手技療法の寺子屋

手技療法の体系化を夢みる、くつぬぎ手技治療院院長のブログ

ポジショニングの順序その2~足の位置は最後に決める

2015-10-03 17:00:00 | 学生さん・研修中の方のために
ポジショニングの基本は、おじぎをしたら手が着く位置にとる。

前回のように患者さんや練習パートナーをその位置に動かしたら、次いで自分が動きます。



適切なポジションを決める際、ポイントとして注意していただきたいのは「足の位置は最後に決める」ということ。

ありがちなエラーは、はじめに足を置いた位置を変えることなく、そのまま触診したりテクニックを使おうとすることです。



なぜか足を固定したまま、動かそうとしない方がいらっしゃいます。

患者さんの身体を操作することに気を取られ、自分の足元まで意識が行かないのかもしれません。

そのポジションが楽ならそれでよいのですが、そうではなかった場合、上半身を傾けるなどして身体に無理をかけた操作になります。



例えば伏臥位で腰部を圧迫した後、


殿部に移る際に、位置を変えずにそのまま身体を傾けて刺激しようとするなど。


結果、腰に負担がかかって腰痛を起こしたり、身体の力が使えないために指に力が入り腱鞘炎を起こしてしまう。



足が固まってしまうのは、どのようなスポーツを行う上でもよくないはずです。

だから足の位置は、ひとまず仮のものとして自由に動かせるようにしておき、決定は最後にするようにするとよいでしょう。

決めた後でも、微調整が必要なら動かすようにします。

足を居つかせないこと、これはとても大切なポイントです。



自分が動く順序としては、おじぎをしたら手が着く位置に立ち、大まかな体勢をとる。

刺激を加える方向へ、母指・四指・手根・肘などどの部分を用いてコンタクトするのか決める。

途中でコンタクトが上手くいかないようなら躊躇せず変えましょう。



次いで、目標となる方向へ楽にコンタクトできる手のかたちを決める。

手のかたちを楽に保つことが出来る、肘の位置と角度を決める。

肘を楽に保つことが出来る、肩の位置と角度を決める。

≪過去の記事もご参照ください「立ち位置は脇と肩で決める」



肩を楽に保つことが出来る、体幹の位置と向き、角度を決める。

体幹を楽に保つことが出来る、膝の位置と向きと角度を決める(慣れてきたら股関節を意識するとよいでしょう)。

膝の位置を楽に保つことが出来る、足の位置と向きが「決まる」。

立ち位置を、「決める」ものではなく自ずから「決まる」ものにするわけです。



慣れれば順番が適当でも上手くできるようになるでしょう。

けれども、はじめのうちは「手から決めて足を最後にする」という流れを私はおすすめしています。



「手先に力を入れない」という指導はよくされると思います。

裏を返せば、手先は力を入れやすいということ。

これを利用して、力を入れやすいところから順に決めていく。

わかりやすいところから、やりやすいところから順に進めていくという方法です。



ただし、常々お話していることですが、これはあくまでひとつの提案です。

この手順だけが正しいという訳ではありません。

他にもいろいろな進め方はあるでしょう。



どの方法を取るにせよ、何らかのかたちでパターン化しておくと、わかりやいかもしれませんね。

いろいろ試してみて、自分にとってしっくりくる、整理しやすい手順で進めていって下さい。



ポジショニングは、おじぎをしたら手が着く位置に。

先に相手を動かしてから自分が動く。

自分が動くときは手先からはじめ、足の位置は最後に決める。

この「流れ」、まずは試してみてください。



練習を重ねていくと、やがてポジショニングそのものが「決める」ものではなく、勝手に「決まる」ものという感覚を持てるようになると思います





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手技療法の寺子屋ブログを始めてから今月でまる6年になり、おかげさまで記事も300を越えました。
これだけの量になると、全体をみたり記事を探すのも手間がかかるかもしれません。
そこで、少しでもタイトルを調べやすくできるように、このお休みを使って目次を作ってみました。
手技療法を学ばれている方、興味を持たれている方にご活用いただき、お役に立てれば幸いです。

手技療法の寺子屋ブログ「目次」



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(どなたかよくわからないときがありますので、メッセージを添えてください)

