ブルーバックス『数の世界』(講談社)では掛け算とか割り算での符号の規約の意味については述べていない。
中学校で学ぶ掛け算とか割り算の符号の規約をマイナスの数をかけると原点を中心にした数直線が180度回転するので、符号が変わるのだといえば、
プラスの数にマイナスの数を掛けてマイナスの数になるのはちょうど原点を中心にして数直線が正の部分が負の部分に移っていく。
また負の数に負の数をかけると数直線の負の部分にあった部分が原点のまわりの180度の回転で正の数直線の部分に移っていく。
こういうことを負の数と負の数とをかけると正の数になるのだとか。このことが正の数と負の数の掛け算とか負の数と負の数の掛け算の符号の規約になっているのだとか説明をしたほうがよかったのではなかろうか。
いろいろ複素数についても多くの説明があるのだが、どうしたことかそういう説明が落ちているのは残念である。
それと虚数の評価が3次方程式のカルダノの解の公式においてようやく定まったということも、もうちょっと強調してもよかったのではあるまいか。それらしきことが書いてはあるのだが、読んでの印象としてはあまり強くはない。
『数学ガールの秘密のノート・複素数の広がり』(SB Creative)にはこのことがきちんとかかれている。
(付記)結城さんと同様に私も負の数の含んだ掛け算についての規則の意味の説明を「複素数の導入」というエッセイに書いた。これは「数学・物理通信」10巻4号(2020.6)に掲載してあるのでインターネットで検索して読んでみてほしい。
もっとも最近ではこのような説明が他のインターネットのサイトでも見られるようになった。