物理と数学:老人のつぶやき

物理とか数学とかに関した、気ままな話題とか日常の生活で思ったことや感じたこと、自分がおもしろく思ったことを綴る。

Gaussの定理とStokesの定理、再論

2019-02-22 15:36:43 | 日記

前にもこのブログでGaussの定理とStokesの定理について書いた。そのときにこれらの定理が微分積分学の基本定理の一般化としてとらえられると書いたと思うが、その内容についてはあまり知っていなかった。

それは溝畑茂先生の微積分の本『数学解析』(朝倉書店)をどこかの図書館に見に行く必要があった。ところがこのことについて、私の持っている本では、北野正雄さんの『新版 マクスウエル方程式』(サイエンス社)の第5章「ベクトル解析と微分形式」に書かれているのを知った。

最近、ベクトル解析の本を数冊見たりしたのだが、どうもすっきりとしなかった。ところがこのことをすでに北野先生がきちんと書いてくださっていた。

まだよく読んではいないのだが、いっきょにすっきりとした感じがしている。この数週間は、「どの本も書き方がすっきりしないなあ」と嫌になっていた。

そういう観点からは世の多くのベクトル解析の本はほとんど落第であると思う。『新版 マクスウエル方程式』(サイエンス社)は北野先生から以前に送っていただいたのだが、ちょっと難しい本なので、読むのをさぼっていた。

何でこういう本を書ける人がすくないのだろうか。アマゾンコムでこの『新版 マクスウエル方程式』の評判を見てみようと思う。北野先生はこのほかに最近佐藤文隆さんと共著で『新SI単位系と電磁気学』(岩波書店)を昨年の6月に出版されており、こちらも評判が高い本である。

私のブログでちょっと推奨したくらいでは、これらの本が大幅に売れ出すことにはならないかもしれないが、きちんとした、いい本をかける著者もいるものである。

もっとも北野先生の本の有難味がとてもよくわかったのも、すこし自分ですこし苦労した試行錯誤があってのことであろう。

(2019.2.25付記)北野正雄さんの『新版 マクスウエル方程式』はアマゾンコムでも評判がよかった。しかし、テンソルの添字が全部下付きであることに一部の方から批判もあった。もっとも直交座標系で電磁気学を取り扱っている限りは上付き下付きの区別をする必要はあまりない。

それにこの上付き下付きはまちがいをおかしそうになるので、私などもなかなか上付き下付きの添字はなかなかとりぬくい。

それにテンソル解析に達者な人が書き直すのはなんでもないので、大きな問題ではなかろう。

私のように、ガウスの定理とかストークスの定理とかが微積分の基本定理の自然な一般化になっているという点を評価している書評は一つもなかったと思う。だからこの点はいくら強調してもしすぎることはない。

この観点は私の知る限り、京都大学理学部の数学教授だった溝畑茂先生の見解であったという風に聞いている。北野先生がどこからその視点をもたれるようになったかはわからないが、それはやはり溝畑先生から来ているのかもしれない。

もっとも、それだから北野先生の書が意味がないなどということはまったくないのであって、他のベクトル解析の解説にくらべて、格段に優れていると断言してよい。ただ、それが微分形式で述べられているので、普通の伝統的な形式での記述もあったらいいのにと感じている。

いまちょっと森毅『現代の古典解析』(日本評論社)を見たら、微積分の基本定理とガウスの定理とかストークスの定理とかの関係が述べてあった。だから、北野さんの見解は森さん経由であったのかもしれない。

 

 


Heitlerの ”The Quantum Theory of Radiation”

2019-02-22 11:50:45 | 物理学

1963年だったか大学院のM1のときにこの”The Quantum Theory of Radiation”をセミナーで読んだ。その後、もう長い間この本を手に取ることはなかった。最近この本をとりだしてくるまでは。これは量子力学との関連から必要な内容がこの本に書いてあるかと思ったからである。

後輩の方々はSchweberの本とかGasiorowiczの本とかをセミナーで読んだが、そういう本は私には無縁である。もちろん、それらの本をもっており、部分的には読んだこともあるけれども。

最近では、場の量子論のテクストとしては、もっとモダンな本を読むのか普通であろう。いわゆる共変的な量子電気力学は私たちはK"allenの”Quatenelektrodynamik” を読まされた。ちょっとはドイツ語が読めると思われていたのであろうか。

そのセミナーがすめば、その後はあまりセミナーみたいなシステマティックな教育は受けなかったと思う。もちろん、折に触れてスピンとかアイソスピンとかの話をなんらかのセミナーで勉強したが、それでもそれはもうそれまでのきちんとした教育ではなかったような気がする。

これは最近になって、先輩の H さんがHeisenbergとPauliの「場の量子論」の論文を大学院のときに読んだことがあるからというので、それを取り出して読もうとしたら、もうドイツ語が読めなかったとある機会に漏らしておられた。

彼は秀才で、学生のころはドイツ語も苦にしなかったであろう。K"allenの”Quatenelektrodynamik” に帰るが、これは私より数年上の U さんがやはりセミナーの講師だった O さんと一緒にセミナーとして大学院1年生の後半に読んだものであったと聞いている。

この U さんはドイツ語もよくできたらしく、講師の O さんのドイツ語の読み方を直されていたとか聞いたことがある。O さんは旧制高校の出身者であるから、ドイツ語は U さんなんかよりも鍛えられた方だと思うのだが。もっともこの O さんは量子力学はPauliのWellenmechanikを2度だか3度だか読まれたと聞いている。

このPauliの本は、Diracの本とか朝永の量子力学と並んで、量子力学の3大名著と言われているものである。

名古屋大学の坂田先生がこのPauliの著書にしたがって量子力学の講義をされていたらしいので、名古屋大学の卒業生はこのPauliの書が親しみやすかったのかもしれない。