子どもの健康

子どもたちの健やかな成長を願って、子どもに関する小児科医の雑記

睡眠について

2014-05-25 19:14:25 | 健康なからだづくり
春の運動会シーズン真っ只中、外来診療は落ち着いています。

今回は睡眠の大切さについて少し考えてみたいと思います。
睡眠は人が健康に生き・質の高い活動をするために欠かせない生物学的な現象です。
寝ている間は何もしていない無駄な時間ではなく、心身の状態を整える活動が寝ている間に行なわれています。
睡眠不足は、高血圧・糖尿病・肥満・免疫能力の低下や活動中の注意力低下などのとの関連性が証明されています。
また、成長過程における小児期に睡眠が疎かになることで、発達や情緒などへの影響も懸念されます。

現代日本は、世界的にみても子どもの就寝時間が遅く、睡眠時間も短く、もっとも睡眠を疎かにしている国の代表格となっています。

しかし、ただ寝れば良いかと言うのではなく、良い睡眠を取ることが大切です。
人間は生来昼行性の生き物なので、夜睡眠を十分とり、明るくなったら活動をするのが自然の姿です。
人に備わっている体内時計は24時間より少し長いのですが、朝に日光の光を浴びることで24時間に同調させています。
生まれたばかりの頃にはまだ昼夜の区別がありませんが、朝に日光の光を浴びながら、昼行性の心身のリズムを形成していきます。

朝日光の光を浴びて、早起きをして、日中(特に午前中)しっかり活動をし、夜は早く寝るという習慣を乳児期から身につけることが健やかな子どもの発達を促すのに非常に大切なことだと考えられています。

大人の生活様式(夜型)に子どもを巻き込まないように、今一度子どもの生活リズムを見直してみて下さい。

健康なからだづくり(4) ー 出生前(胎内)要因 ー

2012-05-03 18:48:51 | 健康なからだづくり
先日、赤ちゃんの平均出生体重が30年前より250g減少しているとの調査結果(平成22年)を新聞で目にしました。先進国の中でも出生体重が減り続けているのは珍しいということです。

出生体重と将来の生活習慣病(肥満・高血圧・糖尿病など)の発生リスクは、逆相関しており、出生体重が小さいと将来の生活習慣病のリスクが高くなることが分かっています(ただ、大きければ良いかと言うと限度があると思います)。

出生体重の減少の要因は色々な要素が複合した結果だと思いますが、妊娠中(妊娠前も)の体重増加を気にしての食事生活の不適切な管理(制限?)や妊娠中の喫煙(受動喫煙も含む)などが要因の一つではないかと指摘されています。

出生体重とは別に、最近になり2~3ヶ月の乳児に予防接種・健診などをしていて、赤ちゃんの皮膚のトラブル(乾燥や皮膚炎)が増え、赤ちゃんの1日の排便回数が減ってきた印象があります。

これも、胎内~出生後の生育環境が影響している可能性もあるのではないかと思っています。

まず思いつくのは、母親(母体)の栄養状態が要因の一つではないかということです。
母親(母体)自身が、体重の増加を気にしすぎて、過剰(不適切)な(量的または質的な)食事の制限をしてしまってはいないでしょうか。

糖分・脂肪・タンパク質などバランスよく摂取することが必要ですが、いわゆるダイエット食といってバランスの悪い食事(ダイエット食=健康的な食事ではありません)をしていたりしないでしょうか。

あくまで推測の域をでない話ですが、健康的な母体(良い胎内環境)ということをよく考えてみる必要はあるのではないかと思います。

健康なからだづくり(3) ー 食習慣 ー

2011-11-06 16:33:57 | 健康なからだづくり
食事は、生き物が生きていくための最も基本的な要素であることは言うまでもありません。

食事は、ただ単に空腹を見たせればよいといったものではなく、
食事内容を含めた食習慣は、健康的なからだを保つための重要な要素と言えます。

簡単にまとめれば、
「規則正しくバランスのとれた内容で、楽しく食事をする」
と言うことになります。

簡単なようですが、この中には多くの要素が含まれていてそう簡単ではないと思います。

1、規則正しく・・・
朝忙しく、しっかりと朝食をとれない、、
乳幼児なども、大人の生活リズムと一緒になり夜遅くまで起きていたりして、朝起きるのが昼近くになってしう、、
間食をして、食事の時間にしっかりと食事を食べられない、、

2、バランスのとれた・・・
好き嫌いがあり、内容が偏ってしまう、、
  実は親の好き嫌いが影響しているかも、
  子どもが食べやすいように工夫しているか、
食事の量は、適切か、、
  親の食習慣で、適切と思われる量の感覚は各家庭で差がある、