ポジショニングの順序 その1~おじぎをしたら手が着く位置で

2015-09-19 17:00:00 | 学生さん・研修中の方のために
ポジショニングとは、触診によって評価したり手技療法を用いる時における、セラピストと患者相互の体勢と位置関係のことです。

ポジショニングはとても大切で、これが悪いと触診による評価の正確性が低下したり、テクニックを用いるときのコントロールも不十分になります。

結果的に、治療効果が望めないばかりか逆に悪化させたり、セラピスト自身も腰痛などを起こして身体を傷めるリスクも高めてしまいます。



ポジショニングは複数の条件が合わさり、その時々に応じたベストな位置が決まります。

ベッドか床か、クリニックか在宅か、セラピストと患者の体格差、あるいは患者の不安の程度など心理的な状態によっても適切な距離は変わって来るもの。

適切な位置を速やかに決めるのは、初めのうちはなかなか難しいところがあるかもしれません。



そのため、まず練習の時にはパートナーのことは気にせず、自分が「楽に操作できる」ところを探すようにするとよいでしょう。

「楽操」ですね。



自分にとって楽に操作が出来る力があるからこそ、相手のことを考える余裕が生まれるわけです。

余裕がなければ、きちんと診ることは難しくなります。

その余裕を作るため、はじめのうちは自己中心で練習して構わないと私は思っています。



ポジションを決める基準の基礎として私がお勧めしているのは、おじぎをして手が着いたら刺激が加わる位置にとるというものです。

握手をするときに自然と手を出す位置、でもよいでしょう。

それらの位置が自分にとって、より自然に力を出しやすいところのはずです。



この位置を取るために、順序としてはまず相手(患者や練習パートナー)の位置を変えるようにします。

自分からではなく、相手からというのがポイントです。



近づけたり遠ざけたり、傾けたり回転させるなど口頭で指示しながら手で補助し、おじぎをしたら手が着く位置に動いていただきます。

例えば側臥位で腰部に対し、外方から内方へ圧迫を加えたい時。


私が楽に押さえるなら、このようなかたち。




こちらは前傾し過ぎています。

自然と手を着く位置ではありません。

この体制のまま圧迫しようとすれば、セラピストは前のめりになって無理な体勢になります。




反対にこちらは後傾し過ぎています。

先程と同じく自然と手を着く位置ではありません。

手首が背屈し過ぎて、力を伝えにくいでしょう。



それぞれ言葉と手で誘導しながら、おじぎをしたら手が着く位置に身体の傾きを変えていただくようにします。



あたり前の話のような気がするかもしれません。

ところが現場に出ると、患者さんに動いていただくことを申し訳なく思っているのか、そのままの体勢にしたまま自分だけ動こうとするセラピストもいます。

気持ちはわかりますし、相手を思う気持ちは大切にして欲しいのですが、ムリな体勢で操作することが互いにとって良くない結果を生むのであれば、協力していただいたほうがよいでしょう。



そのため練習のうちから、動いていただくよう指示することに慣れておいた方がよいと私は思っています。

もちろん、患者さんが身体を動かせない場合は別ですが、そうでければ遠慮なくお願いするようにしましょう。



次回は、セラピストの動く順序についてです。





≪雑誌掲載のお知らせ)≫

医道の日本9月号にて寄稿した記事が掲載されています。
「抑うつを有する患者への 頭蓋仙骨療法を併用した徒手的施術例」
よろければご覧ください。
医道の日本


ティッシュプル(皮膚のあそびをとる:組織固定)の方向 その2

2015-08-08 17:00:00 | 学生さん・研修中の方のために
ティッシュプルは直線的な操作ばかりではなく、ねじる(回転させる:トルクをかける)ことで行う場合もあります。

これは代表的なものなら、カイロプラクティックで行われる胸椎のバリットテクニックがそうでしょう。

(ちなみに私は上手くありません



このテクニックは、伏臥位になったモデルの胸椎横突起に、小指丘をコンタクトして可動化させる方法です。

(写真は片手ですが、本当は両手をクロスさせて行います)

横突起にコンタクトした際、そのままでは横突起と皮膚までの組織のあそびが除かれていないために、力を加えてもコンタクトしたポイントがずれてしまって狙い通りの刺激を加えることができません。



