Cafe de Kerm ~毒味ブログ~

物言いにも、珈琲にも、もれなく毒が混入している可能性が無いこともないです。

Vista延期がもたらすモノ

2006-03-22 19:55:14 | PC
 WindowsXPが2001年11月に登場してから、実に4年が立ちました。
 Windows95からWindowsXPまでの間、約2年刻みでリリースを続けてきたことから考えると、実に3倍近い”間”が開いていることになります。

 MicrosoftはWindowsVistaをなんとしても2006年内に発売する為、当初予定していた機能を削るという思い切った対策まで取ってきましたが、残念なことにその公約は破られることになったようです。

マイクロソフト、Windows Vistaの一般発売を2007年へ延期 CNET

Microsoftは米国時間21日、Windows Vistaの開発に遅れが出ていることから、この新しいオペレーティングシステムを搭載するPCの発売は2007年1月以降になると発表した。

 今回の遅れによって、Microsoftだけでなく、PC業界全体が大きな影響を被ることになるかもしれません。

 記事にもあるように、Vista発売が2007年にずれ込むことによって、2006年の年末商戦には間に合わなくなります。今年の年末商戦は、Vistaによって注目を浴びていただけに、消費者側の買い控え、ベンダー側の投入縮小等が予想されます。
 年末商戦における市場規模の縮小は、MicrosoftやPCベンダー側にとって大きな痛手になるのはもちろん、Viivの普及を推進しているIntelにとっても誤算であるはずです。

 現在Viivは、WindowsXP MediaCenter Edition(MCE)にしか対応しておらず、こと日本についてはMCEの普及が芳しくないこともあり、各PCベンダーも様子見の状態です。
 日本のテレビ機能付きPCを販売しているPCベンダーは、例外なく独自のテレビインターフェイスを持っており、それらの機能はMCEの10フィートUIを遙かに上回っていることが原因で、これによりわざわざ価格の高いMCEを搭載するメリットが薄くなっているわけです。
 しかし、VistaではMCEの機能が統合されることが決定しており、Vista搭載のPCは例外なくViivの対象に含められます。MCEというOSのくくりを廃したことで、(筆者注:Vistaのすべてのバージョンでメディアセンターが搭載されるわけではなく、XP MCEに当たるHome Premium及び、XP ProfessionalにあたるUltimateにメディアセンターが搭載される。)PCベンダーは、Vistaと自社製の10フィートUIを共存させることにより、Viivへの対応をにらんでいたらしいのです。
 ところが、今回の発売延期により、Vista搭載PCの市場投入が遅れると言うことは、同時にViiv対応PC群の拡大にも歯止めをかけることになります。これはもちろん日本市場だけの問題ではなく、Viiv普及の敷居をVistaが下げる事には変わりないことから、世界市場的な損失であると言えます。
(筆者注:前述の通り、VistaにもMCEに相当するエディションがあり、敷居を下げるとは一概には言えない。ただ、Viiv導入のきっかけとしてVistaをにらんでいたメーカーは多いと思われるため、Viiv普及に歯止めをかける事は間違いないだろうとは考えられる)
 年末商戦を逃した以上、普及の速度は確実に遅れるでしょうから、Intelとしては大変おもしろくない発表だったのではないでしょうか。

 ただ、これらの発表について不利益を被るところばかりでもないようです。

 その代表とも言えるのが、スパイウェア対策ソフトウェアベンダー。

「最強のスパイウェアキラー」の期待がかかるWindows Vista CNET

 Microsoftは、今年中にWindows XPの待望の後継製品となるWindows Vistaをリリースする。このOSは、スパイウェアの侵入を防ぐような設計となっており、OSとInternet Explorerの心臓部に重要な変更を加えられるほか、スパイウェア対策ツールの「Windows Defender」も組み込まれる予定だ。  

注:Vista発売延期前の記事です。

 これらの記事にあるように、Vistaは従来のWindowsに比べて、スパイウェアへの対策を大幅に強化してあり、標準搭載のWindowsDefenderのみで必要十分な効果が得られるとのこと。Vista以後では、Windows向けのスパイウェア対策ソフトのマーケットを枯渇するものと見られています。
 Vistaが市場投入から占有に至るまでに、2~3年はかかると見られていますが、それはスパイウェア対策ソフト市場の寿命に等しいという訳です。もちろん、その猶予期間の間にも、じわじわと市場が縮小していくのですけれど、今回の発売延期によって猶予期間初期での市場縮小の歯止め、若しくは猶予期間の延長すら見込めるかもしれないのです。

 ちなみにウイルス対策ソフトに関しては、Microsoft側も無料でのリリースはしないようです。

 また、現在問題になっているWindowsXP Homeのサポート期間についてですが、やや延長が見込めると考えるのが自然でしょう。スペックの関係で、Vistaにバージョンアップできないマシンも多いと思われますから、これについても歓迎されるべき事でしょう。

 過渡期にありがちな「移行の喜び、痛み」について、Windows95を境に、毎回規模が下がっている様に感じます。未だに”WindowsXP,2000,Me,98対応”のソフトウェアが多いことからも、その一端が見て取れるでしょう。
 ただ、今回のVistaは、待たされた分だけいろいろと期待も大きいですし、ファイル管理・・・は延長されましたが、GUIなど実に多くの変更点があります。これらは対応ソフトウェアだけでなく、ハードウェアにも影響を与える、いわばWindowsの一大転機とも言えるものです。
 その鉄板とも言えたリリース時期のまさかの変更は、予想以上に根の深い問題になる不気味さが漂っています。