子どもの健康

子どもたちの健やかな成長を願って、子どもに関する小児科医の雑記

じんま疹

2007-09-16 17:52:17 | 病気
「じんま疹がでたので何が原因かアレルギー検査をしてほしい」
「じんま疹がでたのだけれど、何の食べ物がいけなかったのかわからない」

じんま疹で受診される多くの方が、その原因として食べ物を主体としたアレルギーを心配されます。

実際には、じんま疹の原因として何か特定の物に対するアレルギーによるものは、じんま疹全体の数%~10%程度でしかありません。じんま疹の半数以上は、通常の診療では直接的な原因の特定できないもので、その他に温度差や圧迫といったような様々な物理的刺激が誘引になるようなものや、入浴や運動などの発汗刺激にともなうようなものなどアレルギーが関与しない原因で起こるものも少なくありません。

直接的な原因がはっきりしないようなものの中には、風邪などの感染症がきっかけであったり、身体的な疲労やストレスなどが誘引になっている場合があります。

じんま疹がでたからといって、アレルギーを検査しても何も分らないばかりでなく、何か検査で陽性にでてしまった場合には無用の心配をしなければならなくなるかもしれません。
今までの経過で、どうも同じ物を食べたりすると症状がでるなど疑われるものがあり、検査をしたらその物が陽性であれば、原因として確定できますが、特に当てもなくしたアレルギー検査で陽性にでたものが必ずじんま疹などの症状の原因とは言えません。検査して陽性だったからということだけで、不必要な制限や心配をするこのになりかねないので注意が必要です。

なので、じんま疹がでたからといってすぐに検査しましょうということはなく、お話を聞いて原因となりそうなものがあれば必要に応じて検査をしますが、そうでなければ検査をしませんし、検査を希望して受診された方には必要性のないことを説明して納得して頂くようにしています。

「とびひ」と「虫さされ」

2007-07-30 02:25:45 | 病気
掻き崩しなどの皮膚の傷に細菌(たいていは黄色ブドウ球菌)が繁殖して「とびひ」になってしまうことがあります。
医学的には「伝染性膿痂疹」と言い、水ぶくれ(水疱)や水ぶくれが破れてぐじゅぐじゅした発疹で、病変部の細菌を多く含む分泌物を介して、周囲の皮膚やいじった手を介して離れた場所の皮膚、また病変部の接触で他の人へとうつっていくことがあるため「とびひ」という俗名がついています。

適切な抗生剤の内服や外用と病変部を清潔に保つことで数日で治りますが、治りが悪い場合には抗生剤に対する耐性菌(MRSAなど)が原因菌であることを考える必要があります。

ただ時々、「虫さされ」に対する反応が強い方で、刺された場所が水ぶくれ(水疱)になってしまい掻き崩して一見「とびひ」のように見えることがあり、蚊に刺された痕がすぐ化膿してしまうといって抗生剤の外用薬を塗っていてなかなか発疹が治らないという方をみかけます。
この場合には抗生剤の外用は無効なので、ステロイドや抗ヒスタミン剤といってアレルギー反応を押さえる薬の外用が必要ですので注意して下さい。当然、掻き崩した所を清潔にしていないと、そこから「とびひ」に発展していく可能性はあります。

また、「虫さされ」から「とびひ」に発展した場合には、抗生剤に加えかゆみ(アレルギー反応)を押さえるためにステロイドや抗ヒスタミン剤の外用を併用する必要もあります。

まずは「とびひ」にならないよう、普段から入浴やシャワーなどで皮膚を清潔に保つよう心掛けましょう。

手足口病

2007-07-24 19:39:27 | 病気
手足口病が多くなってきました。

手足口病の原因となるウイルスの一群(エンテロウイルス)は、手足口病以外にもヘルパンギーナ(発熱と口内炎)などの原因にもなるし、発疹等特徴的な症状を認めず熱だけが症状だったりと多彩な症状を呈するウイルスです。
何かかぜと言う以外に特別に名前が付いていると大変な病気のように感じるかもしれませんが、手足口病は夏に流行するウイルス性感染症(夏かぜ)の中の一つです。

症状は、名前のとおり手足の発疹と口内炎が特徴で、発疹は膝、おしり、肘にも認める場合が多く、高い熱がでることもありますが、熱もなく元気にまま経過することも少なくありません。

特に薬は必要なく(効果のある薬はありません)、多くの場合自然の経過で治癒します。

潜伏期は3~7日程度で、熱もなく元気があれば隔離の必要はありませんが、便中には数週間に渡りウイルスが排泄され続けますので、トイレの後の手洗い、乳児のオムツ替え後の手洗い、などはしばらく徹底する必要があります。

