初心者は何を目標にしたらいいのでしょうか?
トレース水彩画の上達は2段式で、成長行程を2段階に分けるからこそ、大きく飛躍できるのです。
そしてその1段目ロケットの目的は、写真を正確に模写することです。
私は10年近く絵画教室を開いており、その経験からの2段階(2段式ロケット)のやり方が最も効果が高く、受講者の方も絵を堪能できていると自負しています。
特に1段目ロケットの目的は、写真に正確に描く=模写することは、大きな成果を得ていると思っています。
それは難しすぎる!とお思いでしょうが、意外とカンタンなのです。
それでは通常の絵画と、トレース水彩画のどこがどのように違うのでしょう。
たとえば2人の絵画初心者AさんとBさんの、Aさんは通常の絵画教室、 Bさんはトレース水彩画教室に入講したとして、その足跡を追ってみました。
Aさんは絵を描く第一歩からデッサンの難しさに直面し、何枚描いてもその壁を乗り越えることができず、つまり稚拙としか言いようのない絵しか描けなく、自信を失って絵を描くことをあきらめ止めてしまいました。
実はAさんは絵の才能がないのではなく、初心者にはあまりにもデッサンは難しいのです。
私のように美術学校出身者もデッサンで苦労し、最初の志望であった油絵科を断念し、デッサン力が弱くても許されるデザイン科に変更したくらいですから。
一方トレース水彩画教室に入講したBさんは、写真の下にカーボン紙を挟んで輪郭をなぞるだけですから、初心者でも一枚目から正確に形を描く、つまりデッサンの壁を簡単にクリアしたことになるのです。
そしてBさんは、学校以来久しぶりに描いた自分の絵の出来栄えに、密かに自信を深めていくのです。
しかしBさんに次の試練が待ち構えており、それは線画の次の彩色をどのように描いたらいいかわからないからです。
ここで先生(私のこと)はこのように言うのです。
「私ではなく写真が先生と思い、ひたすら写真そっくりに描けばいいのです」と、そして「写真に写った風景を描くのではなく、風景の写っている写真を模写すればいいのです」と。
・・・と偉そうに先生は言いましたが、この描き方のポイントや極意については、別の機会にくわしくご説明しますが、ここをクリックしてひたすら写真そっくりに描いた事例をご覧ください。
話変わってパリのルーブル美術館は午前9時開館なのですが、その30分前から大きなキャンバスを抱えた美術学生たちが、開館待ちの私たちに優先して次々と美術館に入っていき、場所取りを行います。
それは展示された名画の模写をするためなのです。
そのようにフランスは日本とは比較にならないほど芸術に対しての意識が高いのです。
それだけでなく、「模写する」ことを上達の最善の方法として、積極的に推奨しており、それだけ模写には上達する力があると確信しているからだと思います。
しかしなぜか日本では模写することが低く見られており、模写は胡散臭い方法のように思われているのが不思議でたまりません。
たとえば書道では、お手本を素に模写するのに・・・。
さてBさんのそれからについて話は戻りますが、通常の写生では立体の世界を画用紙という平面の世界に置き換えるのが、とても難しいのですが、トレース水彩画では写真を模写するわけですから、平面から平面へ、それも同寸で模写するわけですから、バランス感覚さえ覚えればそんなに難しくなく、よってめきめき上達していくのです。
そしてBさんは写真そっくりとはいかないまでも、写真に似た絵を描けるまでに実力が向上するまでにそんなに時間はかかりませんでした。
そこで先生はおもむろに「そろそろ2段目のロケットの点火の時期が来ましたね」と言うのですが、それは 写真のように描ける=(写真は実物を正確に写すわけですから)=実物をしっかり描写できる、そんな能力を身に着け始めたことを意味しているのです。
そのようにトレース水彩画は実物をしっかり描写できることに特化した画法で、それはえを描くうえで圧倒的に有利なことなのです。
逆から言えば、絵を志す大部分の方は、いろいろな描き方をしているのですが 実物をしっかり描写できる能力のある人は少なく、デフォルメとか言いながらごまかしている(ごめんなさい)のです。
初心者の目標は1段目のロケット=それは写真を出来るだけそっくりに模写できるようになること。
それにより個性という2段目のロケットは大きく飛躍できるのです。