3、楽しく・・・
食事自体(食材や調理法など)に興味をもって食事ができているか、、
日常的に家族で食事ができているか、、
  乳児も、ある程度離乳がすすんだら、一人だけで食べさせてもらう食事は楽しくないかも、
テレビなどで、食事以外に気持ちが集中していないか、、

細かいことを言い出すと切りがないようにも思います。

子どもの頃の食習慣が、その後の人生の食習慣の基礎となります。
このようなことを、最近では食育と言うのかもしれませんが、
本当は、こんなことを意識せずにしっかりした食習慣が身に付くような社会がよいのだと思います。


健康なからだづくり(2) ー 早寝早起き ー

2010-07-14 16:31:28 | 健康なからだづくり
もうすぐ幼稚園・学校など夏休みです。

僕が子どもの頃は、休みになると「早寝早起き、規則正しい生活を送りましょう」と標語のようによく言われていた気がします。

近年、僕が子どもの頃や今でも諸外国と比べると日本の子どもの就寝時間が遅くなっているようです。
3歳児の4~5割で、就寝時間が22時以降という調査報告もあります。
幼児期の睡眠時間が遅いと、それ以降も就寝時間が遅くなる傾向がると言われています。幼稚園や学校に入ると、朝の起床時間は決まってくるので、結果として就寝時間の遅れは睡眠時間の短縮(睡眠不足)になってきます。

何故、十分な睡眠を取る必要があるのでしょうか?

人間にも生き物として持っている様々な生態リズムがあり、その一つとして1日のリズムがあります。
ご存知の方も多いと思いますが、地球の1日は24時間ですが、人間の1日のサイクルはそれよりも少し長く、その誤差を朝に太陽の光にさらされることで修正しています。

そのサイクルの中の睡眠は、その間に様々なホルモンの分泌や脳内活動に必要な化学伝達物質の補給などが行われ、人間の成長や健康維持のために不可欠な時間といえます。

睡眠は子どもにとって、身体的な発育や脳の発達など健やかな成長に非常に重要な時間といえます。また、体内の免疫活動にも睡眠は関与しており、感染症かかりにくい体づくりにも正常な睡眠は重要な要素と言えます。
大人も、健全な精神活動に睡眠は不可欠だと思いますし、睡眠不足は生活習慣病や老化のリスク要素にもなります。

睡眠の役割について全て解明はされておらず、ちゃんとした睡眠をとらなくてもすぐに何か目に見える障害が出る訳ではないのでついついおろそかにしてしまいそうですが、特に成長期の子ども達にとって、成長期に適切な睡眠を取れないことでの影響は、睡眠に関連したこととは気付かないだけで、思いもよらない形でもう現れてきているかもしれません。

通常人間以外の生き物は、自然に身に付いたリズムで睡眠をとっていますが、人間は自分が作り上げたものに、注意して意識していないと生き物として必要最低限の自然な睡眠の時間まで奪われてしまっていると思います。

大人は自分のことは自分の責任判断で行動すればよいと思いますが、子ども達が健やかに成長するための環境は、大人の身勝手に子どもを巻き込まないよう子どもの立場で大人が考え整えていく必要があると思います。

子どもが早寝早起きできる環境というものを考えてみてはどうでしょうか?

健康なからだづくり(1)

2010-06-06 19:05:29 | 健康なからだづくり
最近本屋に行くと「自然治癒力」「病気になりにくいからだづくり」などといった見出しの本や雑誌をよく目にします。

まぁ、中を見ると食事、運動、睡眠等についてごく当たり前の事が解説付きで書いてある訳ですが、この様な出版物が売れるのは、そのごく当たり前の事が現代社会では当たり前の事として通用しなくなって来ているためなのかと考えさせられます。

生き物として健康な状態を保つには、その生き物にとってできるだけ自然な状態でいることが基本になるのではないかと思います。
人間はいろいろな状況に適応するために、環境自体を変えながら現状に至ってきました。その過程で、生き物としての人間の自然の状態ということ自体が分らなくなってしまったように思います。

農業などでは、確実な収穫や作業の軽減を目的として農薬や化学肥料を使用してきた結果、長い年月を経て健全な作物の成育に必要な土壌環境などの悪化を招き、作物の病害や栄養価の低下など健全な作物の成育を妨げることとなり、土壌環境を改善するために有機的な栽培が見直されています。

我々人間も、生活習慣・食事・空気や水などなど、短期的にすぐ分るような悪い影響がなければ大丈夫というのではなく、子どものころから長い時間をかけて、場合によっては世代を越えてどのように影響がでてくるのか?
今まであまりにも無頓着だったのではないでしょうか。

「健康なからだづくり」に関して、回を分けて(不定期になると思いますが)考えて行きたいと思います。