子どもの健康

子どもたちの健やかな成長を願って、子どもに関する小児科医の雑記

男の子は小さいうちに「おたふくかぜ」に罹った方が良い?

2007-06-17 22:28:49 | 雑記
「男の子は小さいうちに”おたふくかぜ”に罹った方が良い。大きくなってから罹ると大変だから、しっかり免疫をつけておきたいし。」と言ったことを時々聞きます。

男性が大きくなってから”おたふくかぜ”に罹ると何が大変なのか? >> 子どもが出来なくなると言ったことをよく耳にします。

思春期以降に”おたふくかぜ”に罹ると、合併症として睾丸炎の頻度が増加します。左右両方の睾丸炎を起こすと不妊の原因となる可能性がありますが、片方の場合が多いので過度の心配はいりません。頻度は男性ほどではありませんが、女性も卵巣炎を合併することがあります。

確かに、思春期以降に”おたふくかぜ”に罹ると子どもの頃に罹るより症状もつらいことが多く、片方にしろ睾丸炎の合併などを考えると罹りたくないのは確かだと思います。

だからと言って、予防接種があるのに小さいうちに罹ってしまった方が良いのでしょうか?

小さい頃に罹っても、頻度は少ないにしろ睾丸炎になることもあるし、その他に髄膜炎や難聴などの合併症の可能性もあります。保育園や幼稚園・学校なども休まなければならないし、何か行事に重なれば残念な思いをすることもあるかもしれません。

予防接種をしていても”おとふくかぜ”に罹ってしまう方もいて、予防接種だけでの免疫では不安という方もいるかもしれません。ただ、多くの人が予防接種を行えば”おたふくかぜ”の流行自体も少なくなり、免疫が十分でない人も感染する機会も少なくなります。また、予防接種をしていて罹った場合には症状も軽くすむことが期待できます。

それでも予防接種だけでは大人になった時に心配と思う方は、大人になって子どもとの接触の機会が増えることがあれば、その時に再度予防接種を受けることを考えてもよいと思います。

自然に”おたふくかぜ”に罹るに任せておくのではなく、男の子に限らず多くの方が予防接種を受け”おたふくかぜ”の流行を起こさないようにすることで、”おたふくかぜ”の合併症などで不利益を被る人を減らせることが期待できます。

なので、「男の子には小さいうちに’おたふくかぜ”に罹った方が良い」などと言わずに、予防接種を受けてもらいたいと思うし、更には”おたふくかぜ”も麻疹や風疹と同じように行政が推奨する定期接種にしてもらいたいと思っています。