ただ、希にですが髄膜炎・脳症や心筋炎といった重篤な合併症を認めることもありますので、状態の変化に注意を怠らないよう心掛けて下さい。

夏かぜ

2007-05-30 22:30:15 | 病気
これから6月から7月にかけて「夏かぜ」が多くなってきます。

「夏かぜ」と言うと、なんとなく寝冷えしてかぜをひいてしまった様な印象を持つ方もいるのではないでしょうか。

「夏かぜ」は、この時期に流行するいくつかのウイルス感染によるもので、特徴的な症状を呈するものには「手足口病」「ヘルパンギーナ」「咽頭結膜熱(プール熱)」などがあり、いくつかのウイルス(エンテロウイルス、アデノウイルスなど)によるもので、その原因ウイルスごとに発熱や発疹、下痢や嘔吐、肺炎や髄膜炎など多彩な症状を呈する可能性があります。

抗生剤などは無効で、「夏かぜ」の原因となるウイルスに対して効果的な薬剤はありませんが、多くの場合は自然の経過で治癒する感染症なので、変わったこと(合併症)などを起こさなければ自宅でゆっくり療養することが一番効果的と考えられます。
ただし、溶連菌感染症やマイコプラズマ感染症など抗生剤治療が必要な感染症も最近は散見され、また麻疹なども病初期では「夏かぜ」と区別することは必ずしも容易ではないので注意が必要です。

水イボ(伝染性軟属腫)

2007-05-23 16:34:26 | 病気
これからプールの季節を前に、幼稚園や保育園児を中心にプールに入れてもらえないからと「水イボ」で受診する子が増えてきます。

「水イボ」は皮膚にウイルスが感染してできる良性のイボで、ほとんどの場合は半年から数年の経過で免疫が獲得されると自然に消失します。
直接皮膚を接触させたり、タオルなどを共有することで間接的に接触することで感染する可能性がありますが、感染性はそれほど強くなくプールの水を介して感染することはありません。なので、プールだけでなく子どもが集団で生活している以上はある程度の避けられないものなので、プールを制限すること自体はあまり意味がないと考えられています。ただし、まだ幼稚園や保育園では過去の習慣から「水イボ」があるとプールや水遊びを制限されてしまうことが多いようです。
かといって、まったく無頓着でいていいという訳ではなく、タオルを共有しない、プール・水遊び後にはシャワーなどで体をきれいに洗い流すなどの注意は必要です。

「水イボ」があったら必ず治療しなければならないということはないので、治療の適応は症状の程度、集団生活上の問題や親の希望などを総合的に考えて決めています。
治療法は、専用のピンセットで摘んでイボの中身ごと摘出する方法、薬剤(硝酸銀)でイボを腐食させる方法が一般的ですがそれぞれ一長一短があるので、治療の適応を含めかかりつけ医に相談して下さい。(ちなみに、当院ではピンセットでの処置を行っています。)

