文章の書き方を学びたくて、「論文の書き方」に引き続いて購読しました。しかしいざ読んでみると、純粋に読み物としても面白い本でした。
本書はまず文章を書く心構えから説いてくれて、良い文章を書くにはたくさんの本を読むなど人生経験を積まないといけないと述べています。実際本書では筆者の豊富な知識が活かされ、先人達が残した著書から色々な文章を紹介しつつ、様々な文章の書き方を紹介してくれています。
またこの筆者の書く文章が綺麗である事も、本書の特徴として挙げられると思います。「そう言うものだ」と言われればそれまでですけど、どうも新書の文体は上目線で書かれている本が多い気がします。しかし本書では筆者が丁寧な言葉遣いで文章が書かれているので、気持ち良く読み進める事が出来ました。そしてこの丁寧な文体だからこそ、筆者が色々な知識を披露しても嫌味に感じる事がなく、むしろ筆者の知識量の豊富さに感服しながら読み進める事が出来ました。
そして本書に書かれて最も印象に残ったのは、「文章は判りやすく書かないといけない」との主張で、これには私も同じ気持ちです。日本だけなのかは知りませんけど、どうも一部では難解な文章が持て囃される傾向があるような気がします。何の予備知識が無い人が読んで判らないような文章の、どこが素晴らしいのか理解出来ない私からすれば、筆者が福沢諭吉の言葉を交えて述べる、「文章は判りやすく書かないといけない」との言葉には喝采を贈りたい気分になりました。余談になるものの、私が「意味もなく難解な文章が持て囃される」と思う三大ジャンルは「思想哲学」と「役所官庁の文章」、そして「ライトノベル」の三つです。
このように本書は文章を書く心構えについて、丁寧に説いてくれています。しかし一方でいざ文章を書くに当たっての、言い方は悪いですが「小手先のテクニック」については殆ど触れてくれませんので、あまり実用的な本とは言えないと思います。
文章を書くに当たっての心構えを持つことには重宝するものの、いざ文章を書くに当たっての参考書とはならない、これが本書に対する私の感想です。