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【突破する日本③】日本の安全保障について真剣論議を 自衛隊を憲法に規定すべきだ(麗澤大学教授 八木秀次)

2016-10-29 | 日本の安全保障
2016.10.27
元GHQ民政局次長、ケーディス氏

民進党が、衆院憲法審査会での審査入りを拒否したという。参考人質疑などをめぐる与党側の対応に反発したようだが、私にはサボタージュとしか思えない。参考人を呼んで立憲主義について議論するという。大学のゼミでもあるまいし、今さら“お勉強”とは、いかがなものか。

民進党幹部の憲法観や立憲主義についての考えは、一知半解(=物事の理解が中途半端なこと)の一面的なものでしかないと感じる。それを振りかざして、改憲論議が実質化するのを阻止しようとしているのではないか。

さすがに、日本維新の会の松井一郎代表(大阪府知事)は衆院憲法審査会について、「民進党が入らなくとも自民党は開会の決断をしてほしい」と求めた(産経新聞、10月25日掲載のインタビュー)。

現行憲法制定の最大の目的について、GHQ(連合国軍最高司令部)民政局次長として、憲法原案起草の現場責任者だったチャールズ・ケーディス氏は「日本を永久に非武装のままにすること」だったと語っている(古森義久著『憲法が日本を滅ぼす』海竜社)。彼らの思いは端的に憲法9条2項に「戦力の不保持と交戦権の否認」として規定された。

1950年に朝鮮戦争が始まり、占領政策が展開されて警察予備隊が設置され、再軍備化されるが、「非武装」をうたった9条2項は改正されずに、その後も残った。

日本社会党はこれを盾にして、冷戦期に「非武装中立」を求めた。これは、「日米同盟の解消」と「社会主義陣営との友好」を意味するが、社会党はその都度、政府が進める現実的な安全保障政策に抵抗した。

今、社会党の系譜に連なる民進党もわが国を取り巻く安全保障環境の現実を見ず、9条2項の維持を求めているようだ。昨年9月に制定された安全保障関連法制を共産党とともに「戦争法」と呼んで批判し、共産党と選挙協力までしている。

安保法制で、集団的自衛権の行使が一部可能になったが、自衛隊が米軍を守る法的な権限を得ただけだ。日米同盟が強化され、自衛隊+米軍の総合能力は高まったものの、自衛隊自体の能力が高まったのではない。

日本の安全保障は、在日米軍の存在を前提として、米国の「世界の警察官」としての世界戦略が機能して初めて成り立つ。その米国の大統領選挙は、民主党のヒラリー・クリントン候補の優勢が伝えられるが、共和党のドナルド・トランプ候補が主張する「アメリカ・ファースト」という非関与政策への支持は、次期政権でも続くことだろう。

米国は「世界の警察官」の役割を減じ、中国は軍事的攻勢を強めている。改憲の発議権のある国会は、今こそ真剣に「9条2項の制約の下で、日本の安全保障は大丈夫なのか」について議論すべきだ。自衛隊を憲法に規定することくらいはしてほしい。

■八木秀次(やぎ・ひでつぐ) 1962年、広島県生まれ。早稲田大学法学部卒業、同大学院政治学研究科博士課程中退。専攻は憲法学、思想史、国家論、人権論。第2回正論新風賞受賞。高崎経済大学教授などを経て現在、麗澤大学教授。教育再生実行会議委員、法制審議会民法(相続関係)部会委員、フジテレビジョン番組審議委員、日本教育再生機構理事長など。著書に『憲法改正がなぜ必要か』(PHPパブリッシング)、『公教育再生』(PHP研究所)など多数。

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