子どもの健康

子どもたちの健やかな成長を願って、子どもに関する小児科医の雑記

B型肝炎ワクチン

2012-09-09 16:52:51 | 雑記
現在B型肝炎ワクチンは任意で費用の助成もありませんが、
ヒブワクチン・肺炎球菌ワクチンなどといっしょに、接種を希望される方が増えてきています。

「接種した方がよいのですか?」と質問されることも増えてきました。

「出来るなら接種しておいた方がよいワクチンです。」とお答えしています。

B型肝炎ワクチンは、出産前の検査でお母さんがB型肝炎の感染者である場合に、母子感染
予防目的で出産後保険保険診療で子どもに対するワクチンの接種が行なわれています。

日本では、B型肝炎の感染予防に関して、母子感染予防を徹底することで十分と考えられていましたが、どうもそれだけでは不十分ということがはっきりしてきました。

感染経路は、従来言われていた血液感染だけではなく、汗や唾液を介した感染経路が判明しており、母子感染以外に、父親からや保育園などでの集団生活内での感染が問題になっています。

B型肝炎ウイルスに感染すると、急性肝炎や劇症肝炎(時に致命的)を発症し治癒する場合と、急性肝炎の一部の人がその後にキャリア化(慢性感染)したり、感染しても無症状でキャリア化する場合の2つの可能性に分けられます。
キャリアは、その後に肝硬変や肝癌発症のリスクとなりますし、他の人にウイルスを感染させる可能性があります。

乳幼児期にB型肝炎ウイルスに感染すると、キャリア化するリスクは高く、乳幼児以外でも最近では急性肝炎のキャリア化のリスクの高い欧米型のウイルス(ジェノイプA型)の感染が日本でも増えてきており、乳幼児以外でもキャリア化のリスクは過小評価できません。

ちなみに、B型肝炎ウイルス感染による急性肝炎発症の年齢ピークは、20歳後半から30歳前半にあります(多くは性行為)。

なので、乳幼児だけの接種ではなく、その他のどの年齢でも対象になるワクチンとも言えます。
日本以外の諸外国では、乳児期の定期ワクチン接種に組み込まれており、日本でも専門家を中心に定期接種化への要望がされています。

今後、日本でも定期接種化されると思いますが、いろいろな諸事情で残念んながらしばらく先のことではないかと思います。


参考リンク:
1、「B型肝炎について」(独立行政法人国立国際医療研究センター 肝炎情報センター)

2、6/23 葛飾区医師会 「B型肝炎の最近の話題」(Blog:感染症診療の原則)