感染性胃腸炎

2006-12-03 19:45:11 | 病気
感染性胃腸炎(ウイルス性胃腸炎)が流行っています。
現在流行っている原因ウイルスはノロウイルスが多いのではないかと思います。ノロウイルスというとなんか特別な病気のように聞こえますが、いわゆる「おなかの風邪」のことです。牡蠣にあたったと言った時の原因も多くはノロウイルスが原因です。ノロウイルス以外にもロタウイルスやエンテロウイルスなども感染性胃腸炎(ウイルス性胃腸炎)の原因となります。
症状は吐き気で始まり、その後下痢や発熱などを伴う場合もありますが、人により症状の程度はさまざまです。感染性胃腸炎(ウイルス性胃腸炎)の原因ウイルスに対する治療薬はありません。感染性胃腸炎(ウイルス性胃腸炎)自体は自然の経過で治癒するのを待たなければなりません。多くの場合、嘔吐や吐き気は最初の半日から1日程度たつとその後次第に落ち着いてきます。子どもの場合、その間に脱水にならないよう乗り越えられれば後は時間の問題です。
薬は初期に吐き気止めを使用したり、下痢があれば整腸剤を処方したりしますが、水分などの補給ができていれば必ずしも薬は必要ありません。下痢止めは原則的に使用しません。
発症後初期には、水分と塩分の補給が最優先されます。母乳を飲んでいれば母乳でよいし、幼児用のイオン飲料などを利用するのもよいと思います。白湯やお茶であれば時々お味噌汁の上澄みやコンソメスープなどの塩分のあるものをあげてください。
なんにしても、最初は少量ずつ根気よくあたえることが重要です。飲むからといって一度に量が多すぎたり、あたえるペースが早すぎたりすると吐いてしまいます。ある程度水分を吐かずにとれるようであれば、糖分(炭水化物)の補給も始めなければなりません。ご飯やうどんなど少しずつ開始し、どうしても固形物がとれなければリンゴジュースなどもよいかもしれません。母乳やミルクを飲んでいるのであれば母乳やミルクでかまいません。下痢が始まると、飲んだり食べたりすると下痢ですぐ出てしまうと心配されるかたも多いですが、飲んだり食べたりすることで下痢がひどくなっている訳ではなく、腸に貯まっていていずれ出てくるものが飲んだり食べたりの刺激がきっかけで出てくるだけなので、下痢になるからといって飲んだり食べたりすることを控える必要はありません(控えることで逆に回復を遅らせてしまいます)。
吐き気がある程度落ち着いてきたら、食べる物は脂肪の多い物や冷たいもの・刺激物などを除けば極端な制限は必要ありません。
お母さんお父さんたちに頑張ってもらえればお家でなんとかなる場合が多いと思います。ただし、水分の補給が十分にできないような場合には病院で点滴が必要になることもあるし、脱水にいたっていなくても初期に点滴をを行うことである程度初期の症状を軽減できる場合があります。
また、感染性胃腸炎(ウイルス性胃腸炎)はその名のとおり感染するため、家族内などでの感染も多く注意が必要です。発症した人の触った場所(ドアの取っ手や水道の蛇口など)にはウイルスがついている可能性があり、そのような場所を触った手を洗わず手を口に持って行ったり食事をすることで感染する可能性があります。おむつを換えた後の手も注意が必要です。手洗いをこまめに行う事、タオルなどを別にするなどの注意である程度家族内での感染は予防出来ます。

熱中症

2006-07-17 22:44:56 | 病気
今日松戸は一日雨でしたが、ここ数日の暑さからは解放されました。

週に2~3回のランニングをしていますが、最近の暑さは運動する際には注意が必要です。
水分の補給を十分に行い、なによりも無理をしないことが大切です。

これからお出かけなど外での活動が多くなる時期、運動していなくても熱中症に対する注意をいつも心掛ける様にしましょう。
日中の暑い時間帯に長い時間屋外にいる時などは、運動しているいないに関わらず(特に乳幼児期のお子さん)熱中症に対する注意が必要です。水分をこまめに補給し、日陰など涼しいところで休憩をとるなど心掛けましょう。
水分補給は、運動などしているのでなければ通常は水やお茶で良いと思いますが、発汗が多い様ならスポーツ飲料などのイオン飲料を上手に利用するのも良いかと思います。
ただし、通常の日常的な水分補給は水で十分なのでイオン飲料やジュース類を飲む習慣をつけてしまわないよう気をつけて下さい。甘い味のついたものに慣れてしまい習慣化してしまうと虫歯や肥満などの問題に発展する可能性があります。

これからの時期、一日暑い所にいたので熱中症ではと発熱で外来を受診する方が多くなりますが、熱中症で高熱が出た場合は意識もはっきりせず非常に危険な状態ですので、普通に外来を受診できるような状態の時は風邪による発熱のことがほとんどと思われます。

また、熱中症と同時に紫外線(日焼け)に対する注意も怠らない様にしてください。
過度の日焼けはやけどと同じことですし、長期的な事を考えれば日焼けの蓄積が皮膚のシミやシワの主要因でありまた皮膚がんのリスクを増大させます。子どものころから紫外線(日焼け)に対する対処法を身につける習慣を作っていきたいものです。

夏かぜ

2006-05-23 23:55:44 | 病気
今年は例年より早く「夏かぜ」の患者さんが増えてきました。

「夏かぜ」とは、主にエンテロウイルスやアデノウイルスに起因する感染症の総称です。
特徴的な臨床症状を呈するものとして「手足口病」「ヘルパンギーナ」「プール熱(咽頭結膜熱)」などがあり、同じウイルスが原因であっても他に特徴的な症状のない発熱、下痢、発疹などさまざまな症状を呈することがあります。

「夏かぜ」には抗生剤は無効で、原因を治す様な効果的な薬はありません。
水分栄養の補給に注意しゆっくり休養することが一番で、薬は解熱剤などの症状を一時的に軽減するような対症的な薬を症状がつらければ使用しますが絶対必要なものではありません。
薬を使えば早く治ることはありませんし、ひどくなならないようにと早めに薬を飲んでも経過に影響はありません。
逆に薬を飲んで無理をすることで、症状を悪化させることのほうが注意が必要です。