そこで、はじめに手を内旋あるいは外旋して回旋させた状態でコンタクトし、本来の角度まで手をねじってティッシュプルします。



それによって皮膚から横突起までの軟部組織は、ぞうきんしぼりのような状態になって固定させることができます。

どの方向に回転させるのか、より詳細には脊椎の状態の評価(カイロプラクティックならリスティング)によって決定されるのですが、ここでは割愛します。



この方法は筋筋膜へのアプローチでも用いることができます。

前回のように大腿部にコンタクトし、脇を広げた状態から


脇を閉める。


あるいはその反対でもよいでしょう。



実際にはこんなに大げさではないのですが、わずかにねじってトルクをかけるだけでも安定感はまるで違ってきます。

以上の方法を、前回ご紹介した直線的なティッシュプルに加えて操作してみてください。



ティッシュプルのことを教わるとき、はじめはわかりやすさを優先させるため、一方向でとることから指導されるかもしれません。

慣れないうちはその方法で練習して、組織を固定する感覚をつかむようにすればよいでしょう。



でも慣れてきたら、前後・左右・回旋などさまざまな方向を混ぜてとるようにしてみてください。

複合的な操作を加えることで、よりわずかな動きで組織を固定することができます。

この微調整の感覚は、現場で試行錯誤を繰り返しながら身につけていくしかないでしょう。



何だか手間がかかるように感じるかもしれませんが、料理はひと手間かけることでよりおいしくなるように、テクニックもひと手間かけることでより効果的になります。

そのなかでティッシュプルというのは、料理でいうなら「塩」と同じかもしれません。

塩加減がよいのかどうかは見た目ではわからないように、ティッシュプルが出来ているのかどうかは一見するとよくわからないかもしれません。



けれども塩が上手く効いていない料理がどういうものか、みなさん想像すればわかると思います。

味にしまりがなく、ボケてしまうでしょう。

手技療法におけるティッシュプルもそれと同じです。

狙った部位に刺激を集めなければならないのに、ピントがボケて効果がなくなってしまうのです。

見た目はほとんど違いませんが、中身は大違いですよ~!



ちなみに慣れない方はティッシュプルを軽めに取るために、組織固定が甘くなりがちです。

意識してシッカリとるようにしましょう。

塩加減は強めで結構です。



最初は、塩が効いた料理とはどのような味かを知るために、大げさなくらいティッシュプルしましょう。

そして、組織を固定するという感覚をつかむことが出来れば、徐々に軽いティッシュプルでも上手くいくように練習するようにしてください。

少しずつ、うす味に慣れさせていくわけですね。



わずかな動きで操作できれば、セラピストは安定した状態を保ちやすく、患者さんへの負担もそれだけ少なくなります。

大事な大事なティッシュプル、常に意識するようにして、ぜひ身につけてくださいね。



次回は8月22日(土)に更新です。


ティッシュプル(皮膚のあそびをとる:組織固定)の方向 その1

2015-07-25 17:00:00 | 学生さん・研修中の方のために
手技療法を用いる上でティッシュプル(皮膚のあそびをとる)、つまり刺激を加える組織を固定することの大切さは、このブログで折に触れてお話してきました。

大切なことなので、必要な方はもういちど復習しておいてください。

「ひとりでできる!!肋骨の可動性検査練習法 その9≪大事な大事なティッシュプル1≫」

「ひとりでできる!!肋骨の可動性検査練習法 その10≪大事な大事なティッシュプル2≫」

「ひとりでできる!! 関節あそび検査練習法 その2」

「母指圧迫での手による力の加え方(組織固定の大切さ)その2」



ティッシュプルの大切さは、強調してもし過ぎることはありません。

テクニックのフォームがいくらきれいでも、組織が固定できていなければ望んだ結果は得られないでしょう。

それは、ランニングなら走りはじめに蹴り足が滑るようなものだし、投球動作ならボールがスッポ抜けるようなものです。



ティッシュプルは、土台や足場を安定させる、接合部分を固定するということです。

それができていないと、セラピスト側で生まれた力が相手に上手く伝わりません。

だからとても大切なことです。



ところで、ティッシュプルには適切な方向というものがあります。

それは、刺激を加える方向の手前からコンタクトして、刺激を加える方向へティッシュプルするということです。



たとえば、写真のように大腿部を圧迫しながら、膝関節方向へ刺激を加えたい場合、


股関節寄りからコンタクトし、


皮膚を膝関節方向に引っぱって(ティッシュプル)、軟部組織を固定し刺激を加えるようにします。


ズボンのシワから引っ張ってる感が伝わるでしょうか?



