こんな気持ちでいられたら・・・一病理医の日々と生き方考え方

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AIによる病理診断

2019年02月14日 | 病理のこと、医療のこと、仕事のこと

「それって、医者じゃ無くてもできるんじゃね?」と私に言ったのは、IT系企業に勤めている友人だった。今なら「そんなのAIにやらせておけばいいんじゃね?」といわれるだろう。病理標本全部を写真で取り込む技術というのはもう何年も前からできているので、データそのものの蓄積はすでに膨大なものがなされている。

 

私が所属している小さな研究会がある。その研究会は臨床医が主体で病理医は参考にいるだけのような会だ。そこでの話題もAIによる病理診断の可能性、というもの。AIによる病理診断の目的というものがどこにあるのかわからないが、AIが私たち病理医の仕事を補完してくれるようになったら、診断精度はより上がっていくだろう。

AIは組織内のそれぞれの細胞の同定能力は高いと思うが、大きさに対応してくれるかが心配だ。あとは、染色による組織像の違いに対する対応。ピンク色に染色されるHE染色以外の染色もあって、それぞれの特性にあった判断をしてくれるか。さらにはこういう特別な染色が必要かどうかの選択など追加オプションの判断ができるかということ。免疫染色の選択ともなると、もっと大変だ。

 

生検でも手術でも、検体のサイズも大小様々。細胞の数も様々だ。この辺のことにも十分対応してくれるようになるにはどのぐらい時間がかかるだろうか。結局、経験を積んだ人間が診断のチェックを行って確認する必要が出てくる。そこで問題となってくるのは、AIに適当に仕事を任せているうちに人間が研鑽する機会が奪われていくということ。全ての希少疾患までの記録をAIに教え込むまでにどのぐらいの時間がかかるかわからないが、AIに仕事を任せてばかりにしていたら、AIの方が多く経験しているという状態になってしまうことが怖い。実は人間の判断の方が正しいのに、AIの判断が客観的だ絶対だというような臨床医が現れるようになったら、収集がつかなくなるように思う。ただ、その頃には病理診断どころか、診断、治療も大部分をAIがやってくれているだろうから、AI同士で解決してくれるようになっているのかも知れない。

私が死ぬ時は

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