-11-09 09:30:16 | 雑記
ちょっと堅苦しい内容ですが、高額療養費制度の自己負担限度額の引き下げに必要な財源確保のために、外来受診時の自己負担額に100円程度を上乗せする「受診時定額負担制度」の導入が検討されています。

「受診時定額負担制度」の詳細は、検索してもらえればと思います。

*「高額療養費制度」:重い病気などで病院等に長期入院したり、治療が長引く場合は、医療費の自己負担額が高額となります。その負担を軽減できるように、一定の金額(自己負担限度額)を超えた部分が払い戻される制度です。

日本の医療保険制度は、出来る限り国民全員が平等な医療を受けられるような制度で、諸外国に比べ誰でも医療を受け易い仕組みとなっています。医療を受けて支払う自己負担分以外の費用を支えているのが、国民保険や社会保険などの保険料や税金からの公費となっています。

ただし、医療の進歩や高齢化などに伴い、年々医療費は増大しており、その財源確保が課題となってきています。
その一つとして、今回の「受診時定額負担制度」の導入が検討されています。

医療費の増大とはいっても、日本の医療費は世界の先進国な中では最も低い水準(対GDP比)と言われており、それに対して平均的な医療水準や医療機関へのアクセスのし易さは、長寿国ということや新型インフルエンザ流行時に日本での諸外国に比べ死亡率が日本では低かったなどのことで証明されています。

色々な課題が含まれる問題で、日本医師会は「受診時定額負担制度」の導入には反対していますが、最終的には医療を利用する皆さんがどのような医療を求めていて、それに掛かる費用をどのように負担していく覚悟があるか、皆さん自身が決めることだと思います。

反対という方は、反対の署名用紙をクリニックにも置いていますので、お声掛け下さい。

健康なからだづくり(3) ー 食習慣 ー

2011-11-06 16:33:57 | 健康なからだづくり
食事は、生き物が生きていくための最も基本的な要素であることは言うまでもありません。

食事は、ただ単に空腹を見たせればよいといったものではなく、
食事内容を含めた食習慣は、健康的なからだを保つための重要な要素と言えます。

簡単にまとめれば、
「規則正しくバランスのとれた内容で、楽しく食事をする」
と言うことになります。

簡単なようですが、この中には多くの要素が含まれていてそう簡単ではないと思います。

1、規則正しく・・・
朝忙しく、しっかりと朝食をとれない、、
乳幼児なども、大人の生活リズムと一緒になり夜遅くまで起きていたりして、朝起きるのが昼近くになってしう、、
間食をして、食事の時間にしっかりと食事を食べられない、、

2、バランスのとれた・・・
好き嫌いがあり、内容が偏ってしまう、、
  実は親の好き嫌いが影響しているかも、
  子どもが食べやすいように工夫しているか、
食事の量は、適切か、、
  親の食習慣で、適切と思われる量の感覚は各家庭で差がある、

3、楽しく・・・
食事自体(食材や調理法など)に興味をもって食事ができているか、、
日常的に家族で食事ができているか、、
  乳児も、ある程度離乳がすすんだら、一人だけで食べさせてもらう食事は楽しくないかも、
テレビなどで、食事以外に気持ちが集中していないか、、

細かいことを言い出すと切りがないようにも思います。

子どもの頃の食習慣が、その後の人生の食習慣の基礎となります。
このようなことを、最近では食育と言うのかもしれませんが、
本当は、こんなことを意識せずにしっかりした食習慣が身に付くような社会がよいのだと思います。


来年度(平成24年度)ワクチン接種事業の継続について

2011-11-03 18:40:55 | 雑記
ヒブワクチン、肺炎球菌ワクチン、子宮頸がん予防ワクチンについては、現在は任意接種の扱いですが、ワクチンの重要性などが考慮され、行政からの接種費用助成(松戸市では全額助成)が行われています。

ただし、現在助成費用の予算は、「子宮頸がん等ワクチン接種緊急促進事業 」として平成22年度補正予算で決定されたもので、今年度(平成23年度)までの予算しか決定されていません。

来年度(平成24年度)以降の予算に関しては未定となっており、今のところでは来年度政府予算概算要求の中には計上されていない様子です。

最悪、予算措置が継続されない場合は、来年度(平成24年度)以降の費用助成が受けられなくなる可能性もでてきます。
小宮山洋子厚生労働大臣は、9月の答弁で子宮頸がんワクチン事業を継続する考えを表明したようですが、実際にどうなるかは不透明なままです。

これらのワクチンは世界的には定期接種として定着しており、日本でも早急に法定接種としての定期接種化が望まれます。
定期接種化されれば、今回のように予算がどうなるかなどという心配もなくなり、子どもたちみんなが平等にワクチンを受けることが可能となります。

国や社会は、ワクチンで防げる病気から子どもたちを守る義務があり、子どもたちは、そのワクチンを受ける権利があります。
子どもたちが、みんな平等に適切な時期にワクチンが受けられるよう、みんなで考えてみて下さい。