反対に膝関節方向から股関節方向にティッシュプルしていたとしたら、この場合上手く固定できないはずです。

話で聞くと当たり前のことなのですが、実際にやってみると戸惑って上手くできない方もいます。

そうならないためにも予め、どの方向に刺激を加えるのかという評価がきちんとできているということが、ティッシュプルを行う前提として必要になってきます。


慣れてきたら、刺激を加える部位さえ決まれば、コンタクトしながら組織抵抗の強い方向、かたい方向を探し、その流れでティッシュプルを行うというように、何気ない操作の中でスムーズに行えるようになりますよ。



ティッシュプルは筋筋膜へアプローチする際はもちろん、関節モビライゼーションを行う場合にも重要です。

たとえば、写真はC5の関節突起にナイフエッジ(示指MP関節の橈側)コンタクトをしています。


このときティッシュプルができていなければ、微妙な角度調整を行っている間にC4やC6の方へ簡単にすべってしまいます。



これでは分節的なアプローチができません。

ですから頚椎の関節モビライゼーションを行う際には、棘突起側から関節突起側へティッシュプルして組織を固定するようにします。

このような操作を加えることで、関節突起を固定したままきちんとモビライゼーションが行えるのですね。



とっても地味だけど、とっても大切なティッシュプル。

次回(8月8日(土))も少し続きます。


「押す」「引く」「まわす」という身体の基本操作 その6

2015-07-11 17:00:00 | 学生さん・研修中の方のために
今回のシリーズでは、手技療法を用いるときの基本となる身体操作がテーマでした。

基本はでんでん太鼓がまわる時のように、身体の中心(体幹・下肢)から末梢(上肢)に向かって力を伝えていく。



それによって、自分の身体を傷めるリスクを下げ、触診の精度を上げ、より細やかにコントロールされた操作を行うことができるようになります。



力の伝え方を具体的な動きとして「押す」「引く」「まわす」の3つに整理し、手技療法の操作はこの3つから成り立っているとお話しました。

これらの操作が上手くできれば、どのようなテクニックを学んでも、技術の習得はより早くなると私は考えています。



これからみなさんにぜひやっていただきたいのは、今まで部活や習い事などで身につけてきた動き、慣れ親しんだ動きを、どれでもよいので「押す」「引く」「まわす」に分類し、その時どのように力を出しているか確認してみてください。

打ち方、投げ方、突き方、蹴り方、押さえ方、すくい方など、きっと合理的な使い方であったはずです。

その使い方、力の出し方を手技療法の「押す」「引く」「まわす」に適用させてみてください。

すでに身につけた動きを活かすことで、より効率的に操作できる可能性が高いです。



何か新しいものを学ぶときは、先入観を持たずに頭をまっさらにして取り組むことが大切だとされます。

ただ、ある程度年齢を重ねた人が技術を学ぶときは、それまで身につけてきた動きを活用するほうが習得が早く、その方にとって無理が少ないと私は思っています。

ですから、慣れ親しんだスポーツや趣味の動きと、手技療法の動きを上手くリンクさせるよう工夫してみてください。

ここでは「教わる」のではなく「考える」という作業を、根気よく続けなければ身になりません。



余談ですが「押す」「引く」「まわす」と分類することで、技術を習得する上での心理的なハードルを下げるということも狙っています。

新たなテクニックを学ぶとき、伝える側がその価値を高めるために、インパクトのあるフレーズを使ってこちらをあおることがあります。

それも商売ですから、ある程度は仕方のない面もあるのですが、なかには眉をひそめたくなるキャッチが使われているケースも見かけます。



そしてそのフレーズにあおられて、必要以上に身構えてしまう方もいるのです。

頭っから「難しい」と思いこんでしまうのですね。

そのような時、手技療法の操作は3つシンプルな動きから成り立っているということを予め理解しておき、冷静に動きを見ることができれば、いくらかでも気が楽になるのではないでしょうか。