多くの場合は自然の経過で治癒する感染症ですが、稀に重症化するものや合併症を併発することもあるので、経過中の症状には注意をはらい症状に応じて適切に病院に受診しなければなりません。

ウイルス性胃腸炎

2006-04-16 21:59:14 | 病気
このところ、嘔吐・下痢の症状を主症状とする患者さんが多く診察にみえます。

診断は「ウイルス性胃腸炎」ですが、『感染性胃腸炎」「流行性嘔吐下痢症」「お腹の風邪」などと言われるものはみな同じ状態です。原因となる代表的なウイルスとして「ノロウイルス」「ロタウイルス」などがあげられます。

典型的な症状は、嘔気・嘔吐症状から始まり、その後下痢や発熱を認めるます。嘔吐は初期に集中して認められますが半日から1日ほどで治まってくることが多く、そのかわり下痢は数日続きます。

状態に応じて点滴による水分・ミネラル(主に塩分)や糖分の補給の適応となりますが、原因となるウイルスに有効な薬はなく、病気自体は自分自身の免疫力で自然と治るのを待たなければなりません。水分やミネラル(主に塩分)の摂取を心掛け、ゆっくり休養することが一番大切です。薬は病気自体を治すようなものはなく、吐き気や熱等つらい症状をある程度軽減する目的で使用されますが、薬が嫌いで薬を飲む事で吐いてしまうなどのことがあれば飲む必要はありません。下痢止めは小児科では胃腸炎の診断で原則的には使用しません。

ウイルスは、便中に排泄され症状が治まってからもしばらくは便中に排泄されています。人から人に感染しますが、手洗いを適切に行うことで感染予防ができます。

とにかく、様子をみながら少しづつでも適切に水分・ミネラル(主に塩分)が飲むことが可能であれば後は時間とともに状態は良くなっていきます。食事は、食欲がでてきたら食べられる範囲で吐き気を催さない程度に少しづつ開始してください。内容は脂っこいものや刺激のあるものでなければ、だいたいのものは大丈夫ですが、最初のうちは炭水化物を主体としたものが無難ではないかと思います。ただ、様子を見ながら吐かずに無理なく食べられるのであれば下痢が続くからと言う理由で食べ控えたり、内容の制限をする必要はありません。

また、水分補給の目的でイオン飲料を利用するのは構いませんが、病気が改善してからも日常的に水分補給のために使用し続けるのは止めてください。過激な運動や極端に汗をかいた時以外の日常的な水分補給には水が一番です。

溶連菌感染症

2006-03-17 22:46:30 | 病気
今、溶連菌(溶血性連鎖球菌)感染症が流行しており、今年は例年に比べて患者さんが非常に多くなっています。

症状としては、発熱・のどの痛み・発疹・イチゴ状舌など典型的な症状が揃えば診断は比較的簡単です。
しかし、これら症状は必ずしも揃うとはとは限りません。
また、ちょっとした微熱、体のだるさ、腹痛など非典型的な症状のみで受診される子もいます。

診察して典型的なのどの赤みがあれば症状にかかわらず疑って検査します。
のどを綿棒でこすって検査することで外来ですぐ結果がわかります。

流行しているということで念のために検査をすると、「この症状で溶連菌感染症なの?」ということもあります。

検査をすることで、教科書的な症状だけでなく非典型的な症状の患者さんが多く存在することを痛感します。

まずは、流行状況や色々な症状の患者さんを診ることで、溶連菌感染症を疑う目を持って診察することが大切になってきます。

溶連菌自体は抗生剤が良く効くので、治療を開始すればすぐ症状は改善されます。
ただし、溶連菌治療は症状の改善だけではなく溶連菌消失が終了目標となります。そのために、標準的な治療はペニシリン系抗生剤の10日間内服が行われます。

溶連菌の合併症として、急性糸球体腎炎やリウマチ熱などがあり、また不十分な治療では症状を繰り返したり、周囲の人への感染源となる可能性があるため、症状が改善してもしっかり抗生剤を飲み切る必要があります。

人への感染は、抗生剤の内服開始し1日たって症状も落ち着いていれば心配する必要はありません。

子どもだけの病気ではなく大人も感染することはありますし、何回でも感染する可能性があります。

治療して症状もよくなったのに、検査をすると陽性になってしまうこともあり、治療開始後の経過のみかたなどは受診した医師の指示に従うようにして下さい。