こんな気持ちでいられたら・・・一病理医の日々と生き方考え方

人生あっという間、私の時間もあと少し。
よりよく生きるにはどうしたらいい?

問題解決の処方箋はどこにある

2018年08月09日 | 病理のこと、医療のこと、仕事のこと

旧科学技術庁出身官僚による研究費に関わる不明瞭に端緒として、話は東京医科大学が入試の際に行なっていた一浪までの男子受験生への優遇措置の問題となっている。公平を前提として行われている入学試験でそのようなことが行われたら、そういうことを知らないまま試験を受ける女子学生には不利で、女性差別が問題となっている。東京女子医科大学があるのだから、東京医大もいっその事男子校にしてしまえばよかったのにと思うが、もちろんそうはいかない。国公立大学を含め、地域枠なんていうものがあるのだから、東京医大も”大学病院に残ってくれてよく働いてくれる医師枠”を男女の区別なく作ったら良かったのにとも思う。でもそうすると裏口入学枠がなくなるからできなかったのだろうか。まさしく、そういう学生をとっていたのだから開き直ってそうしてもよかったのに、表面上は公平な入試をうたっていたのが間違いだった。

今回の問題を通じて女性医師の働き方改革ということが話題に上がっているが、この場合”女性医師が家事育児をできるような働き方”、という表現になっているが、このことに問題はないのだろうか?これって、女性医師が”家事育児”をすることが前提になっていないか気になる。さらには、この問題を結婚する女性医師のことに限定しているということも話がわからない。さらには女性医師の連れ合いの人の意見が聞こえてくることはついぞ無い。そういう高給取りの妻を娶った男性の意見というものをぜひ聞いてみたいものだ。でも、そんなことも本質的にはどうでもいいこと、人それぞれなのだからこれが正しいということはどこにも無い。

最近、この国の抱える社会的な問題に対する議論というものが、刹那的で一本調子になっていると思う。東京医大が”女性医師は結婚して家庭に入ってしまうので人数を制限した”というのであれば、問題は”女性はすべからく結婚して家庭に入る”と考えたことが問題なのではないか。でも、医師になることと結婚することは全く別の問題で、男性医師も状況は同じだ。家庭に入ったら、子供をもうけて育てる、というのはもう医師だろうがなんだろうが関係ない話だ。そして、女性医師でもやっぱりワンオペ育児をしていて、そのためにはフルタイムでは働くことが難しいということ。でも医師の場合は当直も土日の日直もあるし、学会出張も少なくない。そういったことすべてをひっくるめての問題がこの先待っている。私の周りの女性医師をみても、様々だ。ワンオペ育児をこなしている人もいれば、あっさり家庭に入って週に2、3度のアルバイトをしているだけの人、結婚しないで男性医師と同じように働いている人、婚期が遅れ子供が欲しいと思っても難しい年齢になった人。それぞれの人がそれぞれの選択をした結果であって、それぞれの生き方についてあれこれいうことはできない。男性優位の社会だからやりたいことができなかったという声もある。間違いではないのだろうけど、詮無いことだ。人生の選択は、その時々の状況をみて決断していくものだし、時間は前にしか進んでいかない。もし自身が男性社会の理不尽な力に道を閉ざされたことがあったのならば、それを後に続く人にさせないようにしてあげることしかないのではないか。

今回の問題を解決するためのこれといった処方箋はない。解決すべき問題が多すぎる。少なくとも東京医大はこれからは入試制度を公正なものとするしかない。第一に、初期研修制度が始まって、大学病院にそのまま残る医師は減っている。開業医の子弟なんてそのまま実家に帰って地元の研修病院で研修をした方がよほどいい。これまでの古い考え方は恥を忍んでさっさと捨てるのが得策だ。そして教員、在校生および全ての卒業生が、医療向上のために邁進することが信頼回復への最良の道だろう。

そしてこれは医療界だけの問題ではない

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