固くなったままでは、身につくものもつかなくなるかもしれません。

技術の習得には落ち着くことも大切です。



とはいえ、反対に軽く考えて侮ってはいけません。

シンプルな動きは取り掛かりやすいですが、追求すれば果てがありませんから。



身構えすぎず、侮らず、冷静に見ることができるようにしておくためにも、今回のシリーズでご紹介した「押す」「引く」「まわす」という整理法もひとつの方法として有効ではないかと思います。

よろしければ役立てて欲しいと思います。



次回は7月25日(土)更新です。


「押す」「引く」「まわす」という身体の基本操作 その5

2015-06-27 17:00:00 | 学生さん・研修中の方のために
今回は「まわす操作」です

前回のように仰向けになったモデルの股関節を屈曲させた状態から、内回しにまわしてみましょう。

その時どのように身体を動かしてまわしますか?



下図のように、腕の力だけでまわすのではないということはもうお分かりですね。




はじめにお話したでんでん太鼓のように、あるいはラジオ体操のように、身体を回転させる力を手に伝えて操作してみてください。




動きを分解すれば、外側の腰(写真の場合は右腰)を前に押す力を、外側の手(右)に伝える。

内側の腰(左)を後ろに引く力を、内側の手(左)に伝えて操作する。

このような感じです。



なぜこのようなひと手間をかけて面倒な操作をするのでしょうか?

股関節をまわすくらいなら、腕でヒョイとまわしたほうが手っ取り早いですよね。



身体を使う理由についてこれまで、体幹側の大きくて疲労しにくい筋肉を使うことで、セラピストの身体にかかる負担を軽くすること。

次ぎに、手先で操作するより身体を大きく使って操作したほうが、組織の抵抗感をより細かく感じることができる、触診の精度を上げることができるということ。

そのようなことをお話してきました。



最後にもうひとつ。

身体を大きく使う習慣を持つことで、小さく細やかな操作も安定して行いやすくなっていくからです。

このブログやセミナーなどで「小さな操作は大きな動作で」行うことを繰り返しお話してきました。
ひとりでできる!!関節あそび検査練習法シリーズもご参照ください≫



頚椎など小さな関節のモビライゼーションや、狭い範囲の軟部組織の異常に対するマッサージなど、小さく細やかな操作でアプローチする必要があります。

小さな操作を行うときは、身体を大きく動かしたほうが微妙なコントロールが行いやすくなります。



ただ最初は小さな操作を、大きく身体を動かして操作するという感覚もなかなか難しいかもしれません。

そのためまずは、日頃から何気なく行っている「下肢を屈曲させる」「頭部を側屈させる」といった大きな操作を、大きな動作で行えるよう習慣にさせておいたほうがよいのです。


「大きな操作は腕の力でやっているけど、いざ小さな操作をするときはきちんと身体を使うから大丈夫ですよ

なんて思っている方いませんか?


