Cafe de Kerm ~毒味ブログ~

物言いにも、珈琲にも、もれなく毒が混入している可能性が無いこともないです。

放送局側の権利の拡大ストップ まねきTV勝訴

2006-12-25 18:10:42 | Thinkings
 海外に長期出張する人やその家族にとって、日本のテレビ番組を見たいというのはとても切実な事だと思います。
 慣れない海外生活の中で、家族以外の日本語にふれられるのはうれしいと思いますし、インターネットがあるにしろ、日本の情報を入手するツールにも成り得るからです。もちろん「今まで当たり前に見られたものが見られなくなってしまう」というのが一番大きいとも思いますけれど。

 これまで海外で日常的に日本のテレビ番組を見るとなると、海外向けのNHK放送があるくらいで、民放は録画してもらったビデオを送ってもらうなど協力者がいないと難しい状況でした。

 ところが、ソニーのロケーションフリーステーションの発売により、その状況は一定の改善を迎えました。何しろ、国内にロケーションフリーのベースステーションを置いて録画予約を行えば、インターネットを通じて好きなときに好きな場所で、テレビを見ることが出来ることになったのですから。

 しかしながら、ベースステーションの設置にも、やはり協力者が必要となります。設置に伴う場所とメンテナンスの問題です。
 そこに目をつけたのがまねきTVの事業で、ベースステーションを利用者に購入してもらい、回線と管理を請け負うというものです。以前に管理サーバーで同様のサービスを行っていた業者が訴えられましたが、あくまでお客とお客のベースステーションの1対1通信しか行わないこの事業では「通信事業には当たらない」はず。お客の利便性を確保しつつ、法律の穴も抜けられるはず、だったんですけれどね・・・

 民放五社は、「ベースステーションを集中管理することは、一対多接続のサーバーと変わらない」という解釈を持って、まねきTVを訴えてきたのです。
 しかしながら、結果は民放側の敗訴。そして、今回の再審抗告も棄却され、まねきTVの事業の正当性が改めて示されました。

まねきTVの番組ネット転送サービス、知財高裁も適法と判断 知財情報局

  ソニーのロケーションフリーテレビを使って、海外などでも日本のTV番組がネット経由で視聴できるサービス「まねきTV」に対し、NHKと在京民放5社が、放送事業者の送信可能化権侵害を理由に、サービスの停止を求めた仮処分申し立ての抗告審で、知財高裁は12月22日、申し立てを却下した東京地裁の決定を支持し、抗告を棄却する決定を下した。

 私は、権利を守ることは、文化の発展や権利者の利益と言う点で、とても大事なことだと思っています。しかしながら、権利を守る範囲にきちんと線引きを行わないと、どこまでも拡大解釈されて適用範囲が広がっていき、新しい技術や事業に対する萎縮効果を引き起こすことを本気で危惧もしています。
 とくに、Winny裁判や著作権を作者の死語70年に延長する議論など、著作権や頒布権に関わることが話題に上って来ることの多くなっている今、今回のような「歯止めをかける」判決が出たことの異議は非常に大きいと思います。

 放任になりすぎても、過保護になりすぎてもいけない。権利問題というのは非常に難しい問題です。が、一部の権利者団体が声高に権利を叫ぶ昨今。「著作権を変革させる」と言ったWinny作者の金子氏の話を、著作権だけでなく、既存の既得権益すべてにおいて、真摯に受け止める時期に来ているのかな、と改めて思いました。