器用な方ならそれも可能かもしれませんが、ふつうの人はなかなか難しいでしょう。

集中力が必要な細かな操作をするときは、慣れ親しんだ動きが出てきてしまうからです。

ですからぜひ常日頃から「大きな操作を大きな動作で」行う習慣をつけるようにしてください。



スポーツや武道を習う時、はじめはコンパクトな動きを練習するのではなく、大きな動きで練習するはずです。

そして、身体を使って操作するということを身体で覚えたら、徐々にコンパクトな動きを練習していく。

そのような段階を経ることによってコンパクトな動きでも、自動的に身体を使って操作できるようになります。



きめ細やかな「小さな操作」を、身体から力らを伝える「大きな動作」で行えるようになるために、「大きな操作を大きな動作」で行う習慣をつけておく。

しつこくお話しましたが、とても大切なポイントだと思います。


次回は7月11日(土)更新です。


「押す」「引く」「まわす」という身体の基本操作 その4

2015-06-13 17:00:00 | 学生さん・研修中の方のために
今回は「押す操作」です。

仰向けになったモデルの股関節を屈曲させる操作を行いましょう。



股関節と膝をある程度屈曲させ、外側の手は膝蓋骨付近を、内側の手は足首付近を持ちます。

そのまま押して股関節を屈曲させるのですが、これも何気なくやっていると、肘を伸ばす力を主に使って屈曲させていることがあるのではないでしょうか。




では身体を使った動かし方のひとつとして、外側の腰を前に押し出し、その力を外側の手を介してモデルの膝に伝えて屈曲させてみてください。

このシリーズの最初にご紹介した、でんでん太鼓の要領です。

もしくは、前進しながら腰を前に押していく操作でも結構です。




はじめの肘を伸ばす力で股関節を屈曲させる方法と比べて、どちらのほうが楽に操作できるでしょう?

おそらく後者ではないでしょうか?



もしかしたら身体を大きく使うことに慣れていないと、ぎこちなく感じてやりにくいと思う方もいらっしゃるかもしれません。

それでもできるだけ、身体を大きく使って動かすことに慣れておいたほうがよいでしょう。



これはセラピストの身体を傷めないようにするためだけではなく、触診の精度を高めるためという目的もあります。

ひとりでできる!!関節あそび検査練習法シリーズもご参照ください≫

今回は股関節を屈曲させましたが、可動域だけを調べるなら腕の力だけで押しても調べることはできます。

しかし手技療法を用いるなら、どこに異常があって股関節の屈曲が制限されているかというところまで調べなければいけません。



股関節が屈曲するに伴って関節はスムーズに、軸が不自然に変化することなく回旋しているのか?

どの角度で組織の抵抗感が強まってくるのか?

抵抗感を強めているのはどの筋線維の緊張や短縮によるのか?といったことも大よそ検討がつくように感じ取れるようになっておいたほうがよいでしょう。

そのためには手先で操作するより、身体を大きく使って操作したほうが、組織の抵抗感をより細かく感じることができ、異常がどこにあるのか見当をつけやすいのです。



あらゆる操作を触診として活かす。

そうすると少ない労力でより多くの情報を手に入れることができ、また、患者さんの負担を減らすことにもなります。

患者さんの立場になれば体がつらいとき、必要以上に時間をかけてあれこれ調べられるのは苦痛なもの。

可能な限り効率よく情報を集めるためにも、できるだけ多くの操作を触診の機会として活かすことが理想です。



そのためには繰り返しになりますが、セラピスト自身が身体のさまざまな部位を使うことによって、楽に操作出来るようになっておくこと。

そしてもうひとつは、操作しながら微妙な感触の変化を「意識」して感じるようにすることが必要です。



はじめから細かいところまでわかる必要はありません。

しかし、感じ取ることを意識し、集中してかつ地道に練習しなければ、触診の感覚が鋭くなることはありません。

バットやラケットの素振りをぼんやりしながらやっていても、上達しないことと同じです。

技術の上達は、何をどのように意識して練習するかが、とても大切だと思います。



次回は6月27日(土)更新です。


「押す」「引く」「まわす」という身体の基本操作 その3

2015-05-30 17:00:00 | 学生さん・研修中の方のために
今回も「引く操作」のつづきです。

前回のように下肢を持ち上げた状態で、肘を曲げ下肢を支えてみてください。

このとき肘を曲げる力で支えていると、腕は下肢の重みを強く感じて、早く疲労してしまいます


では見た目は同じ形でも、肘を引く力で下肢を支えてみてください。


先ほどより楽に支えられるのではないでしょうか。



はじめの方法が、上腕二頭筋など肘を屈曲させる筋肉を働かせているのに対して、こちらは広背筋など肩を伸展させる筋肉を使うことになります。

肩の伸筋のように体幹寄りについている筋肉のほうが、肘の屈筋より強い力を持続して生み出すことができる。

だからより楽に持てるのですね



さらに肩を後ろに引く(肩甲骨を内側に引く)。


胸郭を回旋させる力を使って上半身から引く。


骨盤を回旋させる力を使って下半身から引く


重心を後ろに移して腰を引く。


体幹や下肢の力を加えるほど、より楽に支えることができるようになるはずです。



そして大切なことをもうひとつ。

ここでは下肢を支えるために、

肘を引く

肩(肩甲骨)を引く

胸郭を回旋させる力を使って上半身から引く

腰を回旋させる力を使って下半身から引く

重心を後ろに移して腰を引く

とご紹介しましたが、実際の臨床ではこれらを別々に、あるいは組み合わせて使います。

すると負担が一か所に集中することを避けることができ、疲労しにくくなって身体を傷めるリスクを大幅に低下させることができます。



よく正しい姿勢とか、正しい動かし方といわれます。

もちろんそれは大切なのですが、どれほど正しく使っていたとしても、同じ部位に長期間反復して負担がかけ続けると傷めてしまうかもしれません。

ですから仕事として行う上では、動かし方のレパートリーを増やしていくことも必要だと思います。



カラオケでも持ち歌がひとつしかないより、レパートリーが多いほうが場は持ちますよね

それと同じ・・・かな?

ちなみに私はカラオケ苦手です



何はともあれ外見上は同じようでも、身体の中でどのような力を生み出しているかによって、まったく別ものになります。

焦らずに少しずつ、ひとつずつ、工夫しながらレパートリーを増やし、自分のものにしていってください。



そうそう、肘を曲げて支えるときには、セラピストの腕を自分の身体にくっつけて支えてください。


支えを増やすことでさらに楽に支えられるはずです。

これも負担を分散させるレパートリーのひとつですよ

「支えを作って負担を分散させる」「操作は身体のそばで」もご参照ください≫



次回は「押す」操作です

6月13日(土)更新です。


「押す」「引く」「まわす」という身体の基本操作 その2

2015-05-16 17:00:00 | 学生さん・研修中の方のために
今回のシリーズは、触診やテクニックを用いるときは身体の力を使うということについてのお話です。



前回、「腰が動いて手がついていく」と述べましたが、この「腰」には体幹や下肢の力という意味を含めることにします。

範囲が曖昧なのですが、伝統的に「腰を使う」という表現が用いられていますし、あまり煩雑になっても困るので「腰」とひと言でまとめさせていただきました。

最近では体幹については「コア」という表現を用いたほうがピンとくる方が多いのかもしれませんが、私自身がまだ馴染んでいませんので「腰」とすることにします。



今回は「引く」操作のご紹介。

みなさんは仰臥位になったモデルの下肢を、足首を持って片手で持ち上げるとしたらどのようにするでしょうか?

足首付近の外側に立って、内側の手で足首を持ち、肘を曲げて持ち上げる。


写真は肘を曲げすぎかもしれませんが、何気なくやると、このような持ち上げ方をする方が多いかもしれません。

間違いではないのですが、この方法は腕にズシッと脚の重みを感じるのではないでしょうか?



では、次の方法を試してみてください。

モデルの足首の外に立って、内側の足を一歩引きます。

膝を曲げて腰の位置を低くし、内側の手で足首を持ちます。




そのまま重心を後ろ足に乗せ、腰を「引き」ながら膝を伸ばしていきます。


腕は支えになって身体の力を伝えているだけです。

「腰が動いて手がついていく」ですね。



すると、脚が持ち上がっていきます。

このとき、腕には脚の重みをさほど感じず、楽に持ち上がるのではないでしょうか

ちょうど綱引きで綱を引っぱったとき、ロープが勝手に上がっていくように、脚も勝手に上がっていくような感覚を覚えるのではないかと思います。



このように「持ち上げる」のではなく「持ち上がる」

「動かす」のではなく「動き出す」

「力を加える」のではなく「力が加わる」

というようなイメージで楽に操作をすることが、評価と治療を行う上でポイントになってきます。



ストレッチで引く操作をするとき。

関節モビライゼーションの形をつくるために、引く操作をするとき。

触れた手を離すとき。

すべてこの動かし方が基本になっています。



特に、触れた手を離す時の引く操作はあまり注意を払わせませんが、私はとても大切だと思っています。

「触れた手の離し方」シリーズをご覧になって、ぜひ復習しておいてください。



まずは日ごろの臨床で引く操作を行うとき、腰から動かす操作した場合と、腕の力で行った場合のどちらが楽か比較してみましょう。

必ず自分で体験して確認するようにしてくださいね。

次回も引く操作のお話が続きます。



次は5月30日(土)更新です。






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受講費用 5,000円 

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開催日時 15年06月14日(日) 13:30~18:30
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手技療法の寺子屋でご紹介しているような手技療法の基本が、医療情報研究所さんよりDVDとして発売されました。
私が大切にしていることを、出来る限りお伝えさせていただきました。
どうぞよろしくお願い致します。
医療情報研究所





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手技療法の寺子屋ブログを始めてから今月でまる6年になり、おかげさまで記事も300を越えました。
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「押す」「引く」「まわす」という身体の基本操作 その1

2015-05-01 16:55:32 | 学生さん・研修中の方のために
触診やテクニックを学んで使うとき、はじめのうちは「何に触れるか?」「どのように相手の身体を操作するのか?」というところに目を奪われがちなもの。

そのためにセラピスト自身は、自分の身体をどのように動かしているのか、というところがおろそかになってしまうことがあります。

その結果、知らず知らずのうちに無理な体勢や力の加え方をしてしまい、自分の身体を傷めるようになる。



自分の身体を傷めている、あるいは違和感を持っている状態では精度の高い評価や治療は望めません。

ですから触診やテクニックを習得するには、自分の身体を無理なく楽に操作する技法を身につけておく必要があります。

今回のシリーズは、その基本的なところについてのお話です。



はじめに、自分の身体を操作する基本は「でんでん太鼓」のようなものだといえます。

でんでん太鼓は、中心の軸となる柄の部分が回転することによって、2つの球に遠心力が働いて太鼓を打ちます。

(欲しくなって買ったけど、送料のほうが高かった



身体の場合も、基本は中心の軸となる腰(体幹・下肢)が動き、その力が手に伝わって操作していく。

ちょうどラジオ体操にもある、上半身を回転させる体操も同じですね。


体幹を回転させる力が腕に伝わっていきます。

これによって軸がぶれることなく、安定して回転することができます。



反対に、腕を振り回すことで身体を回転させるとどうなるでしょうか?

試してみてください。

遠心力が働いて身体が外に振り回されるようになりませんか?

これでは軸がブレて安定しません。



この使い方で安定させるためには、体幹に力を入れて固定させる必要があります。

そうなると余計なエネルギーを使うと共に、動きにしなやかさがなくなります。



ですから、まずは中心から外へ力をつたえていくようなイメージで操作するとよいでしょう。

「腰が動いて手がついていくような」イメージでしょうか。

決して手先から力を加えるのではありません。

手は腰(体幹・下肢)で生まれた力を方向付けるのが仕事という感覚です。


もちろん動かし方は他にもあり、体の軸を1つではなく2つとしたり、軸を作らないという方法もあります。

でもまずは体幹を一つの軸としてイメージしたほうが、わかりやすいのではないかと思います。

慣れてきたらいろいろな方法を試してみて、自分の好みに合う動かし方を取り入れればよいでしょう。



ところで「腰が動いて手がついていく」ですが、それだけではハッキリしたイメージは持ちにくいですね。

ですから「押す」「引く」「まわす」という3つを私は基本操作としています。

これなら具体的なので、よりハッキリしてくるのではないでしょうか?



触診やテクニックなどで複雑な動きに見えるようなものでも、この3つの組み合わせで成り立っていると考えています。

次回はまず「引く」操作からお話したいと思います。


次回は5月16日(土)更新です。





札幌セミナーのご案内
札幌にて手技療法の寺子屋セミナーをさせていただきます。
北海道方面で手技療法に興味をお持ちの方、どうぞご参加ください。

セミナー1「身につけておきたい手技療法の基本Ⅱ~どのようにして「押さえる」のか~〔15.06.13(土)〕」
開催日時 15年06月13日(土) 18:30~21:00  
受講費用 5,000円 

セミナー2「膝関節・足部への徒手的アプローチ〔15.06.14(日)〕」
開催日時 15年06月14日(日) 13:30~18:30
受講費用 10,000円

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大阪セミナーのご案内
はれやかグループさんからのご依頼で、大阪(岸和田市)にてセミナーをさせていただくことになりました。
関西方面で手技療法に興味をお持ちの方、どうぞご参加ください。

テーマ「膝・足部へのマニュアルセラピー」
開催日時:2015年06月21日(日) 09:00~17:00
受講料:12,960円(税込)

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